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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
章間 悪党は決して正義にはなれない
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後編

海沿いにある廃工場。

ここが奴らの溜まり場。


ここに似つかないバイクや車が置いてある。

中から耳触りな声が漏れて来ている。


ここで間違いない。


匿名で義父にこの場所を連絡した。


信じてくれるかはわからない。

だけど、そんなのどっちでもいい。


一際目立つスポーツカーに乗り込んで鍵を生成してエンジンをかける。


カスタムされたミッション車。

相当車好きなんだろう。


そんなの知らないけどね。


僕はバイクにかけてあったフルフェイスヘルメットで顔を隠して、ギアを入れてアクセルを踏み込む。

走り出した車が倉庫のシャターをぶち破った。


衝撃音に中にいた全員がこっちを見る。

そんなの気にせずに姉さんと奴らの間にドリフトして車を停める。


さながら姉さんを救いに来たヒーローみたい。


悪党の僕には似合わないけどね。

でももしかしたら今だけは義家族のように正義の味方になれるかもしれない。


全員が固まっている間に車から降りて、姉さんを吊るしている鎖を切る。

それから後部座席に座らせて、下着姿を着ていたレインコートで隠した。


「このレインコートは――」


『おやすみ』


言霊で姉さんを寝かせる。


この先は姉さんには見せられない。

姉さんの鬱血した痛々しい手首を見て、僕の憎悪はドス黒く渦巻いている。


義父が信じてくれていたら、そのうち警察が来るだろう。

でも、時間は充分にある。


僕は車を飛び越えて奴らの元へ歩いていく。


全部で七人か。


「お前!

よくも俺の車を!!」


暴力団の男が怒りを露わにしている。


何を怒っているか知らないが、こいつが電話の主だ。


「ガキが!

調子乗るなよ!」


半グレの一人が鉄パイプで殴りかかってくる。

その鉄パイプは僕の腹にヒットした。


「痛ぇ!」


だけど、叫び声と同時に半グレが鉄パイプを落とす。

気力で強化した僕の体は鋼鉄並に硬い。


僕は鉄パイプを超能力で手元に引き寄せて顔目掛けてフルスイング。

沈黙して倒れた半グレをひたすら殴り続けた。


「どうした?

もう終わりか?

このままだと全身粉々だぞ」


骨が砕ける音が響く。

決して殺しはしない。

ただひたすらに骨を砕いていく。


鉄パイプを伝って骨が砕ける感覚が伝わってくる。


あと6人。


「てめぇ!!」


二人の半グレが同時に迫り来る。

僕は鉄パイプを放り投げてそっちに向かって歩いていく。


二人の鉄パイプが振り下ろされた瞬間に二人の後ろに回り込んだ。


「消えた!!」


二人には消えたように映っただろう。

だけどこれで終わりじゃない。


両手で二人の後ろ襟を掴んで、普通の建屋の3階ぐらいあろう工場の屋根の骨組の上まで飛び上がった。


「なんなんだ!」


「放しやがれ!」


「いいのか?」


バカな奴ら。

そう言うなら放してあげるよ。


当然手を離すと二人は下に落下していく。


「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー!!」」


このまま落ちたら死ぬから地面にぶつかる寸前で超能力で止める。


「助かったのか?

グハッ」


安心した瞬間に飛び降りた僕が踏み付けて、二人の背骨をへし折った。


足の下でピクピクしている二つの物体を見下す。


「ちゃんと生きてるよな?

死ぬんじゃないぞ。

まだ死ぬのは許してないからな」


あと4人。


「ひ、ひぃ〜」


半グレの一人が逃げ出した。

もちろん逃がさない。


一瞬で後ろに追いついた僕は後ろからローキックを入れる。

曲がってはいけない方に右足が曲がって、前のめりで倒れる。


「ぎゃあぁー!」


叫び声にお構いなくもう片足も踏んで砕く。


「逃げないのか?」


地を這って逃げようとした所を、腕踏んで砕いた。


「さあ頑張って逃げろ。

工場の外まで出れたら見逃してやるぞ。

逃げろ逃げろ」


僕は少し男が前進する度に一箇所ずつ踏み砕いていく。


少しづつ砕くこの感覚が気持ちいい。

なんか気分がスッキリしてくる。


あと3人。


半グレのリーダーの男が走って来て、ナイフを僕目掛けて突き出した。

その右手を掴んで、肘を曲がらない方に無理矢理曲げる。


「ぎゃあー!!」


叫び声と共にナイフを落とす。

そのナイフを拾って太ももに深く刺した。


また叫び声をあげてるが、気にせず何度もいろんな所を刺す。

死なないように急所を外しながら、適度に止血していく。


「さあさあさあ、どうする?

