第17話
終戦記念式典がもうすぐ始まる。
国民達は期待を胸に王城の前に集まっていた。
その期待に応える為に国王がゆっくりと王城の上を目指す。
国王の周りにはホレイショを始め、多くの騎士とグラハム、ツバキ、ミツルギが張り付いていた。
いざ国王が姿を表すと大きな歓声が上がった。
その歓声に応えるように月下の宝杖天に突き出す。
国王がスピーチを始めようとした時
パーン!
突如上空で大きな破裂音と共に紫色のカードが宙が舞いながら大量に落ちて来た。
素早く国王を屈ませた騎士達が覆い被さるように国王を隠した。
ホレイショ達は臨戦体制に入る。
グラハムは舞い散るカードに書かれた文字を読み取る。
『散々と輝く日光の下。
月下の宝杖は悪夢の中へと消える。
ナイトメア・ルミナス
ギルドマスター ナイトメア』
「来るぞ」
グラハムの一言で緊張が走る。
「なんだ!?」
国王が驚きの声を上げる。
国王の手から宝杖がひとりでに離れて、ゆっくりと真上に上がっていくのだ。
そして少し見上げる程度の高さで宝杖は止まる。
『ひれ伏せ』
その言葉に4人以外の全員が地面に張り付いた。
4人も耐えるのが精一杯。
その隙に黒い影が宝杖を奪って、下の民衆の中に降り立った。
民衆はパニックになり、ナイトメアを中心に蜘蛛の子を散らすように逃げだす。
『止まれ』
その民主の動きが言霊により止まった。
『道を開けろ』
そして真っ二つに民衆が割れて真っ直ぐの一本道が出来上がる。
その道をナイトメアは走り抜ける。
後から降りて来たホレイショ達もその後ろを追いかけて行った。
「国王様。
お怪我はありませんか?」
「私は大丈夫だ。
だが宝杖が……」
忌々しそうにナイトメアの逃げた先を見つめる国王を遥か遠くからライフルスコープ越しに捉える者がいた。
ギンショウである。
彼の胸にも金のバッチが付けられていた。
ギンショウの能力はライフルスコープで狙ったポイントに、如何なる外的力を受ける事無く必ず着弾する能力である。
かなり地味な能力ではあるが、どんな遠距離からでも確実に暗殺出来る能力だ。
そのギンショウが国王の顳顬を捉えた。
そして引鉄に力を入れる瞬間。
「ニャー」
スコープの反対側からヨモギが覗き込んだ。
ギンショウはビックリしてスコープから目を離した。
そこには誰もいなかった。
気を取り直してスコープを覗こうとしたら、手元のライフルが無くなっていた。
「ニャんだこれ?
こんニャにニャがいの見た事ニャいニャ?」
ギンショウの後ろでヨモギがライフルをいじくり回していた。
短い銃しか見た事が無かったヨモギはライフルに興味津々だった。
「貴様何者だ!」
「ニャーはニャイトメア・ルミニャス第四色、寡欲のヨモギ」
「ニャイトメア・ルミニャス?」
「違うニャ。
ニャイトメア・ルミニャ――」
バーン!!
ヨモギがいじくり回していたせいでライフルが暴発した。
そのあまりの音の大きさにヨモギはビックリしてライフルを落とした。
「ニャ!!
ビックリしたニャ!
耳がキーンとするニャ」
ドサッ!
何が倒れる音がしてヨモギはそっちを見た。
そこにはギンショウが倒れていた。
「ニャんで死んでるニャ?
変ニャ奴だニャ」
暴発した弾がギンショウの額を貫いた事をヨモギが知る事は無かった。
◇
ナイトメアが現れた事により、国賓であるアポロはマイカが直々に避難誘導をしていた。
「マイカ王女。
俺は別に避難しなくても構わんぞ」
「そうはいきません。
あなたに万が一の事があれば国際問題です」
「それはこちらも同じ事だ」
やり取りする二人の前方の曲がり角から女性が現れた。
キンショウである。
立ち止まる二人の前にホロン王国の騎士達が出て壁になる。
キンショウは不気味な薄ら笑いを浮かべると、両腕の袖から細かい金の粉がサラサラと落ちる。
彼女が走り出すと能力により金の砂が右腕に纏わりつき、巨大な腕の形となる。
その腕で騎士達を薙ぎ払ってアポロに拳を突き刺した。
アポロは両手で防御を固めて後方に跳ぶ事で衝撃を最小限に抑えるも、後ろの壁に思いっきり叩け付けられた。
そこに追撃しようと走り込んだキンショウが再び巨大腕を振りかぶる。
しかしその動きは止まり、腕は金の砂となって崩れ落ちる。
その胸にある金のバッチは心臓ごとマイカの剣に後方から貫かれていた。
その剣が抜かれると、キンショウの身体も崩れ落ちた。
「アポロ王子、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。
骨は折れていない」
アポロは自分の身体を確かめてから答えた。
「マイカ王女、礼を言う。
おかげで命拾いした」
「いえ、それよりも一応医務室へ」
「そうだな。
おい、お前達大丈夫か?」
やられた騎士達へ声を掛ける。
騎士達も命に別状はなかった。
「アポロ王子。
申し訳ありません」
「構わん。
それよりお前達も医務室に行くぞ」
「私は族の処分があるので先に行っていてください」
マイカはアポロ達を先に行かせてキンショウを見下ろした。
「ギョクショウ様……
どうして?」
「知らない。
私は依頼をこなすだけ」
そう言ってキンショウの首を落としたマイカの姿は、いつの間にかミカンにと変わっていた。
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