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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

暗殺部隊からの転職のススメ─プロット投下シリーズ─

掲載日:2026/07/12

私は今、人生の岐路に立たされている。



私には前世の記憶があった。

平和な桜の国で、満足を知らない幸せな時代に生きた記憶だ。

怠惰に過ごした自覚はある。知識を集めることに苦労しない時代であったが、特別秀でた見聞も育てなかった。

しかしその与えられた集合知は、今世の自分の知恵の源泉となった。


故に努力した。

現代スポーツ理論のカケラでさえも千金と言えるだろう。

それらを駆使し、または実験しながら、感覚を鍛え、身体を鍛え、そして魔(・)力(・)を鍛えた───


剣と魔法、そして魔銃の時代。

それが新しく得た生の、物騒な揺りかごとである。


子供時代はすぐに過ぎた。

特筆する事件も無く、比較的恵まれた立場で育ったからだ。

私は貴族の家に産まれた。

高位のそれでは無いが、父は子爵として過分なく評価され、私は三男としてその恩恵を受けた。


貴族の血筋故に前世の記憶を持ち得たのか、たまたま前世の記憶が蘇った身代が貴族であったのか。

その内実は分からん。


幼い頃から魔法に触れ、その理論と神秘を学微続けてもなお、私の転生の理の尖端にすら触れた気がしなかった。


魔法は奥が深く、そして魔導は業が深い…

魔導に魅入られた私は、それが外からどう見られるのかを理解してなかった。想像力の向ける先と入れ具合を怠った、とも言えよう。

そして、その業の深さを理解した時には遅きに失したのだ。



私は戦う魔導師として国に取り込まれた。

成人を迎えて幾ばくも経っていない時だ。

この国では16を迎えれば成人とみなされる。

私が寄親である侯爵家の命で軍の魔法兵団に入ったのは、17を迎えてすぐだった。


この国では、魔法を嗜む貴種向けの教育機関があった。


【王国魔法学院】


ここでの生活も、特筆することが無い。

ただひたすら、私は研究しただけだ。

魔法学院はサブカルにあるような和気あいあいとした場所ではなかった。

学生がテーマを決め研究するか、自分のテーマな近い教授の教室に入って合同で研究するか、複数の教室で教えを受け、自分の研究の輪郭を作り上げていくか…


とにかく皆優秀だった、と思う。

実情は申し訳無いが知らない。

コミュニケーション不足もあるが、私が常に首席として評価された部分が大きかったのではないか、と思っている。


学院の内容が絶対的評価が出来るようなものではなかったが、それでも私の研究の破片は軍事的に評価された。

徴兵はそれ故だった。


軍では最初、砲兵のような役割だった。

国軍の戦術はシンプルで、実績と信頼の残高に優れていた。

しかしそれは同時にカビの生えた骨董品の響きも示していた。


それに加えて、驚いたのがこの国の周辺情報だ。

実は自国は、周りの国とバチバチに戦争していたのだ。

友好国無し。敵国、自分たち以外の全て!