どうするんだ?

早くなんとかしないと穴だらけになっちまうぞ」


人を刺す感覚に酔いしれる。

肉を切り裂く感覚が病みつきになって一心不乱に刺し続ける。


やがてリーダーは痛みに耐えきれずに気絶した。


あと2人。


「この化け物が!」


暴力団の男が拳銃を取り出して発砲した。

その弾を人差し指と中指で挟んで止める。


「そんな馬鹿な……」


弾を指で弾いて拳銃を弾き飛ばす。


「化け物?

ああ化け物で結構だ」


この窮屈な世界で理不尽に耐えないといけないなんてごめんだ!

この理不尽をねじ伏せる力を持つ者が化け物だと言うのなら、僕は化け物でいい!


今度はこっちが生成したリボルバーを発砲する。


魔力の弾は男の肩に風穴を開けた。


更に何度も何度も発砲しながら近づいていく。

魔力の弾が男の四肢は穴だらけにして、男は倒れる。


「おいおい。

弱い相手にしかイキれないのか?

何か喋れよ」


その男を見下しながら発砲を続ける。

弾が貫通する度にピクピク動くおもちゃのよう。


意識が無くなりそうになると痛みで覚醒するのを繰り返す。

それを続けていると、やがて完全に意識を失った。


あと1人。

半グレの女だけ。


女は完全に腰が抜けて震えている。


「お願い……殺さないで……」


僕は銃口を向けると勝手に命乞いをしだした。


「ならば脱げ」


「え?」


「今から犯してやるから脱げ」


姉さんにしようとした事をやってやる。

いや、それ以上の事をだ。

めちゃくちゃに犯してやる。

それこそ一生立ち直れない程に。


「そんなのイヤ……」


「イヤ?

今イヤって言ったか?」


何がイヤだ。

ふざけるな。

姉さんを犯すつもりだったんだろ。


僕が発砲した弾が女の顔の横を掠る。


「さあ選べ。

身体中に風穴開けられるか、犯されていい声で鳴くか」


「わ、分かりました。

だ、だから殺さないで……」


女が上着を脱ごうとボタンに手をかける。

だけど震えて上手くボタンを外せない。


あまりにモタモタしているのに僕はイラついてもう一回発砲した。


「ひぃ!

待ってください。

今すぐ脱ぎますから」


「死にたくないなら早くしろ」


女は引きちぎるようにして上着を脱ぐ。

そしてスカートに手をかけた時。


「やめなさい!」


姉さんの声が聞こえた。

僕は驚いて車の方を見る。


姉さんが車からのドアにしがみつきながら出て来ていた。


まだ言霊は効いているのだろう。

必死に眠さに抗っているようだ。


姉さんにこの惨状を見せたく無かったのに。


「何をやってるの!

こんな酷いことするなんて!」


姉さんが僕に向かって怒鳴り声をあげる。

その表情は怒っている表情だ。


酷い?

確かにグロテスクだけど、こいつら姉さんにやった事に比べれば大した事じゃないよ?


一応全員殺して無いし。

全員後遺症は残るだろうけど。


「こんな事許されない!」


「こいつらは君を拉致して犯そうとした連中だぞ?」


「それでもこんな酷い事をしてはいけない!」


「君はもっと酷い目に遭わされるはずだったんだぞ?」


「助けてくれた事には感謝してる。

だからといって、これはやり過ぎよ」


「なぜだ?

当然の報いだろ?」


「違う!

この人達には法の裁きが下る。

正しい報いがある。

こんな感情に任せた私刑なんていけない。

それがこの法治国家である日本のルールよ」


姉さんの言葉に僕の中で衝撃が走った。

込み上げていた憎悪が弾け跳んだ。


「フフフ。

アハハハハハハー!!!」


大きな笑い声が自然と出てくる。


今だけは正義になれる?

