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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
12章 悪党は過去の悪事からに逃れられない
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第19話

貴族の来賓席にいた貴族達はナイトメアの出現で避難していた。


レインも我に先にと逃げようとしている貴族と、それを必死に誘導している騎士達を後ろから見ながらゆっくりと避難していた。


「私も二度も助けられて無ければ彼らと同じ反応だったでしょうね」


そう独り言を漏らしてから少し間を空けて1番後ろを歩いていた。


突如先頭の方から順番に倒れて行く。

それにより収まりかけていたパニックが再び起こる。


だがそのパニックが大きくなる前にレインの前の者達はみんな倒れた。


レインの鼻を甘い匂いがくすぐる。


「香水?」


そう言った頃には強烈な眠気が襲った。


「ゆっくりお休みなさい。

起きた時には私の傀儡よ」


レインの前からキョウシャがゆっくりと歩いてくる。

これが彼女の能力。

様々な効果を持った香水を自在に作り出す事が出来る。


レインは必死に眠気に抗おうとするが瞼が重い。


「抗う必要は無いわよ。

私に全て委ねるといいわ」


「こんな物で他人を思い通りにしようとは、なんて無粋なのでしょう」


レインの後ろから聞こえた声と魔力の波の音は、彼女が聞き覚えのある物だった。


「また助けてくれるのですね」


その言葉が声になったかどうかはわからない。

だがその安心がレインを眠りへと誘った。


「邪魔しに来たって事はあんたはナイトメア・ルミナス?」


「はい。

お初にお目にかかります。

ナイトメア・ルミナス第二色、謙虚のルリです。

以後お見知りおきする必要はありませんよ。

今宵しか会う事がございませんので」


ルリはいつものようにエンターテイナーの様に仰々しく一礼した。


「あんた達が強いのは聞いてるわ。

でもここはもう私のテリトリー。

この中ならどんな相手も敵じゃないわ」


「なんと浅はかな」


ルリは軽く鼻で笑う。


「強がりを。

もう眠くて仕方ないはずよ」


「ええ、眠いですわね。

あなたのあまりの滑稽さに」


「言ってくれるわね。

でもどうせ時間の問題よ。

私はあんたが寝るのを待つだけ。

そうしたらあんたも私の傀儡」


『黙りなさい』


キョウシャはルリの強い言霊で言葉を発するどころか呼吸すら止まる。


「そんな戯言。

頭によぎっただけでも万死に値します。

私を好きにしていいのはこの世でマスターのみ」


キョウシャの肺にはまるで呼吸の仕方を忘れてしまったかのよう空気が入ってこない。

ルリは苦しみもがくキョウシャを冷ややかな目で見下した。


「あなたがそこまで自分の力に自信があるのならいいでしょう。

私が眠るのが先か、あなたが窒息するのが先か。

勝負と行きましょう。

まあ、これしきの事で私が眠るなんて事はあり得ませんけどね」


キョウシャの目に死への恐怖が浮かぶ。


それをルリはキョウシャが窒息死するまで見届けた。



マイカ御用達のレストランにガイアは訪れていた。


アンヌの足取りを追っている内にここに辿り付いたのだ。


「アンヌ殿の行方を探している。

昨日こちらを訪れた事は間違い無いか?」


「はい。

昨日お見えになりました」


オーナーはガイアの問いに素直に答えた。


「ここに入ってからの足取りがさっぱりなのだ。

ここを退店したのは何時頃だ?」


「さあ……

昨日はお客様が多かったので、アンヌ様がマイカ王女様とお食事を終えた後の事は分かりかねます」


「わかった。

他をあたる。


露骨にマイカの名前が出てくる。

これは暗にこれ以上踏み込むなと言う警告。

いやそれよりも脅しに近い。


こうなるとガイアは引かざる得なかった。


店を出たガイアは思考を巡らせた。


脅すと言う事は、何かやましい事があるのは明白。

なんとかしてそれを暴きたい。

だが、あまり無茶をするとヤマーヌ家が危うくなる。

その板挟みだった。


ガイアは諦めきれずに店の周りをぐるぐる回った。


そこにオオクルとシャノンが合流した。


「ガイアさん。

見つかりましたか?」


「見つかってはいないのだが……」


シャノンの問いに歯切れ悪く答える。


「何かあったんですか?」


「それが――」


ガイアの説明にシャノンは憤りを感じずにはいられなかった。

でもオオクルはキョトンとしていた。


「中に入って探したらよくない?」


「オオクル聞いてた?

それが出来ないんだって」


「聞いてたよ。

王女様が絡んでるから入れて貰えないんだろ?

でも不可抗力なら仕方ないよね?」


オオクルの言葉をガイアは理解出来ない。

でもシャノンはなんとなく言いたい事がわかった。


「なるほどね。

で、具体的には?」


「それはね――」



平和の象徴として建てられた孤児院の塔。

それをヒシャとカクギョウは見上げた。


「姉上。

これがターゲットですよね?」


「そうよカクギョウ。

さっさとやってしまいましょう」


「中にいる子供達はどうする?」


「可哀想だけど仕方ないわね。

お国の為には多少の犠牲は付きものよ」


「そうだね」


「なんでその犠牲に自分達がなる事を考えないのか僕は不思議だよ」


カナリアが2人の前に姿を現した。

既に9本の尻尾が美しく揺れて臨戦体制となっている。


「出たなナイトメア・ルミナス。

姉上。

こんな奴2人で……

え?」


カクギョウが見た時には既にヒシャはソラに血を吸われて干からびていた。


「美味しかった」


「もうソラったら。

なんか能力あるみたいだから楽しみにしてたのに」


「だって早く終わらせて主の血飲むの。

仕事頑張ったらご褒美で主の血飲み放題」


「え!?ボスとそんな約束してるの!?

ズルい!僕もご褒美欲しい!」


「私は先に言ったもんね。

言った物勝ちだもん」


「そんな〜

僕も約束してたら良かった〜

今からでも間に合うかな?」


「むーりー。

そんな時間ないもーん」


「え〜

ちょっと待っててよ〜」


「いーやーだー

私は早く終わらせたいもん」


「そこをなんとかお願いだよ〜」


「お前達!

よくも姉上を!」


「うるさい!」


カナリアが飛ばした狐火でカクギョウは一瞬で燃え尽きた。


「あっ!やっちゃった!」


「やったー!

これで主の血飲み放題!」


「ズルい〜

僕もボスと交渉しに行く!」


「私のご褒美が先だからね」


ご褒美の話が膨らんでいるとはヒカゲは夢にも思っていなかった。


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