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サイプレス  作者: 熊懐印
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 エミリーの結婚式当日。


(あれから、何度かアシェル様と会う機会があったけれど、顔が見れなくて避けてしまった。それに、アシェル様からも何も言われなかったし…本当はお祝いを言わないといけなかったのに…。)


 会場に着いて、おかしいと感じた。

 すぐにディラソン公爵夫婦に挨拶に行こうと思っていたのに、いらっしゃらない。

(え?何で??)


 王太子と王太子妃が来たので、教会内は騒めいていた。王族付きの護衛ももちろん一緒なので、余計物々しくなっている。もちろんルイーズと座る場所が違うので別れた。


「来たのか。恥晒しめ。」

 聞き覚えのある声がした。

「そんな言い方、辞めて下さい!」

 義母がこんなに強く父に言えるなんて。驚いた。

「お久しぶりです。」

 深々と礼をして、義母に微笑み返した。

「お姉様、こちらです。」

 ブライアンとシェーンが手招きしてくれた。

「久しぶりね、ブライアンもシェーンも元気?」

「「はい。」」

 シェーンは私に似ていると思った。大きくなった。

「お姉様もお元気そうで良かったです。」

 ブライアンも一気に大人になっちゃって。もう婚約者がいるものね。


「あ、始まります。」

 ブライアンが言うと、新郎新婦が入場して来た。

(うわ。どうしよう…やっぱり見れない…。)

 やっと2人を見れるようになったのは、祭壇の前に立って誓いの言葉を神父の後に復唱している所だった。

(声が…違う??…え??誰??)

 後ろ姿のシルエットが全然違った。


 急いでブライアンにひそひそと聞いた。

「ねぇ、エミリーの隣の人って誰!?アシェル様じゃ無いの!!?」

「何を言ってるんですか!?あの方はデズモンド男爵家のディリーさんですよ!!聞いてないんですか??アシェル様との婚約話しはエミリーがいきなり無しにしたんですよ!!」

「え!?聞いてないわよ!!?」

「何ですって??まぁ、とにかく、こうなったんです!!」

「ほら、あちらにいらっしゃる王太子様達と一緒にアシェル様もいらっしゃってますよ!!」

「え??」


 不敵な笑みをしたアナイスと目が合った。次に微笑んでいるレイナウトとも目が合った。

(そう。お2人は知っていたみたいね。)

 その隣にいたアシュリの方は見えなかった。


(でも、どうしろと?…だって、アシェル様はエミリーに振られたって事でしょ?私の事なんて何とも思われていない…。しっかりして私。ここには戦いに来たんでしょ!!忘れちゃダメ。)


 結婚式なんてそっちのけで、神に感謝を伝えだした。

(なぜ私の時が戻ったのか分かりません。もしかしたら本当に夢を見ていたのかも…でも、感謝しております。大切な人達を大切だと思わせて下さいました。大事な親友が出来ました。沢山の知らなかった感情を教えていただきました。十分です。これからは神に一番近い場所に居させて下さい。私の全てを神に捧げます。)

 

(怖くない。私には沢山の味方がいるもの。…怖くないわ。)


 式が終わり、父親がルイーズに言った。

「お前のような娘でも、役に立ってもらうぞ。」

 ルイーズも一緒に帰るぞと言う事だと分かった。

「お父様、わたくしは…」

「お久しぶりです。ライムズ公爵様。」

 アシェルが突然話しかけてきた。

「ああ、久しぶりでもないと思いますが?お元気そうで。」

「はい。お陰様で。ルイーズ様とお話ししたいのですが、よろしいですか?」

「申し訳ないが、娘は…」

「ライムズ公爵、久しいな。」

 レイナウトとアナイスが入り込んで来た。

「王太子様。お久しぶりでございます。この度は、娘の結婚式にわざわざ来ていただきまして、至極光栄でございます。王太子妃様も、お健やかそうで、嬉しい限りでございます。」

 そこで数回言葉が交わされた後、レイナウトとアナイスとアシェルが他の貴族に気を取られて少し離れた時にチャンスだと思って、勇気を出した。


「お父様、わたくしは修道院に入ろうと思っております。」

 突然だったけれど、思ったより大きな声で宣言した。

「ん?何を…」

「ですから、わたくしは…」

「ルイーズ様、こちらへ。お話しする約束でしたよね?」

 アシェルがルイーズの腕を掴んだ。

「え?いや、え??」

「では、失礼致します。」

 連れて行かれた。

 レイナウトとアナイスと義母がライムズ公爵を足止めしているのが分かった。

「え、あの、…??」

 


 教会の裏にある泉の横にあるドーム状の休憩スペースに連れて行かれた。


「あの、私…ようやく勇気を出して父に修道院に入りたいと伝えようと…」

「その事なんですが、考え直してもらえないでしょうか?」

「え??」

「ルイーズ様、私と結婚して下さい。」

「ずっと、ルイーズ様が好きでした。どうか、どうか修道院に入らずに、私の側にいてくださいませんか?」

「…あの、えっと…」

 あまりに突然の事でルイーズはしばらく黙ってしまった。


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