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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
5章 悪党は仇なす者に容赦はしない
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第9話

先に着替えを終えた僕はリリーナを待っている間、星空の映った海を眺めていた。


穏やかな波の音が耳に心地いい。


「ヒカゲ様。

お待たせしております。

リリーナ様はもうすぐいらっしゃいます」


「うん、わかった」


エミリーが僕の背後にやって来た。


別にわざわざ言いに来なくても良かったのに。

まあ、他の用事もあるのだろう。


「ヒカゲ様。

リリーナ様が来る前に一つお話しが」


「なに?」


「私は幼き頃からリリーナ様と一緒に育って来ました。

私にとってリリーナ様は主人である以上に姉妹のようなものです。

主人に対して失礼な事を言っている事は重々承知しております。

しかし、ヒカゲ様がヒナタ様を思うのと同じように私はリリーナ様を大切に思っております。

どうかリリーナ様をお願いします」


エミリーは深く頭を下げる。

僕は振り向きもしないで海を見続ける。


「それは僕にリリーナと結婚しろって事?」


「可能ならば。

しかし、それをヒカゲ様が望んで無い事は重々承知しております。

ですからそこまでは望みません。

でも、リリーナ様に何かあれば助けてください。

何があっても見捨てないでください。

様々な脅威から守ってください」


「それは君がやればいいじゃないか」


「私には出来ません」


「なんで?」


「身分と立場の壁があります」


「関係無いよ。

僕ならそんな事気にしない。

僕なら大切なものを傷付けるものを絶対に許さない。

例え相手の身分がどんなに高くても。

例え世界の全てを敵に回しても」


エミリーは何も答えない。

ただ顔を上げて僕の背中を見つめるだけだ。


「お待たせダーリン」


着替え終わったリリーナが現れる。

そして変な空気を読み取ったのか、僕とエミリーを交互に見る。


「何かあったの?」


「何も無いよ。

あとダーリンって呼ぶな」


「ならいいわ。

帰りましょダーリン」


だんだん話を聞かなくなって来てる気がする。

本当に治す気無いんだなこいつは。


「だからダーリンって――」


「失礼する。

ヒカゲ・アークムはいるか?」


僕の言葉を遮る形で若い騎士が2人現れた。


こんな時間に僕を尋ねるなんて何事だろう?


「僕がヒカゲだけど」


「ヒカゲ・アークム。

強盗の容疑で逮捕する」


「え?」


僕は突然拘束されてしまった。


えーと……強盗ってどれだろう?

おかしいな。

特に証拠を残すヘマはして無いのに。


「待ちなさい!

どう言う事か説明してください!」


連行されそうになった僕をリリーナが呼び止める。


こんな時でも瞬時に猫を被れるとは流石だ。


「説明もなにも、今言った通りです」


「一体いつ彼が強盗をしたと言うのですか?」


「えー……三日前だ」


三日前か〜

おかしいな、何も記憶にないぞ。


「なら彼は無罪です。

彼がコドラ領に入ったのは昨日です。

関所の記録を調べたらわかります」


「なら昨日かな?」


曖昧だな。

そんなんでいいのか?


「彼は今日私と共に西都に来ました」


「じゃあ今日でいいや」


おいおい適当だな。

そんなので納得するやついないだろ?


「ふざけないでください!」


「ふざけてなどいませんよ」


「彼は今日ずっと私と一緒にいました!

わかったなら彼を離しなさい」


「本当にずっと一緒にいました?

方時も離れずに?

どちらにせよ婚約者の証言はアテになりません。

あなたの使用人の証言もです。

まあ、もし朝からずっとヤッてたって言うなら信じてあげてもいいですよ」


「な!?」


騎士が顔を赤くして狼狽えるリリーナをニヤニヤしながらいやらしい目つきで見る。


こいつ相当イカれてる騎士だな。

この国大丈夫か?


「行くぞ」


「待ちなさい。

彼は私の客人です。

勝手に連れて行くなんて許しません」


「リリーナ様。

我々騎士はあなたの権力の管轄外です。

何か問題があるなら正式に上を通してください。

では」


僕はそのまま騎士の乗って来た場所に無理矢理乗せられた。


こいつイカれてるけど、権力に屈しずに仕事をこなす素晴らしい騎士だな。


確かに領主と騎士団は権利が分られているけど、大概ズブズブの関係だからな。


「主、こいつら殺す?」


影の中からソラが僕だけに話しかけて来る。

どうやら起きたようだ。


「おはよう。

とりあえず今はいいかな?

