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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
5章 悪党は仇なす者に容赦はしない
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第4話

食べ物を貰って来ると言っても、こんな夜中に開いているのは酒場ぐらいなものだ。


その酒場はこんな夜中でも賑わっている。

むしろ大宴会だ。


酔い潰れている人もちらほらいる。

この村は飲兵衛が多いのかな?


何か食べ物が残っていればいいのだけど……


「おぉ少年。

こんな夜更にどうしたんだい?

酒でも飲みに来たなら一緒に飲もう」


僕は後ろからツバキに肩を抱かれた。


僕が気付かずに背後を取られるなんて滅多に無い事だ。

それほどまでに完全に気配が無かった。


「さあさあこっちだよ〜。

お姉さん。

こっちに同じやつ追加で3つちょうだ〜い」


これは……

完全に出来上がっている。


「もしかしてずっと飲んでたの?」


「当たり前さ。

夜は長いんだよ〜」


夜になる前から飲んでた気がするけど、黙っておこう。


僕はツバキに引き摺られるようにしてテーブル席へと連れて行かれる。


「アンヌ〜

少年が一緒に飲むって〜」


ツバキが手を振った一角には、酔い潰れた大量の若い男達。

その真ん中のテーブルでアンヌがコップ片手に手を振り返している。


テーブルの上には色とりどりの瓶や缶が男達よりも多く並んでる。


「あ〜、ヒカゲく〜んでゃ〜」


こっちの方が完全に出来上がっている。

上手く呂律が回っていない。

一体どれほどの量を飲んでいるのだろうか?


