第二章 キャンパスでの再会と偶然の出会い
僕はシャックル、16 歳の普通の高校 1 年生だ。最近、家族と一緒にこの小さな町に引っ越してきて、まだここのことはあまりよくわかっていない。
もちろん、引っ越しのために、ここの高校に転校してきた。そして今日が初めての登校日だ。
「天国高校……」
今、高校の正門の外に立って、その名前を見つめながら、僕は思わず考え込んでしまった。
「この名前、ちょっと……」
まあいい、名前が変わっているだけで、聞いたところによるとかなりいい学校らしい。
僕はこの町に来たばかりだけど、同級生たちも皆中学からこの高校に進学してきたばかりだから、道に迷う人は僕だけじゃなかった。
新入生の入学式も中学の時とあまり変わらず、僕にとっては退屈なだけだった。
退屈な入学式がすぐに終わり、割り当てられたクラスに来てから、まだ十数分も経たないうちに、僕は危機感を感じていた。
「これはまずいな……」
その時、クラスの他の生徒たちはもう小さなグループを作って話し始めていて、中には中学時代から知り合いの人もいた。要するに、みんなはすでに友達作りを始めていて、僕だけが一人でぼんやり座っていた。
「そういえば、中学もこんな感じだったな……」
今の惨状が中学時代を思い出させた。中学の入学当初も今と同じで、友達作りが全くできなかった。その結果、中学 3 年間、学校ではまったく存在感がなかった。
「まあいい、学生の本分は勉強だ!勉強に集中すればいい!」
そう思っていた時、元々賑やかだった教室が突然静かになった。
みんなが後ろのドアを見ていたので、僕もそちらを振り向いた。
「なんだと!?」
ある美少女がドアのところに立っていた。彼女はふわふわで柔らかな、肩にかかるほどの黒髪のストレートヘアを持ち、大きな瞳はまるで輝く湖のようで、特にその真紅の瞳はまるでバラの花びらのようだった。
「美しい……」
自称「不動明王の心」を持つ僕でさえ、その美貌に驚かされてしまったから、他のクラスメートはなおさらだった。男の子たちは短い静けさの後、再び賑やかになった。彼らの多くは平静を装っていたが、実際には彼女をチラチラ見ていた。
女の子たちは早くも彼女の周りに集まっていた。こう見ると、彼女の美しさは男の心を掴めるだけでなく、同じの女の子たちの心も気軽に魅了できるようだった。
「本当にすごいな。美しいというだけで、人間関係においてこんなにも有利になるんだな。」
僕は思わずそう感慨深く思った。人間は本当に視覚に頼る生物なんだな、初対面の印象の70%以上は相手の外見から来ると言われたことがある。
もちろん、声も大きな要素だ。彼女が話し始めた瞬間、僕は確信した:彼女の声も完璧だった。
ただ、彼女の声にどこか聞き覚えがあった。
僕の錯覚かな?
