銀杏を踏む
いくら銀杏を踏み潰しても中からオパールは見つからない。乳白色の外角と混じり合う光の当て方で川の水面のように涼しげな翠緑から夜の海のような青まで変わるあの宝石を探している。銀杏は潰れる前から独特の人から嫌われる死臭を放ち、潰れるとさらにその香をぶわぶわと広げる。コンクリートにこびりつく果肉は肉というにはネバネバとした歯垢のように汚らしく、オパールを見つけようとする前は自らの足で踏まないようにまばらに地面をすとんすとんと飛んで渡ったものだ。今は一心不乱に革靴でも銀杏を踏む。黄色い果肉がどろりと漏れ出し、あの嫌な匂いが私を包み込む。銀杏の妖精が涙を流しながら鋭い爪のあるナマケモノのように長い指を私の腕に、顔に食い込ませる。そこからワインのように真っ赤な血が吹き出して、新しい匂いを加える。黄色い匂い、赤い匂い。私と妖精は血まみれになりながら、忌々しいタップダンスを踏む。銀杏が潰れる。皮膚も肉も裂けていく。オパールはまだ見つからない。