13
アナイスがとても美しいウエディングドレスを身にまとい、王太子の横に立ち、豪華で荘厳な結婚式が行われた。
国中がお祝いムード一色で、ルイーズも心から喜んだ。
一週間が過ぎ、お祝いムードも落ち着いてきた頃、事件は起こった。
アナイスに不義の容疑がかけられたのだ。それを告発したのは宰相だった。
ただ、この事を完全にアナイス達は把握していたし、王太子にもこのような告発がなされる事は伝えてあった。そして、しばらく泳がせて欲しいと伝えた。
アナイスはすぐに捕まる事もなく、自室で生活出来た。
そして、不穏な動きが分かっていたルイーズは侍女を続けていて、変わらず毒見を行っていたが、ついに毒に当たってしまった。
倒れたルイーズに驚き、アナイスがすぐに医師を連れて来るように言うと、アシェルが王宮のお抱え医師では無くディラソン公爵家のお抱え医師と一緒に入って来た。
医師がすぐにルイーズに解毒薬を飲ませてくれたので、3日後にはルイーズの意識が戻った。
「ルイーズ!!大丈夫なの!!?」
ずっと付き添っていたアナイスが目覚めたルイーズに声を掛けた。
そっと、アシェルとレイナウトも部屋に入って来たけれどルイーズは気付いてなかった。
「わたし…生きてるの…??」
「生きてるわよ。」
「死んでも良かったのに…」
「なにを…何を言ってるの!!?死んじゃダメよ!!絶対にダメ!!あなたは私のたった一人の親友なのよ!!戦友であり救世主なのよ!!ぜっっっっっっったいに死なせない!!」
泣きながら抱きついた。
「ルイーズ様、良かった。」
アシェルの声と、レイナウトの安堵の声が聞こえた。
「ご迷惑をおかけ致しまして、申し訳ございません。」
「何をおっしゃっているんですか!?妹の命を救って下さって、何とお礼を言っていいか…でも、二度とこんな事はしないでください。」
アシェルの目が潤んでいるように見えた。
(アシェル様、本当に心配してくださったんですね…。)
「そうですよ。私のアナイスを助けて下さって本当にありがたい事ですが、絶対に二度とこんな事しないで下さい。いえ、命令です。しない事。」
「…はい。」
「ルイーズ様、あなたが指示をしてくださっていたのでこの解毒薬を作る事が出来ました。医師に症状を確認してもらってすぐにこの解毒薬が効くと判断出来ました。」
「そうですか…。」
「どういう事だ?」
レイナウトにこの解毒薬をどうやって作ったかを説明した。そして毒草自体をどこの地方から入手したかや、エラの出身地、エラの行動の怪しさ、そして男性と偽って宰相とやり取りしていた手紙を全て見せた。
「まさか…エラがそんな事…」
「信じられない気持ちなのは我々も同じです。ですが、妹の命まで狙われるようでしたら、私も黙ってはいられません。ここに、宰相に妹が不義を行っている証拠があるという文章もございます。どうですか。この文章を見られて何か気付かれる事はありますか?」
「この筆跡は…間違いなくエラだ…本人が書いている…」
「申し訳ございませんが、愛妾様を王太子様ご自身で監視して頂けないでしょうか?」
「ご自身の目で確認していただきたいんです。もしかしたらエラさんの裏にもっと大きな存在がいるかも知れませんので。」
「そうだな。信じられない…きっと、裏に…」
それから、レイナウトはエラに気付かれないように監視を徹底した。
そして、倒れたのはアナイスであり、重篤な状況だと王宮内に嘘の情報を流した。毒で倒れた事は一切秘密で、突然の体調不良とだけ広めた。
「レイナウト様、御心は大丈夫ですか??やっとご結婚されたばかりでしたのに。それにしても怖いですね…一体誰が…」
エラはレイナウトにしなだれかかりながら、心配の声を掛けた。
「そうだな…。」
「わたくしはレイナウト様が心配ですわ。王族の方の食事は元々毒見がおりますから大丈夫だとは思いますが…」
「ありがとうエラ。」
「愛しております、レイナウト様」
その後、当然夜を一緒に過ごすと思っていたのにレイナウトが出て行ったので不思議には思っていたが、正妃が倒れているんだから当然か…とエラはそんなに気にしなかった。
レイナウトはすぐにルイーズが寝ているアナイスの部屋へ向かった。そこに3人が居ることは分かっていたからだ。
「信じられないし、悲しい事だが、エラだな。ショックだが、もはやショックを通り越して怒りが湧いてきているよ。」
レイナウトが怒りに満ちた様子で入って来た。
ここには信頼しているメイド達しかいない。
「王太子様、いろいろと見えてこられたみたいですね?」
アシェルが問うと、レイナウトはソファに深く座り込んだ。すぐにアナイスがレイナウトの為にお茶を淹れた。
「ありがとう、アナイス。」
「はぁ。もう証拠だらけだ。自分は絶対に怪しまれないという安心感があるんだろうな。信じられない事まで知れて…アシェル、手伝って欲しい事がある。」
「何なりと。いつでもお使いください。」
「ありがとう。」
数日後。
「なるほどな。」
「え…レイナウト…様!?」
宰相との睦事の真っ最中だったエラは驚きと共に血の気が引いた。
「ち、違うんです!!宰相様が無理矢理っ!!」
「な、何だと!!?お前の方からすり寄ってきたではないか!」
「違うんです王太子様!!この女がっ!!」
「もうよい。この女を連れて行け。」
衛兵がエラを取り押さえて連行した。
「王太子様…」
宰相が恐怖の顔で固まっていた。
「お前もすぐに服を着て私と一緒に来い。」
「は、はい!!」