表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
5章 悪党は仇なす者に容赦はしない
72/285

第6話

僕はリリーナに後ろ襟掴まれてを、馬車の方へ引き摺られるように連れて行かれている。


凄い力だ。

地面には僕の両足が引き摺られ跡がきっちり残っている。


どうやら初めからリリーナが迎えに来る手筈になっていたそうだ。


酷い話だ。

僕はアンヌとの旅行を楽しみにしていたのに。


「ダーリン。

拗ねてるの?」


「拗ねてるよ。

こんな騙し打ち酷いじゃないか。

あとダーリンと呼ぶな」


「こうでもしないとダーリンは照れて私の家に来てくれないから」


「当然だね。

ただし照れてるわけでは無い。

あとダーリンと呼ぶな」


「ごめんね。

許してねダーリン」


リリーナが猫被ったまま謝る。

普通の男なら許してしまいそうな可愛い仕草。


「嫌だね。

僕は許さないよ。

あとダーリンって呼ぶな」


だけど僕は別だ。

いくら謝られたって許さない。


「アンヌも知ってたんでしょ?」


「ええ、まあ……」


僕のお見送りでついて来たアンヌは困ったように言葉を濁している。


「酷いよ。

僕はアンヌとの旅行を楽しみにしてたのに」


僕は悲しくて泣いてしまいそうだ。


僕のあまりの落胆具合にアンヌは慌てふためいている。


「で、でもね。

ご挨拶は大事だと思うの」


「アンヌにまで騙されるなんて……

僕の心はズタボロだよ」


「ごめんねヒカゲ君。

今度なんでも言う事聞いてあげるから許して」


アンヌが必死に謝る。

その仕草もとても可愛い。

更になんでも言う事を聞いてくれるらしい。


そんな事言われたら可愛いから許しちゃう。


「本当に?

なんでも言う事聞いてくれるの?

なら許しちゃう」


「えーと、あんまりえっちな事は――」


「楽しみだな〜

何をお願いしようかな〜

あんな事やこんな事もいいんだよね〜」


「ヒカゲ君。

聞いてますか?

あんまりえっちな事は――」


「また、僕を騙したの?」


僕はアンヌの罪悪感を掻き立てる為に、これでもかと言うぐらい悲しそうな顔をする。

まるでこの世の全てに絶望したような顔だ。


「……わかりました。

気をつけて行って来てくださいね」


「バイバーイ」


リリーナに馬車に引き摺り込まれて扉が閉まるまで、可愛く手を振るアンヌに手を振りかえす。


どんなお願いしようかな〜

なんでもって事はなんでもいいんだよね。

妄想が広がるな〜


突然僕のお腹に鈍い痛みが走る。


リリーナのボディブローがクリティカルヒットしていた。


「何するんだよ」


「何するんだよ。

じゃ無いわよ。

あんた本当にいい度胸してるわよね」


なんか知らないがリリーナは機嫌が悪い。


めり込んだボディブローが更にめり込ませてくる。


「なんで拉致った君の方が怒ってるのさ?」


「そんなの決まってるでしょ!

なんでアンヌさんにはあんなに聞き分けいいのよ」


「それはアンヌが可愛いからだよ」


「私だって可愛いでしょ?

あなたの為に可愛い服まで選んで来たのよ」


そう言うリリーナは肩出しヘソ出し足出しコーデ。


自分に自信が無いと絶対に出来ないコーディネートだ。


「ほら。

何か言う事は?」


「君は何着ても美人だろ」


「わかってるわよ!

そんな事は!

わかってるし、あなたがそう言ってくれる事は素直に嬉しいわ。

でもそうじゃないのよ。

もっと違う感想が欲しいのよ。

わかる?

……その顔見る限りわかってなさそうね」


リリーナが良くわからない事を喚いた後に深いため息を吐く。


一体僕に何を期待しているのだろうか?


「それで、あなたは夏休み中何をしていたの?」


「家でダラダラしてたよ」


「嘘おっしゃい!

