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エラの魔の手に捕まっていた愚かな宰相は、ただ騙されていいように使われているだけだと知っていたので、しばらくの謹慎と年俸の減額で終わらせた。
他にも多くの貴族がエラと関係を持っていた事は既に捜査済みで、悪質な者は裁判にかけるように指示を行った。全てアシェルが手伝った。
「ここまでとは。だから平民出身なのに皆から好かれていたのか。不思議だったんだ、当初は批判的な貴族が多かったのに、徐々に好意的になった。ただ単に彼女の性格の良さが認められたものだと…思っていたんだが…。」
「王太子様…」
「もはや今や愛情の欠片すらないよ。これから裁判だけど、何を言い出すかな…疲れるけど、しっかり罪は償ってもらう。」
もちろん、アナイスの不義の密告は取り消された。
ルイーズの体調もずいぶん良くなったので、ルイーズは早速修道院へ逃げる準備を始めた。
(この混乱の中で逃げないと。お父様が何か言ってくる前に動かないと!!)
「ルイーズ、弟様とお母様からよ。」
アナイスが先に受け取っていたらしい、弟と義母からの手紙だった。
(え、私が逃げようとしてるのがバレた!?)
と、ドキドキしながらまずブライアンからの手紙を読むと、姉の今回の騒動の心配と叱責が書かれていた。でも無事で本当に良かったと書いてあって、次に義妹の結婚が決まった事が書いてあった。
(そう…なんだ…ついに…)
倒れてから、毎日絶対に会いに来てくれていたアシェルの顔を思い出す。
(どうして言ってくれなかったんだろう…。)
そして、義母の手紙も開いた。
その手紙にも、ルイーズの今回の服毒の騒動の心配となんて危ない事をしたんだというお怒りの言葉から始まっていた。皆から心配されてる事に照れ臭い気持ちになった。そして読み進めると、義妹の結婚式に出席して欲しい事が書いてあった。
そして、日常生活の心配や家で起こったことや弟達の事が書いてあった。最後に書いてあった事は、
(あと、結婚式に招待はしましたが、お父様に会いたくないでしょうから、辞退してください。ルイーズ様の想う人がいれば、その方と一緒になってもいいし、修道院に入りたいのなら、私は全力で応援致します。いつまでもルイーズ様の味方です。どんな道でも応援しますし、ライムズ公爵様と戦うつもりです。)
(母親って凄い…。本当の…母じゃないのに…。)
「どうするの?」
ルイーズの肩から手紙をのぞき込んでいたアナイスの問いに、まっすぐ前を向いて
「結婚式に出席します。」
と伝えた。
「なら、私も一緒に出席します。」
とアナイスが言った。
「王太子妃のわたくしが居る目の前で、下手な事は出来ないでしょう。」
「ありがとう。」
コンコン。
「王太子様でございます。」
「いつもすごいタイミングで来られますね。」
「ねぇ。ふふ。」
「どうしたんですか?」
不思議そうなレイナウトに、今回の結婚式への出席の許可を貰った。
「では私も出席しようかな。アシェルは古い友人だし、右腕だからね。お祝いしたいな。」
「それは、兄も喜びます。ありがとうございます。でも、よろしいんですか?お忙しいのでは?」
「大丈夫だよ。証拠はしっかりあるし、頑張るのは裁判所の者だ。すぐに決着がつく。」
レイナウトとアナイスの2人は、ルイーズの時と違って、確かな信頼と愛情に満ちていて、穏やかな夫婦になっている。
(こんな夫婦になりたかったな…。)と思ってしまうけれど、やはりレイナウトには王族に対する敬愛以上の恋愛的な愛情は湧かなかった。
(見届けて。そして、戦う。私は修道院に入る!!負けても、戦ったって事を大事に生きて行きたい。)