第13話
カルカナ王国城に錚々たる面子が集まって来ていた。
まずはカルカナ王国国王。
その傍に王女マイカとカルカナ王国騎士団長ホレイショ。
ホロン王国からは第一王子アポロと騎士総長グラハム。
そこに勇者ツバキと剣聖ミツルギが加わっての会合となった。
「集まって貰ったのは他でも無い。
先日我が国にこんな物が届いた」
口火を切った国王が、ナイトメアの予告状を見せる。
それを見た事で場の空気は緊張感に溢れた。
「ナイトメア。
今や世界的にも有名となったテロ組織の親玉だ。
今回、我が国の国宝である月下の宝杖が狙われた。
我々としてはテロ組織などに屈するつもりは毛頭無い。
ここにいるホレイショを始め、我が国の騎士団の威信に賭けて迎え討つつもりだ。
だが、いかんせん相手の力量がわからない。
どうだグラハム騎士総長殿。
そなたはホレイショ騎士団長との交流も深い。
何度もナイトメアと剣を交えている身として、我が騎士団に勝ち目はあるだろうか?」
グラハムはアポロ王子に発言の許可を伺い、了承を得てから発言をした。
「僭越ながら発言させて頂きます。
はっきり申し上げて不可能だと思われます」
グラハムの言葉に文句を言う者はいない。
当のホレイショもその事を薄々感じていた。
「悪夢の一夜と言われたあの日。
我々はホロン王国騎士団の総力を上げて事に当たりました。
それだけで無くここにもおられる勇者ツバキ殿、若き剣聖エルザ殿、両名の力をお借りしていました。
それでも結局まともに対峙出来たのは私とツバキ殿とエルザ殿。
そして偶々居合わせた魔法剣士学園の生徒3名。
その6人のみ。
それで形だけは跳ね除ける事が出来たとなっておりますが、はっきり言って敗北と同義です」
「なんと!
それ程までの力を持っておるとは……」
「ナイトメアは私達の理解を遥かに超える技を使います。
まず言葉による支配。
奴の言葉には何故か従ってしまう力があります。
それにより並大抵の精神力では戦う事すら出来なくなります。
そして武器を作り出す能力。
奴にとって武器は持ち歩く物では無く、作り出す物。
そのアドバンテージは大きいと言わざるおえない。
更に物に触れずに自在に操る能力があり、それと組み合わせれば最悪無限の手数があると思われます。
でも、そんな能力が小細工に思える程の圧倒的な魔力量と身体能力。
それだけでも私では到底及ばない領域に達してるかと」
グラハムの言葉に誰もが息を呑む。
ホロン王国騎士総長グラハムの腕は世界的にも有名だ。
その彼が言う言葉の重みは計り知れない。
そんな中、国王が再び口火を切った。
「となると、やはり勇者ツバキ殿の剣聖ミツルギ殿にも正式に協力を要請する他ない。
式典に招待しといてなんだが、お願い出来ないだろうか?」
「私は構わないよ。
どうせ彼とは因縁がある。
彼が出てくる以上、私は戦うしか無い」
ツバキは快く了承する。
ミツルギも大きく頷いて了解の意を示した。
「グラハム騎士総長殿もお願い出来ないだろうか?」
「私の一存ではなんとも」
「構わん。
協力してやれ」
アポロが代わりに協力を受け入れた。
「俺の護衛なら他にもいる。
ナイトメアの討伐は我が国にとっても大きな意味を持つ」
「わかりました。
では及ばずながら強力致します」
「助かる。
ホレイショ。
彼らとの連携を密に取るように」
「了解致しました」
「しかし、万が一の為に月下の宝杖は別の物にすり替えるのが得策か……」
「それはいけません」
国王の弱気な発言にそれまで黙っていたマイカがその提案に反対の意を示した。
「平和記念式典は国民にとっても非常に大切な式典です。
ですから国宝である月下の宝杖を持って、国王であるお父様が国民の前に出る事に意味があるのです。
それなのに国民を騙す様な真似は言語両断です。
私達は何一つ間違った事をしてません。
正々堂々迎え討ちましょう。
その為にこうやって皆様が力を貸してくれるのです。
お父様が弱気になってどうするんですか!」
「そうだな。
お前の言う通りだ」
国王は娘の一言で奮い立つ。
それが娘の目的の為だとは知らずに。
◇
会合を終えたマイカは自室へと向かう途中、庭の見えるベンチに腰を下ろして本を読み始めた。
そのマイカと壁一枚を挟んだ所にあるベンチに大臣とその秘書が座った。
「マイカ王女
お待ちしておりました」
「オウショウ。
私の事はギョクショウと呼びなさいと言っているでしょ?
私達は穏健派と革命派で敵対している事になってるのよ。
なんの為にキンショウを連れてる訳?」
「申し訳ありません」
「いいから、報告」
大臣は謝ってから、秘書に話しかける口調に変えて始めた。
「8人中5人は集まっている。
残り3人も今日中にモンドーに入る。
明日の会合の場所を準備して報告しろ」
「かしこまりました」
秘書はメモを取るフリをしてから、逆に大臣に話かける。
「大臣。
最近連絡の取れない構成員が増えて来てます」
「理由はなんだ?」
「それは……」
「ナイトメア・ルミナス」
マイカがポツリを呟いた。
その言葉に大臣と秘書は驚きながらも無反応を貫いた。
そのままマイカは独り言を続ける。
「次々消えていく人々。
その理由も方法もまったく不明。
それを探偵さんは臆する事無く立ち向かう。
最後は完膚なきまでに負かしてしまう。
ミステリー小説の醍醐味よね」
「とにかく詳しい事を調べておけ」
独り言を聞き終えた大臣は秘書に命令した。
秘書は再びメモを取るフリをしてから席を立つ。
マイカも本に栞を挟んでからベンチに本をおいて、大きく伸びをしてから席を立った。
回って来た秘書がそのを手に取ってマイカを呼び止める。
「マイカ王女様。
本をお忘れになっております」
「あら?うっかりしてたわ。
ありがとう」
笑顔で受け取った本には栞は無かった。
それを気にせずマイカは自室へと向かう。
「ふふふふ」
マイカは自室に戻ると1人でに笑い出した。
「おもしろうなって来ましたなぁ。
果たして最後に残っとるのはどちらさんでっしゃろうか?」
マイカは1人楽しそうに部屋の奥を仕切っているカーテンの向こうへと消えて行った。
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