思い上がりにも程がある。


あれが正義と言うものなんだ。

どんなに過酷で残酷で理不尽な事があろうとも決してブレない。


この世のルールに則って正しい判断が出来る。

それが正義なんだ。


そんな事僕には出来ない。

絶対に耐えられない。

それは僕が悪党だから。


「すまないすまない。

君の言う通りだ。

君が全て正しい」


「本当にあなたには感謝してる。

感謝してもしきれない。

私も一緒に弁明するから、あなたも一緒に出頭しましょ」


その声はいつもの優しい姉さんだ。

本当に僕の事を心配してくれてる。


外でサイレンが近づいてくる。

どうやら義父は信じてくれて警察が来たようだ。


「それは出来ない」


「どうして?

そんなに大きな罪にならないはずよ。

母さんにもお願いするわ」


「俺は悪党だから」


「そんな事ない。

あなたは私を助けてくれた。

ただちょっとやり過ぎてしまっただけ。

あなたの力ならきっと沢山の人を救えるはずよ」


無理だよ姉さん。

だって姉さんの言ってる事が正しいと理解出来ても、納得出来ないもん。


こんな奴らを法の裁きだけで済ますなんて本当は耐えられない。

もっともっと痛めつけてやりたい。

生きていくのが辛くなる程に。


そう思ってしまうから僕は悪党なんだ。

決して正義なんてなれない。

一縷の救いも無い悪党。


もう諦めよう。

僕は悪党として生きて行くしかない。


でも姉さんがやり過ぎだと言うのなら、僕は少しだけ自重しよう。

感情のままに痛めつけるのはやめよう。

その為に憎悪と美学12はここに置いていこう。


外で車が数台止まる音がして、警察官が沢山入ってくる。


「悪党は何も救えない。

悪党は奪う事しか出来ない」


「待って!」


僕は姉さんの言葉を無視して警察官に向かって走りだす。

そのまま警察官の群れをを飛び越える。


土砂降りだった雨も止み、雲の隙間から綺麗な月が顔を出している。


僕は海に映った月に飛び込んだ。



「あなたも正義に憧れた事があったのね」


僕は話を聞き終わったスミレが言った。


「そうかもね。

僕にとって義家族は憧れの存在だったのかも。

自分に無い物に憧れるのは人の性だからね」


「そうね。

私の憧れの人も私に無い物を沢山持ってるわ」


「君に憧れられるなんて幸せ者だね」


「そうね。

その幸せを実感して欲しいわ」


「いるよね。

有り難みを理解出来ない悪い奴」


「全くもって悪い人ね」


スミレが顔を僕の顔にぐっと近づける。

出る所が出た体のいろんな部分が当たる。


あまりのいい匂いと柔らかい身体に、自然と反応しそうになるのを必死に耐える。


「スミレ。

いろいろ当たってるよ」


「どこが当たっても恥ずかしく無い完璧な身体でしょ?」


「そうだね。

完璧なプロポーションだね」


「ありがとう」


いやいや、流石に少しは恥ずかしがろうよ。

ちょっとは自分の事を大事にしようよ。


せっかくだから堪能させてもらうけど……


「あなたの元いた世界って、この世界とかなり雰囲気が違うの?」


「まあ、見た目とか文化はかなり違うね。

だけど、愛すべき人の性は変わらないよ」


「一度行ってみたいわ」


「興味あるの?」


「ええ、あなたのルーツだもの」


「じゃあ行ってみようか」


「え!?行けるの?」


スミレは心底びっくりしたような顔をする。

その顔も美しくて絵になる。


「そりゃこっちに来たんだから、逆に行こうと思えば行けるはずだよ。

行く方法を考えないとね」


「あなたって本当に規格外よね」


「何言ってるんだよ。

僕達は悪党だよ。

行きたい所には行きたい時に行かないと」


「そうね。

私達は悪党だものね」


スミレは安心しきった微笑みをみせる。


「でも、とりあえず今はお風呂でまったりしていい?」


「ええ。

あなたの行きたい時でいいわ。

私もまったりさせてもらうわね」


スミレは僕の隣に座り直した。

それもかなりの密着度で。


これだとまったり出来ないよ。

だって感触を楽しむのとこっそり視姦で忙しいからね。

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1つでも構いません。


ブックマークも頂けたら幸いです。


よろしくお願いします。

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