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サイプレス  作者: 熊懐印
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01

はじめまして。

ご存知の方は御無沙汰しております。

熊懐印と申します。


全17話の予定です。

サクサクっと読めると思います。

宜しくお願い致します。



「わたくしは潔白であり、王族に対する無礼は一切行っておりません。しかし、法律の裁きに従います。神は全てをご存知です。わたくしの魂を神へ捧げます。王国の繁栄とみなさまの幸せを心より祈っております。」


 処刑執行人が剣を振り上げ、私の人生は終わった。






(ここは…??)


 目を開くと、薄暗い部屋のベッドの上だった。


(この天井は、叔母の家?)

(思い入れのある場所で幽霊になった?王宮には居たくないと本能で思った?ここか王宮にしか居なかったから。)

 

 そう考えながら自分に触れたら、感触があり温かかった。


(生きてる!?)

(嘘でしょ????)


 急いで立ち上がり、化粧台の前に行った。


 13歳の姿の自分が目の前にいる。


 生きている事に絶望し、鏡を凝視した。

(本当に生きてるの?同じ顔…同じ人生をまた歩なきゃいけない??…嫌だ。早く死にたい。自分という存在がこの世にいるのが嫌。生きて行きたくない。早く死にたい。)


 涙が溢れた。


 散々泣いた後、頭がすっきりしてきた。



「お嬢様、朝でございます。」

 メイドが入って来た。

 淡々と顔を拭かれ服を着替えさせられた。


(ここにいても死ねない。実家に帰らないと。確か…)


 今は父方の叔母の家に預けられている。ここで死んだら叔母にも迷惑がかかる。それは避けないといけない。


 早速叔母に面会の許可を申請した。

 同じ屋敷に住んではいるけれど、会った事は2回だけだった。


 許可が通り、怪訝な顔をした叔母に礼を伝えつつ、実家に帰りたいと訴えた。

 家族が恋しいと泣いてみたり、母が行っている慈善活動に協力したいと強く訴えてみた。


 父から帰さないように強く言われていたけれど、私を疎ましく感じていた叔母は、渋々帰すのだと言いながら、速攻で実家に帰してくれた。



 両親や兄弟が喜んでくれる事も無く、同じ部屋で食事を食べる事も無かった。

 父は少し離れた場所に別邸を作っていて、たまにそちらに居るようだった。

 初めて見る子供時代の弟達は案外可愛かったが、なかなか会える事はなさそうだった。

 すぐ下の弟は私の1つ下で12歳。末っ子は5歳だった。


 実家に帰る為の言い訳の中に1つだけ嘘じゃないものがあった。


 生前の記憶によると、父の評判を上げる為に母が慈善活動をさせられており、そこで天然痘に罹患し亡くなるのだ。

 慈善活動の手伝いをして、運良く自分も罹患し、死のうと思ったのだ。


 母と一緒に教会や、父のお金で建てた小さな病院に赴き、恵まれない方達に食事の提供や看病を行った。

 淡々と日々を過ごしながら、天然痘が流行り出す日を待ち望んでいた。


 案の定、母に天然痘の症状が出た。しかし自分には感染しなかった。


 母が罹患したと分かるや否や、父は別邸から帰って来なくなった。

 長男だけ連れて行き、私と弟はなるべく遠くの部屋で生活させるように指示を出していた。


 母が高熱で苦しんでる中、侍女もメイドも怖がって近付かなかったので、喜んで母の看病をした。

 私が母の看病をしている事が別邸に居る父の耳に入り、母の部屋の外で叱責された。


 私を王太子と結婚させたい父は、天然痘になって死なれても困るし、運よく生き残っても顔に醜い湿疹が残る為、お嫁になんていけなくなる。そうなったら大変だったからだ。

 メイドや侍女に、私を母の部屋に近付けさせないように注意して屋敷から出て行った。


 ただ、父も天然痘に罹患したくないので愛人がいる別邸から離れなかったし、屋敷内の他の者も母に近付きたく無い為に、その後も私が母の看病を続けた。


 母の状態は日に日に悪くなっていった。

(いいな。私も早く病気にならないかな。)

 そんな考えで看病していた私に、母から言葉がかけられた。


「ルイーズ。どうして看病してくれるの?お父様から怒られたでしょ?

……私を愛してくれているの?」


 私は微笑んだだけだった。



 次の日、母はもっと弱っていて、絞り出すような声をだした。


「愛してあげられなくてごめんなさい。優しい子。私みたいにならないで。幸せになって。」


 そう言った次の日の明け方、亡くなった。


 数日間、大掃除と消毒が行われ、新しい母と3個下の異母妹が長男と父と一緒に屋敷に帰って来た。

 一応喪に伏せないといけないので、正式な婚姻は数か月後になる。


 前世で妹がいた記憶は無かったけれど、覚えてないだけかな?と思う程度だった。

 



(結局、死ねなかったな。)

 健康な自分の身体が憎かった。


(あれ??そういえば…!!)


 どうやって死ぬかを考えていると、自分が処刑された原因になった侍女の存在を思い出した。


 侍女は確か隣の屋敷の娘だった。

 親の爵位的には同じで、私の父の方が王に近かったし根回しが上手かった為に自分が王太子と結婚出来た。

 そこに、私の侍女として彼女が来た。

 彼女は自分こそが王太子妃にふさわしいのに!という考えから私を陥れた。

 まんまと嵌められたけれど、今の段階で嫌われたらもっと早く死ねるかも??と安直な考えに至った。


(善は急げだ!!)


 

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