レイン親善大使が来てたでしょ!」


「ああ、そんな事もあったね」


それよりもダラダラゴロゴロしてた日の方が重要だ。


「はぁ……

先週一週間私の家にレイン親善大使が泊まっていたわ」


「そういや、そうだったね」


「それであなたの家にいた時の事も聞いたわ」


「へぇ〜」


「あなた、私に言う事があるでしょ?」


「特に無いよ」


「……」


「……」


少しの間、僕らの間に沈黙が流れる。


「私は凄く優しいの。

だからもう一回だけ聞いてあげる。

あなた、私に言う事があるでしょ?」


「特に無いよ」


「……」


「……痛っ」


リリーナのボディブローが無言でめり込む。


なんで?

意味がわからない。


「なにするんだよ」


「あなた、相当仲良くなったみたいね」


「特に仲良くなったつもりは無いけと」


「へぇ〜そうなの。

仲良くも無いのに頬にキスされるわけ?」


「あー、あれね。

なんで知ってるの?」


「ヒナタちゃんから聞いたのよ」


ヒナタはおしゃべりだからな〜

もう、今度怒っちゃうぞ。


「あれは挨拶みたいな物だよ」


「そうなんだ。

それなら安心ね。

ってなるわけ無いでしょ!」


再びボディブローがめり込む。


今日は多いな。

こんなに殴る必要ある?


「君はいちいち殴らないと喋れないのか?」


「どっち?」


「……なにが?」


僕は質問の意味がわからず、首を傾げる。


「どっちの頬にキスされたのよ」


「えーと……右だったような気がする」


「そう。

ヒカゲ、左を向きなさい」


「こう?」


僕は言われた通り素直に左を向く。

すると右頬にリリーナの柔らかい唇が触れた。


「え?」


「これで上書きよ。

だからレインの事は忘れなさい」


「忘れるも何も覚えてすら無かったよ」


「そうなのね。

今度は右を向きなさい」


僕は言われた通りに右を向く。

すると今度は左頬に柔らかい唇が触れた。


「こっちは私が貰ったからね。

絶対に忘れるんじゃないわよ」


「うーん、自信無いな。

なんたって人間は忘れる生き物だからね。

そして僕は人より忘れっぽい。

どうでもいい事はすぐに忘れる事にしているんだ」


「へぇ〜、乙女が勇気を出してしたキスをどうでもいい事って言うんだ」


冷ややかな目が僕を見つめる。

口元はなんかひくついている。


「私は傷ついたわ。

まさか私のキスをどうでもいい事と言われると思わなかった。

そこまで言うならあなたがしてよ。

頬とか中途半端な所はダメよ。

ここ」


リリーナが人差し指で自分の唇に軽く触れる。


「本気?」


「ええ本気よ。

ん」


リリーナが顔を近づけて瞼を閉じる。

整った顔立ちが一綺麗に見える角度だ。


こいつはこんな事まで練習してるのか?

その努力は賞賛に値するね。


「そんなに意固地にならなくても」


一体なにが彼女をそこまでさせるのか?

不思議で仕方がない。


「いいから早く」


どうしようかな?

リリーナは引くに引けなくなってるだけに違いない。

一時の感情で僕なんかに汚されるなんて勿体ない。

もっと相応しい相手がその内出来るはずだ。


悩んでいると馬車が止まった。


「着いたみたいだよ」


「気にしなくていいから早く」


外からエミリーが馬車の扉が開かれる。


「お疲れ様です。

リリーナ様。

ヒカゲ様。

おや?もしかしてお邪魔でしたか?」


「そんな事無いよ。

久しぶりだねエミリー」


僕はこれ幸いと馬車から降りる。


「コラ!逃げるな!

ああ、もうっ!

もう少しだったのに!」


後ろから悔しそうな声が聞こえてくるけど無視をする。


若気の至りで大事な物なくさなくて良かったね。

後々後悔する事になってたよ。

少しでも面白かったと思ったら下にある☆ ☆ ☆ ☆ ☆から、作品の応援をお願いします。


1つでも構いません。


ブックマークも頂けたら幸いです。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