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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
12章 悪党は過去の悪事からに逃れられない
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第25話

なんかアンヌの事があって有耶無耶な内に終わってしまった。

なんとか月下の宝杖は奪えたけど、今回はアンヌに完全敗北だったね。

一生勝てる気がしないけどね。


でも見ず知らずの悪党にまで優しいなんて逆に心配になるよ。


黒羊のやろう。

なんでアンヌと2人であそこに居たのか後で問い詰め無いと。

理由によったらまた殺してやる。

どうせ殺す事になったら今回も――


「なに考えてるの?」


隣にいるスミレが突然聞いて来た。


「別に何も」


「そう。

なんかとても悪い事考えてた気がしたのだけど」


「悪い事?

僕は常に悪い事を考えてるよ」


「ふーん。

ねえ、前に私が言った事覚えてる?」


「どれの事?」


「ミレイヌに物足りなくなったら私が相手してあげるって言った事」


「覚えてるよ」


そりゃ忘れられないよ。

そんな事超絶美人のスミレに言われた衝撃なんて他に無いよ。

今だってゾクゾクしちゃうよ。


「絶対忘れたらダメだからね」


「なんで今そんな事言うの?」


「何故かしらね?

なんとなく言っておいた方がいい気がしたのよ」


「ふーん……」


なんだろう?

なんか心を読まれた気がする。


「それで、なんで僕をここに呼んだの?」


そう。

月下の宝杖を手に入れて、部屋で1人堪能していた僕はスミレに呼ばれて満月泉に来ている。


「ここに秘密があるらしいの」


「秘密?」


「ええ」


スミレがカルカナ王家に伝わる話をしてくれた。


それを聞きながら僕は泉に浮かぶ月を眺める。

そういや今日は満月だ。


改めて見比べるとやっぱり満月時と言うよりドーナツ泉だ。

あの真ん中の岩が邪魔だよね。

……そう言う事か。


「スミレ行こうか」


「え?

何かわかったの?」


「まあね。

ついておいで」


「待って」


スミレが飛ぼうとした僕を止めた。

なんか凄く考え込んでいる。


そっか。

自分で謎解きしたいんだね。

危ない危ない。

うっかりネタバレする所だったよ。


でも、多分スミレは肝心な事を一つ知らないと思うんだよね。

僕だって偶然知っただけだから。


「スミレ。

実は――」


「お願いだから。

もう少しだけ待って。

ここで置いていかれる訳にはいかないの」


別に置いて行くつもりは無かったからついておいでって言ったんだけどな。


「別にネタバレしようって訳じゃないよ。

ただスミレは知らないと思うから教えてあげようと思って」


「私が知らない事?」


「うん。

この宝杖は光を吸収して増幅した光を拡散する力があるみたいなんだ」


それを聞いたスミレは再び考え込んだ。

そしてすぐに答えに辿りついたみたいだ。


「わかった?」


「ええ」


「じゃあ行こうか」


僕はスミレの手を取って泉の真ん中の岩場まで飛んで行く。


岩場の中心に降り立つ。

砂が詰まって分かりにくいけど、良く見ると穴が空いている。


その詰まった砂を超能力で逃してから宝杖を突き刺したら、ピッタリとフィットした。


「ここが話に出てきた杭の代わりに宝杖を刺した所なのね」


「そうだね。

あとは時間を待とうか」


スミレと横並びに座って綺麗な満月を見つめる。


「そうだ。

スミレにもこれあげるね」


僕は化粧品ギフトをスミレに渡した。

スミレは少し驚いたみたいだけど、嬉しそうな顔を見せる。


「ありがとう。

でも、私をこれ以上綺麗にしてどうするつもり?」


「いや、別にどうもしないけど」


「本当かしら?

あなたは女好きだから」


「僕は綺麗な物が好きなんだよ」


「なら私の事も好きなのよね?」


「もちろん。

スミレは超絶美人だからね」


「そんな私にこれを渡すって事は……」


「だから、別に深い意味は無いって」


「フフフ。

冗談よ。

でもこんなにいい物貰ったのだから、もっと綺麗になるわね。

あなたの為に」


僕の為?

良くわからないけど、気に入ってくれたならいいとしよう。


「夏と言っても夜中は少し冷えるわね」


スミレが僕に聞こえる程度の声でポツリと言った。


「そう?

そんなに気温は低くないと思うけど」


「私は寒く感じるわ」


「服重ね着したら?

魔力ですぐに出来るでしょ?」


月が綺麗過ぎて忘れてるのかな?

うっかり屋さんだね。


「あなたって本当に昔から変わらないわね」


なんか呆れた顔をしたスミレが魔力でタオルケットを生成した。

そして何故か僕の隣にピタッとくっついて一緒に包まれた。


タオルケットと一緒にスミレのいい匂いに包まれた気分だ。


「僕は別に寒く無いよ」


「私は寒いの。

いいでしょ。

この方が温かいの」


そう言って腕に抱きついて更に密着してくる。


「まあ、僕は別にいいけどさ」


そんなに寒いかな?

むしろ暑くない?

もしかして夏風邪?

でも熱は無さそうだしな……


「思えばあなたとこうやってゆっくり月を見るのなんて初めてね」


「そう言われるとそうだね」


「あなたは月を見るの好きだけど、いつも1人で見てるから」


「だって僕と一緒に月見たってしょうがないでしょ?」


「そんな事無いわよ。

私も月を見てるの好きよ。

だって私の好きな人が好きなんだもの」


「好きな人いるの?

いいな〜

スミレみたいな超絶美人に好かれるなんて幸せ者だね」


「そうね。

その幸せを実感して欲しいわ」


「いるよね。

有り難みを理解出来ない悪い奴」


「全くもって悪い人ね」


スミレのお眼鏡にかなうお相手ってどんな奴だろう?

凄く羨ましい。

きっと僕なんかじゃ到底敵わない奴なんだろう。


そんな事を考えていたら月が天辺に近づいて来た。


「そろそろだね」


僕とスミレは上から泉を見下ろせる所まで飛んだ。

間もなく月の光を吸収した宝杖が輝き出す。

その光は岩場は見えなくして、泉の表面埋め尽くしていく。


上から見ると正しく地上に現れた満月だ。

その地上の月がだんだん小さくなっていく。


「水が引いていってるわね」


「そうだね。

何が出てくるか楽しみだ」


水はすっかりなくなって、泉の底に降りる。

大きな岩山となった岩場のにぽっかりと穴が空いている。

覗くと底は見えない程深い。

ここに水が流れて行ったみたいだ。


「どうする?」


「もちろん降りるさ。

だって面白そうじゃないか」


僕とスミレは穴の中に入って行った。

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