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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
3章 悪党は美術館がお好き
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第25話

ヒナタは危ない事に首を突っ込むのが好きだ。


確かに幼い頃から好奇心旺盛な子供だった。

もしかしたら年相応だったのかもしれない。


僕が前世の記憶のおかげで落ち着いていたから、両親や乳母からしたら余計に目を離せない子だったに違いない。


なにか少しでも興味があると後先考えずに首を突っ込んでいく。


まだ屋敷から出れない頃は良かった。


一人で出歩けるようになると大変だ。

それはもう小さな大冒険を始めてしまう。


初めは僕が山で鍛錬するのにこっそり後をつけて来た事。


両親からは盗賊が大量発生しているからダメだと言われているのに、なんの躊躇もなくついて来ていた。


とんだ不良少女だ。


おかげで僕の山での鍛錬は、本人に気づかれないようにヒナタを狙う盗賊を狩るハードなミッションに変わった。


それでも、あまりにしつこいからあえて一回僕の鍛錬を披露した事があった。


それで気が済んだのだろう。

それ以降ヒナタは剣の鍛錬により一層力を入れる事になって、僕の後をつけなくなった。


きっとあまりの地味さに僕に興味が無くなったんだろう。


その時の剣をまさか再現するとは末恐ろしい子だ。


たった一回遠目で見ただけなのにね。


ヒナタは本当に天才なんだね。


世の中は本当に不公平な物だ。


いくら努力しようと天才には勝てない。


努力さえすれば才能なんて関係無いとか綺麗事を言う輩がいるけど、そんなのは嘘だ。


だって天才と言われる者も必ず努力をしているのだから。


ヒナタもあの笑顔からは想像出来無い程の努力をして来た事を僕は知っている。


今日のこの結果もヒナタの才能と積み上げて来た努力の結果だ。


本当に危なくなったら助けようと思ってたけど、その必要は全く無かった。


これでヒナタは更に強くなった。

そしてもっと強くなっていく。


僕も負けてられない。


いつか僕を超えるぐらい強くなるかもしれない。


それまで僕は見守ってあげられるだろうか?


そんな事は今気にしても仕方ないか。

とりあえず今日は寮まで送ってあげよう。


「あれ?ヒナタ?

こんな所で何してるの?」


「あ!お兄ちゃんだ!

やっほー!」


「全くなんて格好してるんだよ」


「このパジャマ可愛いでしょ。

シンシアとお揃い」


「可愛いけど、そんな格好で出歩いてはいけません。

シンシアもだぞ」


好奇心旺盛なのは結構だけと、年頃の女の子なんだからパジャマなんかで出歩くなよ。


「あはは。

怒られちゃった」


僕の言う事なんで全然気にしてないようで、あっけらかんとヒナタは笑っている。


「説教ウザい」


シンシアの冷たい一言にも僕は動じない。


あれ?動じてないはずなのに、なんだか涙が出そう。


「お兄ちゃん大丈夫だよ。

シンシアは可愛いって言われて照れてるだけだから」


「照れてない!」


「それより見て見て、これ私がやったんだよ」


ヒナタが無邪気にガーゴイルだった石片を指刺して言う。


「これは凄いね。

綺麗に真っ二つだ」


「でしょ!

でも私疲れちゃった。

お兄ちゃんおんぶして」


「はいはい」


僕はヒナタを背負って帰路へとつく。


「お兄ちゃんレッツゴー」


本当に疲れてるのか?って思うほど元気だ。

だけどこれは空元気。


もうヒナタは今すぐ眠りに落ちても不思議ではないほど魔力を消耗している。


きっとみんなに心配かけまいと明るく振る舞っている。


僕は魔力をゆっくり流してあげる。


部屋に着く頃には元通りになってるはずだ。


部屋に帰ったら今日はゆっくりお休み。

そして明日の校外演習楽しんでおいで。



ヒナタを部屋に送り届けてから僕はヒナタ達の寮を後にする。


今日は帰っても寝るだけだから、せっかくの満月を少し堪能して帰るとしよう。


僕は王都で一番高い時計台の上に無断で登る。

屋上で大の字で寝転んで満月の光と星々の光を同時に浴びる。


この美しさは何物にも変え難い。

人々がどれだけ努力しても決して超えることが出来ない唯一無二の美しさだ。


きっとロビンもこの美しさに憧れたに違いない。

だからロビンはこの満月を使った仕掛けを用意したのかもしれない。


この美しさに少しでも近づきたくて。

後世にこの普遍の美しさを伝えたくて。


でもその想いが伝わる事は無かった。

遺跡と共に砕けて散った。


結局、王家の秘宝は遺跡に隠されたまま。


月光を分散するプリズム。

傾いた天秤。

重さの同じ二つの像。


ロビンのミスリードによって見事に騙されたわけだ。


ロビンの意図を汲み取れない者にあの遺跡を復元するのは不可能だ。


一回切りのチャンスを王国は掴み取る事が出来なかった。


もう王国側が秘宝を手に入れる事は出来ない。


何故ならこの僕が頂くからだ。


ロビンコレクションはルナが回収したから、また今度だな。


名残惜しいが帰るとしよう。


僕は立ち上がりセキトバ遺跡の方を見る。


「大丈夫。

君の挑戦は忘れて無いよ。

今回は勝ったと思ったでしょ?

でも残念ながら今回も僕の勝ちだ。

僕には君が用意した仕掛けが解けている。

後は君のミスリードによって壊れたあの遺跡でどう再現するかだけだ。

それすら僕の手にかかれば容易い。

また良く晴れた満月の夜に答え合わせといこう。

それまで良い夢をロビン・アメシス、いや月夜の挑戦者君」

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