時間が経つにつれて、教室にはどんどん人が増えていった。担任先生が教室に入ってきたとき、みんなは席に戻るように言われた。
みんなの視線は明らかに、その美少女に集中していた。誰もが、彼女が隣の席に座ってくれることを期待していた。もしそうなれば、少なくとも次の学期は完璧な美少女の隣で過ごせるのだから。そうなれば、本来苦しい授業時間も天国になるだろう。
「本当にこの高校の名前にふさわしいな……」
その時、誰かが僕の隣に座る音が聞こえた。
「え?」
振り向くと、彼女が隣に座っていた。
そして、彼女の周りの席は、僕以外全て女の子だった。つまり、僕は彼女の隣に座る唯一の男の子だった。
数本の敵意を持った視線がすぐ僕に向けられていることを、僕は感じることができた。もちろん、全部男子からのものだ。確かに、他のどの男よりも先に彼女と仲良くなるためには、隣の席の利点は大きい。
「おお、なんてこった……」
僕は何もしていないのに、すでに敵意を持たれている。これでは友達作りがさらに難しくなる。
担任先生が自己紹介をして、僕たちにも自己紹介をするように言った。彼女が前に立ったとき、教室の空気が一気に緊張感で満たされた。みんなが彼女の言葉を期待していた。
「わたしはモノボリと申します。エデン中学校から来ました。このクラスに来られて本当に嬉しいです。だから、これからの三年間、皆さんと楽しく過ごせることを願っています!」
彼女の自己紹介に対するみんなの反応は熱烈で、すでに何人かの男子がチャンスを逃さずに彼女に向かって自分の好意を大声で叫んだ。やっぱり、彼女に良い印象を残したいというつもりだろう。
「すごいな……」
彼女が席に戻るのを見て、僕は彼女の人気に感嘆せざるを得なかった。すると、彼女も僕を見て、僕たちは目が合った。
それで、僕はこれまでの人生で一度も見たことのない、言葉では表現しきれないほど甘美な微笑みを見ることができました。その幸福感は一瞬にして最初の緊張と驚きを覆い、既に速まっていた僕の心臓を別の形でさらに速くさせました。
彼女の笑顔は、まるで世界に僕と彼女だけが残ったように感じさせた。この世界で僕は、唯一見えるのは彼女の笑顔で、唯一聞こえるのは僕の心臓の音だった。
なんておかしなことだろう、これは僕が自分に定めた規則に反することだぜ。
僕の精神はまだ脆弱すぎるのか?
彼女が頭を回しても、僕はまださっきの夢中から覚められなかった。担任先生が僕のところに来るまで、僕は我に返らなかった。
「シャックルさん、ここでどれくらいボーッとしているつもり?もう何度も呼んでいたんだぞ」
「す、すみません!」
まさかすでに僕の自己紹介の番だった。これで開校初日、友達ができなかっただけでなく、男の子たちから敵視され、さらには恥をかいたことになる。
「おわった……僕の高校生活も、絶望の中で過ごすことになるのか?」
席に戻った僕は、既に自分の暗い未来を予感していた。
「いや、学生の本分は勉強だ!勉強に集中すればいい!」
子供の頃から社交や娯楽活動が不足していた僕は、ずっと勉強を自分がこの世界に来た時からの第一の使命だと思っている。もしかしたら、自分を慰めるためにそう考えているだけかもしれないけど……
そう、認めるよ。でも、もし自分を慰めないなら、誰が僕を慰めてくれるんだろう?
その時、僕の耳元に温かい声が聞こえた。まるで僕の悩みを見抜いて、慰めようとしてくれているかのようだった。
「シャックルさん、大丈夫?」
モノボリさんが振り向いて、微笑んで僕を見つめていた。なぜか、彼女の視線には特別な感情が込められているように感じた。
もしかして、彼女は僕のことを気にかけているのか?
「いや、大丈夫だよ。僕はただ……」
そんなことはありえない。初めて登場して全員の目を引くような美少女が、どうして僕のことを気にかける理由があるのだろうか?
