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サイプレス  作者: 熊懐印
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 部屋に戻ると、アナイスがどうしたのか聞いて来た。

 毒については、不安にさせたく無かったので少し黙っておこうと考えた。


「義妹との婚約はいつ決まるのかお聞きしたの。そう言えばどうなったのか知らなかったから。」

「ああ、そう言えば。いつだって??」

「まだ不明みたい…。」

「ふーん。でも不思議ね。こんな事言っていいか分からないけど、兄様はルイーズの事が好きだと思ってたのに。その事を、前のお茶会で聞いてみたんだけど…はぐらかされたのよね…。」

「え!?」

「まぁ、ルイーズは恋愛どころじゃなかったものね。気付いてなかったよね?」


「…、それ、きっと違うよ。義妹と私は全然性格が違うから…アシェル様は私の事なんてお好きにはならないもの…。」

「そんな事無いわよ!だって、ルイーズをうちに来てもらう時に、どうしたらいいのか悩んでる私の所に真っ先に兄様が来たの。兄様が私に会いに来るなんてそれまで一度も無かったのに!!そこでアドバイスをくださったの。すごく真剣にルイーズを一緒に助けようって言ってくれたの!絶対好きだと思ったわ!!」

「?…ルイーズ??どうしたの??」

「アナイス、私、わたし…おかしいかも…」

「はい??」

「初めてアシェル様と義妹の婚約の話しを聞いた時…なぜだか胸が痛んだの……それからアシェル様のお顔を見るとちょっと、何て言うか…悲しいと思うようになっちゃった…。」

「きゃー!!それって恋ね!!恋なのね!!?両想い!!あら…うーん…?ど・う・し・て、このタイミングで気付くのかしら…?」

「そっか、恋…。私アシェル様が好きなんだ。でも、最初は大嫌いだったし警戒してたのに…」

「どうして!?兄様はお顔も良いし性格も良いし、良い所しかないじゃない!!」

「それが、前世で…」

「あ…、」

「アナイスを私の侍女に推薦したのはアシェル様だと聞いていたの。前世では王宮に来てから顔は合わせていたけれど、そんなに親しいお話しをした事も無かったし、何度か踊ったぐらいで。ただ、紳士だけどちょっと固いと言うか怖いイメージがあって。時が戻ってからは、アナイスと一緒になって私を陥れた人だと思っていたから…。」

「そう…か。」


「なのに!!何で!?ちょっと優しくされたら誰でも好きになっちゃうの私は!?嘘、私って馬鹿!?」

「何言ってるの!?馬鹿じゃないわよ!!それに、私が思うに…兄様と私は幼少期は仲良く無かったの。もしルイーズと友達にならなかったら一生口をきいてくれなかったんじゃないかと思うくらいよ…だから、前世で私と仲が良かったはずが無いと思う…多分お父様から頼まれて渋々私を推薦したんじゃないかしら?」

「そうかな…?」

「でも、義妹さんとの婚約が進んでるんなら…」

「王宮に来て良かった。アシェル様と義妹のダンスを見なくてすんでるんだもん。」

「それにね、決めていた事なんだけど、アナイスが王太子様とご結婚されたら修道院に入ろうと思っていたから。」

「え!?何ですって!!?」

「だって、私が王太子妃にならなかったら、お父様が次はきっと第二王太子様の元に嫁がせようとするだろうなって。それは嫌。だって下の弟と同じ年齢なんですもん!8個も下なんて…良い恥さらしだわ。絶対に嫌!!」

「私は嬉しいけどね?」

「…同じ王宮に居れるのは嬉しいけど…もうお父様の言いなりになるのが嫌なの。それに修道院ならアナイスも訪れやすいでしょ?」

「そう…だけど…」

「いつでも訪ねてきてね。」

「決定なの?」

「…上手く、いけばね。だって結局、女に自由はないもの。」

「そうだね。ま、でも私が王太子様と結婚出来るかも分からないけどね。」

 2人は寂しい空気に包まれた。


「いえいえ、きっとそうなります。で・も、その為にはもっと語学のお勉強に身を入れて頂かないといけないんですけどね?」

 ルイーズが悪戯っぽくアナイスを追い詰めた。

「はい。精進します…。」

 それからは、穏やかな日々が続いた。


 ただ、ルイーズの提案でアナイスとルイーズの夜会への当分の参加を辞退させて貰った。表向きでは語学の勉強が進んでいない為という事にしたが、ルイーズは知っていた。ナエル地方の貴族は親族内でも毒薬を使って暗殺を行う事を。アナイスは歴史があまり得意ではないようなのでピンときていないみたいだったが、変に怖がらせて何も食べなくなってしまうのは避けたかったので、日頃の食事はひっそりとルイーズが毒見をしていた。毒見をしている事は

 夜会では毒見が出来ないので、辞退させてもらった。まさか大勢の前で…とも思うが、もしかしたらやりかねないし、万が一の為にそうした。

 レイナウトにはエラの事は一切伝えていなかった。なぜなら、レイナウトはエラの事を本当に大事に想っているからだ。こんなに優しくて温かい女性はいない。と常々アシェルに言っているらしく、確固たる証拠が無い限り、エラかエラの侍女が怪しいなんて言えなかった。

 ルイーズにとっても、エラの名前が出た事が驚きだった。

 

(エラさんにとって、王太子様の正妃なんて全然敵じゃないのでは?だってあんなに愛されて大事にされてる。だれが正妃になろうと変わらないだろうし…それにどんなに望んでも平民出身のエラさんは正妃にはなれない…いや、なれるかも!!確か何代か前の国王陛下の最後のご正妃様は平民のご出身だったとか…?でもそんな地位を望むようなお方では無いと思うんだけど。とても穏やかでお優しい方だし…。)

 そう思いながらも、いろいろと探りを入れるようにした。


 そして遂に、王太子の結婚相手と式の日取りが決まった。


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