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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
3章 悪党は美術館がお好き
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第10話

美術館の壁は無惨にも破壊されていた。

せっかくの美術館が台無しだ。

これだと、一般公開は出来なさそう。


って事は、ロビンコレクションは貰っても問題無いな。


「そこの君達、ここは立ち入り禁止だ」


堂々と捜査現場に入って行ったリリーナが、案の定見張りの騎士に止められる。


「ごめんなさい。

迷ってしまって。

私はルナ王女に会いに来たのだけど、お会い出来ますか?」


一瞬誰かと思う程の猫被り。

こいつ男はなんて単純とか思ってるんだろうな。

まあ、実際騎士はすっかり騙されて鼻の下を伸ばしてる。


「その、ルナ王女は今取り調べ中でして……」


「どうしたんだい見張り君?」


立ち入り禁止場所の奥から男が現れる。

いかにもモテそうな優男の騎士。

見張りとは明らかに違う軍服をまとっている


「お疲れ様です。

トレイン隊長」


見張りの騎士の敬礼に手だけで軽く応えたトレインはリリーナをずっとみている。


「これはこれはリリーナ嬢。

相変わらず美しい。

あなたの様な美女にはこんな事件現場は似合いませんよ」


「相変わらずお上手ね。

私はルナ王女の会いに来ましたの。

取り次いでくださる?」


「リリーナ嬢のお願いとあらば喜んで。

と言いたい所ですが、相手が総長ですからね。

俺の権限ではどうしようもないですね」


「そうなのですね。

なら待っている間に中を見せて頂く事は?」


「それぐらいならお安いご用意ですよ」


「しかし、隊長……」


見張りの騎士が慌てている。

しかし、トレインは全く気にしていない。


「いいから、いいから。

何かあったら俺の責任って事で」


「……わかりました」


肩を叩かれた見張りは渋々頷いて、持ち場を離れた。


でも、結局こういうのって何かあったら彼が怒られるんだろうな。


この世は理不尽だ。

可哀想に。


「では、失礼しますね」


そんな騎士の事は一切気にしないでリリーナが中に入ろうとした時。


「ちょっと待ってくださいリリーナ嬢。

俺もそれなりにリスク背負いますので、何か見返りが無いと」


こいつ、堂々賄賂を要求しやがった。


もちろん賄賂を貰うのは禁止だ。


「見返りと言うと?」


「今夜一緒にディナーでもいかがですか?」


賄賂じゃなくてナンパだった。


こんな腹黒女とディナーでリスク負うとか、こいつもの好きだな。


「あら?ごめんなさい。

私婚約者がいるの」


そう言って僕の袖を掴んで言う。


この女はこの女で、僕をとことん利用する気らしい。


これ以上めんどう事を増やさないで欲しい。


「なるほど、君が噂のアークム男爵家の長男ですか。

初めまして、王国騎士団第三部隊長トレイン・バーストだ。

よろしく頼むよ」


「初めまして、ヒカゲ・アークムです」


握手を求められたので応じて握手をする。


「それでヒカゲ君。

君の婚約者を今晩デートにお連れしてもいいかな?」


どうぞどうぞご自由に。

ディナーだけで無く、そのままお持ち帰りして頂いても――


バチッ!


突然握手した手が弾かれて、お互いに手を引っ込めた。


僕は常日頃から全方位を警戒している。

今も100m以内の物や人や動物は無意識の内に把握している。

だから、僕に奇襲をかけれる奴は殆どいない。


それとは別に不測の事態に備えて、自らに害がある時は自動的に防御するように鍛錬を積んでいる。


その自動防御が今発動した。


こいつ僕にチャームをかけて来やがった。


「噂って当てにならないな。

ただのボンクラでは無いみたいだ」


トレインが右手をヒラヒラさせながらニヤける。


「ごめんね。

リリーナは僕専用なんだ」


リリーナを抱き寄せて言ってやった。


別にリリーナはどうでもいいけど、僕にチャームをかけて来たやつに嫌がらせしたい。


「え?え?えー!?」


なんか知らないけど腕の中で喚いているリリーナは無視をしよう。


「すまない、すまない。

気を悪くしないでくれよ。

これは生まれつきの体質なんだ」


だろうな。

意識的に使ったなら僕が気付くはずだし。


エルザの魔眼もそうだけど、特殊体質ってのは厄介だ。


更に、それを自覚して使いこなしている奴はもっと厄介だ。


「珍しいね。

触れた相手を魅了する能力?」


「魅了ってほどでは無いんだけどね。

少し好感を持ってくれるって程度さ。

おかげでナンパの成功率が鰻上りだ」


「それは羨ましい限りだね」


「だろ?」


まあ、このルックスなら特殊体質が無くてもナンパなんて簡単なんだろうな。


「お詫びに中を見せてあげるよ。

ついておいで」


トレインはそう言って奥へと歩いて行った。


「良かったね。

なんか入れて貰えるらしいよ」


リリーナに声をかけると、なんか顔を真っ赤にして俯いている。


どうしたんだろう?

体調でも悪いのかな?


「あのヒカゲ。

そろそろ離して欲しいな〜なんて思ったり……」


「そうだね。

ごめんね。

嫌だったよね」


そういや抱き寄せたままだったな。

さっき顔が赤かったのは、怒ってたんだな。


僕はすぐに放した。


あぶない、あぶない。

また斬りかかられる所だった。


「べ、別に嫌ってわけでは無いのよ。

むしろちょっと強引なのもいいな〜とも思ったり……

ち、違うわよ!

その、えーと……そ、そうよ!

歩き辛いでしょ!

こんな瓦礫だらけの場所!」


なんかゴニョゴニョ言ってる。

この子って情緒不安定な時あるよな。


まあ、そういうお年頃なんだろう。

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