なんか面白くなって来たし。

それより海見た?」


「見た。

綺麗だった」


「また今度みんなで遊びに行こうか」


「うん。

楽しみ」


さて、一体どうなっているのか?

今後の展開が気になるね。



「名前は?」


「ヒカゲ・アークム」


「アークム領からここに来た理由は?」


「観光」


「どこに泊まってる?」


「リリーナの家」


「リリーナ・コドラとの関係は?」


「婚約者。

って何回同じ質問するわけ?」


取り調べ室に連れて来られてから同じ質問をあれこれ5回以上されている。


調書を取る方の騎士もする事無くなってるから居眠りしている。


「そうだな……

なんかお腹空いて無い?」


「お腹は空いてる」


なんたって海で思いっきり泳いだ後だ。


「そうかそうか。

何か取ろう。

君が頼むなら経費で落ちる」


「じゃあカツ丼で」


思いのほかカツ丼が早く到着した。


「騎士団支部の食堂の飯は美味いんだ。

遠慮なく食べてくれ」


確かに美味しい。

こんな食堂があるなんて羨ましい。


「で、名前は?」


「もういいよ、その質問」


「なら……

犯行動機は?」


「僕、未だに何の事件の取り調べ受けてるか知らないんだけど」


「そうだっけ?」


「そうだよ」


「あれだよあれ、暴行事件」


「捕まえる時は強盗って言って無かった?」


「なら強盗で」


なんだよそれ。

適当にも程があるだろ。


「それでなんで強盗した?」


「いやいや強盗なんてしてないよ」


今回はまだ西都に来てからやって無いよ。


「なら暴行は?」


「やって無い」


「なんかしたでしょ?」


「なんかって?」


「なんか捕まるような事」


「してない」


「えー、困ったなー」


困ったなーって困るのは訳も分からず拘束されてる僕の方だよ。

もはや濡れ衣と言っていいのかさえわからない。


「あっ!あれにしよう。

リリーナ嬢を無理矢理襲ったって事で。

君の罪状は婦女暴行に決めた!

で、なんでやったの?」


「やってない」


決めた!ってなんだよ。

適当にも程があるだろ。


「えー、でももうやったんだろ?

その時無理矢理襲ったって事にしたらいいや」


「良くないよ。

それにリリーナとは何も無い」


「ウソだろ!

あんな美少女相手だぜ!

俺なら初日でいっちゃうね」


「それこそ婦女暴行だよ」


「待てよ。

お預けくらいすぎて我慢出来ずに襲ったって事にしたらいけるな!

俺って天才。

君の罪状は婦女暴行未遂に決定だ」


「決定するな」


「でもみんな信じると思うよ」


「そんなバカな事……ありそう」


「そうだろ?」


現に学園では似たような事になっていた。


「それでは牢屋行き決定!」


「いやいやいや。

無茶苦茶だろ」


「無茶苦茶でも牢屋送りに出来る。

それが騎士ってものだ」


おい。

全国の真面目な騎士に謝れ。


「さっさと牢屋に案内してやって」


そう言うと二人の騎士が入って来て僕を乱暴に連れて行く。

そしてそのまま乱暴に牢屋へと押し込んだ。


人権なんてあった物じゃない。


前世でも牢屋には入った事は無かったのに、まさか最初に入るのが身に覚えの無い罪だとは思わなかったな。


僕は薄い布団のベットに寝転んでコンクリートの天井を眺める。


結局婦女暴行未遂って事になったみたいだけど、とにかく僕をここに入れる為ならなんでも良かったみたいだ。


その理由はイマイチわからない。


多分リリーナ関係に巻き込まれているとは思うんだけどな……


牢屋から抜け出すのは簡単だ。

問題は抜け出すのが最善かどうか。


「主、様子見てこようか?」


「うーん……

そうだね」


「ちょっと調べてみる」


「休みなのにごめんね」


「昨日血吸わせてくれたお礼だから」


ソラが僕の影から抜け出して消える。


あとはソラの報告を待つとしよう。


僕はやる事無いのでそのまま眠りについた。

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