「少年よ。

朝まで飲むぞ〜」


「いや、僕は遠慮しときます」


「ヒカゲきゅ〜ん。

おちょなりど〜ぞ」


アンヌが自分が座っている長椅子の横をぺしぺし叩いて僕を呼んでるみたい。

その姿がとても可愛い。


僕は吸い込まれるように座った。


「じゃあ〜。

私はそのと〜なり」


反対側にツバキが座る。

元々二人掛けの椅子に三人座るから密着する。


「両手に花だな〜少年」


「それも極上だね」


「おっ!少年はいい事言うね〜」


ツバキは上機嫌に酒を飲む。

二人とも相当飲んでいるはずなのに、一切酒臭く無い。

それどころかフルーツの甘い匂いがする。


「ヒカゲきゅ〜ん。

ど〜じょ〜」


アンヌが飲みかけのグラスを僕にくれる。

中から柔らかい柑橘系のいい匂いがする。


「ありがとう」


「一気にぐい〜て、にょむのが美味しいん、でゃって〜

みんにゃが、教えてくれちゃの〜」


アンヌが言っているのは、そこら辺で転がってる男達の事だろう。


酔わしてからお持ち帰りしようと下心が透けて見える。


「アンヌ騙されてるよ。

その飲み方は良くないからやめた方がいいよ」


「なんへ〜?」


「みんな悪い人だからだよ」


「しょんにゃ事な〜い。

みんなおごっちぇくじぇるいい人〜」


そして下心満点の男達は返り討ちにあったのか。

哀れだ。


気持ちはわからないでもない。


超絶可愛いくて優しくて非の打ち所がない美少女のアンヌ。

かたやお色気MAXのお姉さんのツバキ。


是非とも一晩一緒にって下心が芽生えるのは必至。


でも二人が潰れる前に自分が潰れて良かったね。


もしアンヌをお持ち帰りしようものなら、僕が……


「ほりゃヒカゲくんもぐい〜」


僕はつられてぐいっと一気飲みする。


確かに美味しい。

すっきりした甘味があって飲みやすい。


「わ〜ヒカゲきゅんしゅご〜い」


「いい飲みっぷりじゃないか〜」


両サイドでここぞとばかりに褒めてくれる。

しかもこの密着。

いろんな所が当たっている。


「はい、おかわりど〜じょ〜」


アンヌが来たばかりのビンを開けて注いでくれる。

それから僕の腕に自分の腕を潜らせてから空いてるグラスを僕に見せる。


「わちゃしにもいじぇて〜」


「もうやめといた方がいいよ」


「い〜や〜りゃ〜。

ヒカゲきゅんちょのみぅの〜」


「そうだね〜

一緒に飲もうね〜」


「やっちゃ〜」


呂律の回らないアンヌは超絶可愛い。

若干何言ってるかわからないけど気にならない。

抱きしめてチューしたい。

お酒ぐらいいくらでも注いであげちゃう。


「おしょろい〜」


「お揃いだね〜」


「かんぴゃ〜い」


「かんぱーい」


「私もカンパ〜イ」


三人でグラスを合わせて一気に飲み干す。

杯を乾かすと書いて乾杯と書く。


ヤバイなこの空間。

なんて至福の時間なんだ。

いくらでも飲んでしまう。

これは男達がペース乱されて潰れるわけだ。


何より二人のボディタッチが激しい。

アンヌなんて普段では絶対見れない乱れっぷりだ。


「じぇもヒカゲきゅん。

おねえちやんは〜ひときょと言いたいきょとがありまちゅ」


グイグイ飲み進めているうちにアンヌが頬を膨らませてなんか言ってる。


なんか怒ってるような雰囲気だけど、可愛い過ぎて全然怖くない。


「どうしたの?」


「えっちにゃのは良くにゃいとおねえちゃんはおみょいます」


「なんだなんだ〜?

少年はえっちなのか〜」


「そょうなにょです。

ヒカゲきゅんはえっちにゃにょでしゅ。

きょうみょ馬車で〜

わたしにょふとみょみょをなでみゃわすんでしゅ。

しゃあごはスカートまでみぇきゅって……」


もはや何を言ってるかわからない。

わからないけど、行きの馬車での事を言ってるっぽい。


「なんだ〜

太ももぐらいで〜

少年、そんなに太ももが好きなら私の触らせてやるよ〜」


ツバキがタイトスカートをちょっとめくる。

白く綺麗な太ももが顕になる。


「本当にいいの?」


「どうぞどうぞ」


「じゃめでしゅ!」


アンヌがガバっと抱きしめて、僕の両手を拘束した。

柔らかい体といい匂いが僕を包む。


「えっちにゃのは……じゃめ……

めっ!なゃの。

しょうにゅうのは……しゅきなひとちょ…だけ」


だんだん言葉が辿々しくなっている。

もう限界が近いみたい。


「じゃあアンヌの事大好きだから触っていい?」


「じゃ〜め」


「少年残念だったな〜

どうやらアンヌに嫌われてるみたいだぞ〜」


「そんなー。

普通にショックなんだけど」


「少年がえっちなのが悪いな〜」


「きりゃってない!

……わちゃしも……ヒカゲきゅんは……しゅきでゃよ〜

……じぇも……わちゃしは…おにぇいちゃんにゃの……

ヒカゲきゅんには……きょんやくしゃが……くぅ〜」


ついに寝てしまった。

可愛い寝息まで立てている。


「一体どれぐらい飲んだの?」


「少年。

いい事を教えてやろう。

酒はね。

どれだけ飲んだか考えないほうが美味い!」


つまり覚えてないって事だな。


僕はアンヌを抱えてそっと立ち上がる。


「僕はアンヌを送って帰りますけど、どうします?」


「言ったじゃないか〜

夜は長〜い」


「おやすみ」


「送り狼になったらダメだよ〜」


僕は腕の中でスヤスヤ眠るアンヌを見る。

ワンピースが乱れまくって、大事な所が見えそうになっている。


「自信ないかも……」


「キャハハハハ!

それは仕方ない!

なんたってアンヌはここにいる男ども全員のターゲットだったからな〜」


「わかってるならこんなに飲まさないでよ」


「な〜に、お持ち帰りなんて私がさせないよ〜」


「いや、今まさに僕がお持ち帰りするんだけど」


「キャハハハハ!」


ツバキはまたご機嫌に笑う。


「少年はいいのさ〜

言っておくけど、アンヌのガードは固かったぞ〜

そこまで泥酔していてもアンヌに触れたのはおろか、隣に座った男は少年だけだ。

とても信頼されてるね〜」


「そう言われると手を出しにくいね」


「だろ?

でも、もしどうしても我慢できない時は避妊だけはしっかりするんだよ〜」


僕は酒場を後にする。


まあ、絶対に我慢するんだけどね。

なんたってアンヌは身内だから。

そんなアンヌを悪党の毒牙にかけて不幸にする訳にはいかない。


「うにゃうにゃ。

ヒカゲきゅんは〜だいしゅきなおちょうと……」


アンヌが寝言を言いながら擦り寄ってくる。


頑張れ僕。

僕の美学は絶対だ。

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