「そうなの?なら良かった。」
彼女は微笑みながら僕に答えた。彼女の微笑みは何度見ても飽きることがない気がする。
しかし残念ながら、彼女と話す時間はすぐに終わった。全員が自己紹介を終えると、すぐに授業が始まった。結局、午前中は彼女と話す機会がなかった。
「はあ……高校の初めての昼食時間も一人で過ごすのかな?」
教室を出た僕は、他の生徒たちが集まって食事をしながら話しているのを見たくなかった。自分だけがやや冷めた昼食を一人で食べる光景を想像するだけで、一日中憂鬱になりそうだった。
「ここなら良さそうだ。」
やっと古びた旧校舎で、ひっそりとした教室を見つけた。長い間掃除されていないため、埃が積もっていたが、一人静かに昼食を食べることができれば、それで十分だった。
そうして、あまり考えずに教室の扉を開けた。すると、中から声が聞こえてきた。
「え!?」
ある見知らぬ女の子がすでに中に座っていた。
「あ!」
彼女を見つめると、彼女も僕を見ていた。正直、どう対応すればいいかわからなかった。「ごめんなさい」と言って扉を閉めて立ち去るべきなのか?しかし、そうするとどこで昼食を食べるのか、階段に座るわけにはいかない、だってそこは埃だらけなんだ。
困っている僕に、彼女が先に話しかけてきた。
「あなたもここで昼食を食べるの?」
「ええ、そうですけど……」
「友達がいなくて、静かな場所で一人で食べたいってこと?本当にかわいそうね~」
彼女はそう言って、悪戯っぽく笑った。
「よくわかってるね?」
僕も自然に応じたが、彼女は突然怒ったように叫んだ。
「は?なに言ってるの?あたしがこんな哀れな理由で先学期の初日からずっとここで昼食を解決しているわけじゃないよ、あたしはただ……」
彼女は自分がすべてを話してしまったことに気づいたのか、声がだんだん小さくなっていった。
「何よ?そんなにボーっと立っている。食べたいなら、早くこっちに来なさいよ。昼食の時間はもうすぐ終わるよ、今食べないと、間に合わなくなる。だって、ここを見つけるのに、随分時間がかかったでしょう?」
彼女はおそらく、口を滑らせたことの恥ずかしさを隠そうとして、再び大声で僕に命令した。
「じゃあ、お邪魔します!」
僕は教室に入り、きれいな机や椅子がないかと辺りを見渡し始めた。しかし、どれだけ探しても、厚いほこりや蜘蛛の巣で覆われた机や椅子しか見つからなかった。
「お前さ、無駄な努力はやめたほうがいいよ。この教室、もう十年以上使われていないんだ。中の机や椅子はとっくに汚れているし、たとえ掃除しても使えないだろう。何せ十年以上経っているから、椅子は腐って壊れているんだよ。」
彼女は僕が教室内を見回しているのを見て、僕の意図を察したようで、まるで僕を馬鹿にするような口調で言った。
「こっち来て。」
彼女が僕にそう言った。
「え?」
「ここで使えるのはあたしが今使っている机と椅子だけ。あたしが食べ終わったら、それを使っていい。」
「え?でも……」
「先に言っとくけど、一度きりだからね。次にここに来るときは……せめて自分の椅子を持ってきて。」
僕が返事をする前に、彼女はすでに残りの弁当を全部食べ終えていた。そして立ち上がってここを去っていった。
僕は彼女が座っていた椅子を見つめた。なぜか、見つめれば見つめるほど心臓が早鐘を打った。
僕がその椅子に座ると、心臓の鼓動はさらに速くなった。椅子には彼女の体温が残っているのをはっきりと感じたからだ。
「って、なんでこんなに……熱いんだ……」
冷めていたはずの弁当が急に熱くなったように感じて、喉を通らなかった。完全に冷静になってから気づいたのは、弁当が熱くなったのではなく、僕の体温が上がっていたということだった。
「まさか熱があるのか?」
教室に戻ると、僕はさっきのことを思い返していた。あの椅子に座った瞬間、本当にひどい風邪を引いたように、頭が働かなくなった。
「くそ、これが発情ってやつか?ただ女の子が座った椅子に座っただけで、彼女の体温が残っているだけで、そんなことで思考ができなくなるなんて……」
さっきの自分の行動を思い出すと、羞恥感と罪悪感が一気に押し寄せてきた。同時に、男って本当に馬鹿な生き物だと思った。たった少しの異性の体温だけでこんなに振り回されるなんて。
それとも、実は僕だけがこんなふうになるのか?他の男子はこういう状況でも心の安定を保てるのに、僕だけがこんなふうになってしまうのか?
もしそうなら、それはつまり……
僕は変態ってことなのか?