『ヒバリと農夫と隣の速記者』
ヒバリという鳥は、地面に巣をつくります。もちろん、野原につくっては、いろんな敵に卵やひなを食べられてしまいますから、草むらの中につくります。
そのヒバリは、麦畑に巣をつくっていました。結構危険です。収穫の時期がきたら、丸裸です。生まれて間もないひなたちは、まだ飛ぶことができません。麦畑の持ち主の農夫が、そろそろ刈り取ろうとひとり言を言っているのを聞いたひなヒバリは、母ヒバリに報告しました。母ヒバリは、ひとり言を言っているうちはまだ大丈夫、と言って、取り合いませんでした。
数日後、ひなヒバリが、これはまずい。人を雇ってでも急いで刈り取らなければ。暇そうな隣の速記者にも声をかけよう、とひとり言を言っていたのを聞いたことを母ヒバリに報告すると、母ヒバリは、ひなたちに急いで引っ越しの支度をするように告げて、次の朝には麦畑から姿を消しました。
教訓:速記者をこういうふうに使ってよければ、速記小説なんて自由自在である。