みたいな。控えめに言ってクソである。

外交を担う部署は他国の外務官の前で昼寝でもしてるのだろう。全方位敵国とか、それぐらいの無能っぷりである。


ちなみにこの国の外交責任者は国王である。さもあらん。


魔法の理論と技術だけ積み重ねたペーペー魔法兵の私は、すぐさま実戦投入された。

研究畑の人間を、練兵もせず砲台代わりに前線部隊へ支給した。

控えめに言ってクソである。


唯一幸いなことは、敵に魔法兵が少なかった事だ。


それでも兵器としての魔道具はこちらの命を容赦なく狙ってきたし、私はその殺意に抗う必要に迫られた。


私は天才だった。

控えめに言えば、秀才だった。


新しい戦術単位【特記魔導師】。


戦線で早々に、生命の危険に駆られて私が生み出した、新たな兵器である。


内容はシンプル。

個人で軍を圧倒する。

それだけだ。


これまでの魔法兵の役割は、砲兵に偏っていた。

というより砲兵だった。

殺傷能力と殺傷範囲を備えた、戦術的価値の高い兵。それが魔法兵だ。


では特記魔導師とは何なのか。


具体的に言えば、分厚い魔力障壁を展開しながら敵司令部、または敵主力後方に進軍し、これを殲滅、即時帰投する、というモノだ。

戦術としては非常にシンプルで、のちの時代に生まれるであろう縦深浸透戦術、もしくは首刈り戦術に近いかもしれない。

行ってブッコロして帰ってくる。馬鹿っぽいが、実は一番有効な魔法兵の使い方だ。


これまでは魔法兵は砲兵として使われてきた。

砲兵は長射程の効力を持つが、固定射撃がネックともいえる。

移動して射撃すれば、と思うかもしれないが、砲兵の前には前線兵がいる。歩兵や騎兵もいる。移動してブレた砲撃が、味方の上に振り注がない保証はない。

固定砲撃であれば、射撃地点を固定化すれば誤射は限りなく減る。


しかし、魔法兵、魔法を使う者のポテンシャルはもっと高いと、私は考えた。

移動にも防御にも索敵にも攻撃にも、魔法は有効だ。

無駄を無くし、継戦能力と戦果のバランスを考えれば、実現は不可能じゃない。


…故に、私は【ぼくがかんがえたさいきょうのまほうし】を具体化し、必要技術を体系化した。


それが特記魔導師である。



戦果は、想定を遥かに上回った。


最も戦果を挙げたのはもちろん私である。

私が教練した他の魔法兵達も、十分な戦果を挙げた。

なにより、近接戦闘能力を備えた移動砲兵という兵科が凶悪だった。


私が配属された戦線、相手国との戦争が、特記魔導師が生まれてわずか一年で終わった。

無論、相手国の降伏で、だ。


私の確立した特記魔導師の技術体系は洗練され、細分化していった。

それに伴い各方面、各戦線でも多大な戦果を挙げ、【魔法兵】ではなく【魔導師】の呼び名が一般化するのも、時間は掛からなかった。


そうなると生まれるものだ。


敵の、特記魔導師が。



周辺国との戦争が落ち着き、多くの国を併呑して大きくなったこの国は内政に舵を切ろうとしていた。

まぁ、そうせざる負えないほど国内経済がガタガタだったのもあるが。


すると、所々収束したはずの戦線でレジスタンスによって我軍の特記魔導師が討ち取られる事案が出てきた。


国内の安定化を嫌う周辺諸国の介入である。


新たな紛争、新たな戦線、新たな敵国。

この国は大きくなりすぎた。

多くの国はこの国を恐れ、そして必死に学んだ。

特記魔導師(アレ)を得なければ、と。


泥沼の争いになる。



私の責任?

無いな。運用者が責任者でもある。私の直属の上司は侯爵家なのだから、侯爵家が悪いとも言えるし、国策として採用した王宮の責任でもある。


と、言えたらよかったが。いや、言ったんだが。


国や侯爵家は、私に責任を求めた。


そこで出奔する道もあったと思う。

今ならそう考えられる。

しかし、当時は魔導師の可能性を追求する為に必要だった。

組織が。人材が。そして、戦場(実験場)が。


特記魔導師を屠る、特記魔導師。


戦闘における魔導師の運用論は、突き詰めれば魔法による人体機能の昇華。

人体という触媒を用いた一種の魔法とも捉えられる。

あらゆる物を使い肉体的強化、精神的強化、そして魂(アストラル体)の強化を施していった。


やはり理論と実験、観測に分析は、自分の肉体が最も効果が高い。


この時の外のことはあまり知らない。

覚えていない、のではなく、実験と開発に集中し過ぎて戦線の状況を把握していなかった。

求められればある程度カタチになった実験体を前線へと送り出した記憶はあるが、その実験体の戦果を確認した覚えは無かった。


結果として、国のサイズが三倍ほどに膨れ上がった頃に、私の考える部隊の完成は成った。

後の【暗殺魔導部隊】の完成である。


そこから大陸の統一まで、私と私の作り上げた部隊は特記魔導師を狩り続けた。


私に政治は分からない。

前世の記憶はあれど、政治に参加した経験などあるはずもなく。

流されるままに生き、流された先で死した私の人格は、今この生でも流される事を是としていた。

抗うことを恐れた、という面もある。だが、一番は岐路に立ったことが無かったんだ。

今までは【進む】か【外れる】か【止まる】しかなかった。

なれば進むを選ぶ程度には探究心も冒険心もあった。

だが、【誰を見捨て、誰を選ぶ】もしくは【心に従うか、血に従うか】。

そのような選択は、これまで無かったのだ。


そうして私は、岐路に立った。



この国を滅ぼすのか、それとも己の自由を取るのか…

その分岐点に。








大陸を統一してしばらく。

私の上司たる侯爵家は国に多大な貢献をしたとして様々な特権を得た。


名声と権威と権力と武力。

その全てを手に入れた侯爵家が、それに溺れるのもまた…盛者必衰の理の流れか。


王家の中でも、侯爵家に縁故のある王子を擁立して王権の簒奪を試みたのだ。

もともと私を見出したのも偶然に近い。

特記魔導師の乱立の責任をこちらに押し付けた点を顧みても、政治に不慣れな私よりも失策を好む気質であると知れよう。


つまり。

私を招集せず、自分の配下のみで事を成そうとしたのだ。

まぁ、最近は私や私の部隊のことを恐れているき(・)ら(・)い(・)があると伝のある貴族から聞いていた。

それも分からなくはないが。


だが、この国には私が鍛え研ぎ澄ませた特記魔導師の部隊が配備されているのだ。

もちろん王宮にも。

失念したとしても、戦力の調査ぐらいはすべきだったと思うが…


その盛大な自殺にも似た蛮行により、侯爵家とその派閥の尽くが討ち取られる結果と成った。

今ココ、である…


侯爵家の懐刀として認識されている私は、現在包囲された研究所の中で私の部隊の者たちと顔を突き合わせていた。


外には一千人の特記魔導師─陸戦魔導連隊ならびに近衛魔導師団の混成旅団─と、その支援兵科【装甲魔導機兵】六千人が包囲している。


生命の危機、という言葉が生易しく感じるほどの絶望的な状況である。


対するは、【先進魔導技術研究所】所長の私と、【先進技術実証部隊】の──────二十名。


普通ならば、まばたきの合間にすり潰される戦力比だ。


普通ならば。







故に私は選ばねばならない。









外にいる七千人の実働部隊と王都の一万二千の魔導兵団、そして敵対する王侯貴族を…





─────鏖殺するか





─────それとも新天地を目指すか、を。










おわり(設定)


下書きが五十件埋まってしまったので、プロット前段兼短編としてポロリしまする。

続き書くかは未定でござりる。乞うご期待!(ゑ)

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