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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
3章 悪党は美術館がお好き
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第19話

はぁ〜

めんどくさいな。


ナイトメアになって、サクッとお宝奪って帰ろうと思ってたのにな〜


でも、一回は僕がここにいたって事実が必要なわけでしょ?


改めて考えると本当にめんどくさい。

やっぱりエミリーの胸揉ませて貰おうかな?


なんか一人刺されてるし……


僕は血溜まりの中で串刺しになっているトレインを見下ろす。


どうしようかな?

意識は無く虫の息だけど、生きてるんだよね。


……ま、いっか。

どうせ勝手に治るし。

剣だけ抜いといてあげようと。


僕は刺さっている剣を抜いて、そこら辺に放り投げて先に進む。


やがて、奥から言い争う声が聞こえてくる。


リリーナとルナは元気で何より。


それにしても、つまらない言い争いしてるね。


戦争なんて色んな人の思惑が渦巻いてる物なのにね。


終戦だってそう。

決して理由なんて一つじゃない。

色んな人の思惑がある物だ。


国同士の争いなんてそんな物さ。

それこそが人の愛すべき性じゃないか。


もっと意味のある言い争いしたらいいのに。

例えば明日の天気が晴れなのか雨なのかとかね。


「「「ドーントレス!ホロン王国に新しい夜明けを!!」」」


びっくりした。

僕が覗いた瞬間にみんな大声出すんだもん。


いや〜

凄いね〜

あれだけ大人数がぴったり揃うと圧巻だね。

きっと沢山練習したんだろうな。


言葉の意味はわからないけど。


思惑に老人がロビンコレクションを配置しだした。


月光が各宝石によって一箇所に集まっていく。


完全に計算し尽くされている造形。

素晴らしい技術だ。


「ついに、ついにかつての王国の力が!」


やがて一本の禍々しい剣が現れる。


その奥には一際目立つ巨大なガーゴイルの像。

その四方にも小さなガーゴイルの像。

どれもぱっとしないな。


「なんて素晴らしい。

こんな所にもロビン・アメシスの作品が」


これがロビン・アメシスだって?

あーやだやだ。

これだから芸術をわからない老害は困る。


こんなの偽物としても失礼極まり無い駄作だよ。


老人はゆっくりと剣の前に移動して柄を握る。


剣から魔力が噴き出て老人を包んだ。


するとみるみる老人が若返っていく。


「おお!

力が、力がみなぎってくる!」


元老人が歓喜の声を漏らす。

周りにいる兵士達も、その神秘的な現象に目を奪われている。


今がチャンスだな。


僕は音もなくリリーナとルナの後ろに周りこみ魔力枷を破壊した。


「「!?」」


「シッ」


びっくりして後ろを向いた二人が声を上げないように両手で口を押さえる。


「逃げるよ」


僕が小声で言うと、リリーナは首を縦に振るがルナが横に振る。


言いたい事はわかっている。


僕は視線で脇に置いてある大きな袋を指す。

その袋の中から先に回収したロビンコレクションが顔を覗かせていた。


ルナは安心したように首を縦に振った。


僕は手を放して二人を先に出口へ向かわせたあと、袋を持って後に続く。


もうすぐで二人がホールの出口に到着するという時に、なにをとち狂ったのか元老人が剣を抜いた。


その瞬間、地面が唸るように揺れた。

僕以外の全員が立つ事すらままならず、その場にかがみ込む。


あいつバカなのか?

その剣はこの場にガーゴイルを封印している要だろ。

そんなの魔力の流れでわかるだろ。


ほら巨大なガーゴイルが立ち上がって、天井を突き破ったじゃないか。


ガーゴイルがいた部屋だけでなく、僕達のホールの天井も砕けて崩れ落ちて来た。


おっ?でもこれは丁度いいぞ。


僕は持っていた袋と一緒にリリーナとルナを出口の外に押し出した。

それから大きなの天井の破片を超能力で動かして、出口を完全に塞ぐ。


よし、これでミッションコンプリート。


残りの破片は勿体ないから兵士達の上に落として、全員ぺちゃんこにしとこ。


なんでも有効活用しないとね。

えすでぃーじーんずだっけ?


「ヒカゲ!ヒカゲ!

返事してよ!ヒカゲ!」


なんか知らんけど、塞がった出口の向こうでリリーナが岩を叩きながら叫んでいる。


「そんなに大きな声出さなくても聞こえてるよ」


「無事なのね?」


「無事無事、超無事。

かすり傷一つ付いてないよ」


「よかった。

今助けに行くから待ってて!」


「いやいや、何言ってるの?

早く逃げなよ」


この子バカなの?

戻って来たら意味ないじゃん。


「でもヒカゲが……」


「いいからいいから。

こっちはこっちで勝手に逃げるから」


「ヒッヒッヒッ。

そうかこれも大いなる力の一つなのだな!」


おいおい、こっちにもバカがいるぞ。

そのガーゴイルは――


グシャ!


バカな事言ってた元老人が、ガーゴイルに踏まれて、抜いた魔道具の剣を持った腕だけ残してぺちゃんこになった。


ほら、言わんこっちゃない。

そのガーゴイルはその魔道具を持って行こうとした者を排除する兵器だよ。


見たらわかるじゃん。


「ガァアアアアアアアーーーー!!!!」


ガーゴイルが雄叫びを上げて両手と翼を広げる。


四方を囲っていたガーゴイルが飛び立ち、王都の方へと向かって行った。


「ヒカゲ!何があったの!」


えー、まだいたの?

めんどくさいな〜

さっさと逃げればいいのに。


「なんでもないよ。

それよりさっさと逃げてくれる?」


ガーゴイルの拳が僕目掛けて振り下ろされた。

僕はすっと横に避ける。


僕の真横で拳が地面にめり込んで、その振動でホールの壁が崩れ落ちる。


どうやら、今度は僕がターゲットらしい。


大人しく元の位置に戻っていたら良かったのにね。


もう片手が僕を掴もうと伸びてくる。


『止まれ』


僕の霊力を込めた言葉にも一切反応する事なく迫り来る。


それをヒラリと躱してナイトメアスタイルを身に纏う。


なるほどね。

意思の無い石像だから精神攻撃は効かないのか。


これは新しい発見だ。

つまり、僕の得意武器の一つが封じられたって事だ。


こんなハンデキャップは初めてだ。

僕の自力を確かめるいい機会だ。


僕は両手に持った仮面と帽子を被る。


「さあ始めよう。

過去の遺物よ。

はたしてこの世から排除されるのはどちらか決めようではないか」

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