第12話
ミツルギ君は可愛い奴だったね。
あんな奴をおちょくるの大好き。
だって楽しいんだもん。
トレインと似た匂いを感じるよ。
そして今も絶賛お楽しみ中。
さっき僕から財布スった女を虐めてる所。
やっぱり仕返しはしないといけないと思って探し出したんだ。
そしたら、彼女はスリグループの一員だった。
って事で仲間をわざと逃がして1人づつ殺して行ってる。
そして1人殺す事にスリのアジトで拘束してるあの女を一発やっちゃうっていうゲーム。
スリやってる奴ばっかりだから、逃げるのは得意なんだね。
裏路地とかよく知ってるよ。
それでも僕からは逃げられない。
だって空の上から攻めるからね。
流石に上から追いかけられた事無いでしょ?
逃げるの一つにしても性格でるね。
隠れてやり過ごそうとする奴は、わざと見つからないふりして近くを何回も行ったり来たりして、充分恐怖を与えてから殺す。
人混みに紛れて逃げる奴は、あえてしばらく放置して安心させてから、見えないぐら小さな針を投げて殺す。
超楽しい。
それもあと1人。
「次ヤッたら殺してあげるからね。
待っててね」
残り1人はとにかく入り組んだ道をひたすらに逃げるタイプ。
こう言う奴は気配を消して逃げるスピードが落ちた瞬間にナイフをわざと外して恐怖を仰いで、常に全速力で逃し続ける。
もう疲れ切って逃げれない絶望を与えてから殺すのが楽しいんだ。
さあ、逃げて逃げて〜
おや?そろそろ限界かな?
大分足元がおぼつかなくなって来たね。
あと2回ぐらいかな?
「ニャー」
僕がナイフを生成した瞬間、ヨモギが現れてターゲットを瞬殺した。
「やったニャ。
またゲットだニャ」
ヨモギはターゲットからスり取った八角形のバッチを高々にあげて小躍りして喜んでいた。
こいつらも八角形のクチナシの仲間だったんだ。
「それ集めてるの?」
「ニャ!
ビックリしたニャ」
ヨモギは全く僕に気付いて無かったみたいだね。
普通に驚いてた。
まあ、完全に気配消してたからね。
「そうニャ。
お仕事で集めてるニャ。
ニャーは働き者だニャ。
もうこんニャに集めたニャ」
ヨモギが両手いっぱいのバッチを自慢気に見せる。
へぇ〜、こんなにいたんだ。
「ニ゛ャ!!」
ヨモギが急に叫び声をあげた。
どうやら僕の持ってるナイフを見て叫んだらしい。
「どうしたの?」
「これボスの獲物だったニャ?
やっちゃったニャ!
ごめんニャさいニャ!」
「別にいいよ。
仕事だったんでしょ」
「許してニャ!
嫌いにニャらニャいでニャ!」
「いやいや、別にそんなんで嫌いにならないよ」
「本当かニャ?
ニャーは嫌われたくニャいニャ」
相当落ち込んでるみたいだ。
そんなに気にする事なんてなにも無いのに。
「本当に気にしてないよ」
「本当に本当かニャ?
また遊んでくれるかニャ?」
「いいよ。
お仕事が終わったら遊んであげるよ。
そうだ。
これあげるよ」
僕は化粧品セットを一つヨモギにあげた。
「やったニャ!
僕からプレゼント貰ったニャ!」
ヨモギの顔が分かり易いぐらいパーと晴れ上がって、また小躍りを始めた。
その小躍りがピタッと止まる。
「これニャにニャ?」
「化粧品セット」
「美味しいニャ?」
「いや食べ物では無いよ」
「そうニャの?
ニャら大事に飾っとくニャ!」
「いや、飾っとく物でも――」
「ニャーはもっともっと頑張って働くニャ!
早速次の獲物を探しに行くニャ!」
そう言ってヨモギは風の様に去って行った。
まあ、本人がいいならいっか。
さて、僕も最後のお楽しみに行くとしますか。
◇
最後のお楽しみの後で調べたら、あの女もバッチを持ってた。
って事はやっぱりみんな構成員だったのかな?
八角形のクチナシって結構大きな組織なのかもしれないね。
偶々だけどスミレ達のお手伝い出来たからいいとしよう。
「お兄さん。
私といい事しな〜い?」
いかにも娼婦ですって見た目のエロくて綺麗なお姉さんが僕の腕に抱きついて体を擦り寄せて来た。
どうやら飲み屋街に入ったらしい。
「いっぱいサービスしてあげるわよ」
「サービスって?」
「もちろん、お互いに気持ちよ〜くなれる事よ。
お兄さんタイプだから、安くしといてあげるわ」
「いいね。
僕の部屋でいい?
高級ホテルだからベッドフカフカなんだ」
「ええ、もちろん」
てな訳でホテルに連れ込んで、お互いにシャワーを浴びた所で僕は化粧品セットをあげた。
「これあげるよ」
「こんなの貰っちゃっていいの?」
「いいよ。
みんなにあげるつもりだから。
直接渡した方がいいって言われたしね」
「え?」
「いつまでこの茶番続けるの?」
「あら?
やっぱりバレてた?」
お姉さんはイタズラっぽく笑ってから姿を変えた。
「久しぶりだねミカン」
「ん」
相変わらず元の姿に戻ったらこの口調だ。
「でも、いくらなんでもイタズラが過ぎるよ。
もし僕が気付いて無かったら、本当に最後までやっちゃってたよ」
「ん」
「ん、って頷いてるけど意味わかってる?」
「ん」
「……」
「……」
本当にわかってるのかな?
ミカンは可愛いんだけど、イマイチ表情からは分かりにくいんだよな。
「むしろ狙ってた」
ミカンがポツリと呟いた。
マジかよ。
つまり……僕の金貨を狙ってたんだな。
なるほどなるほど。
僕が気付かなかったら法外な値段を要求するつもりだったんだな。
危ない所だった。
「ところで、僕に用事があったんじゃないの?」
「……」
「無いの?」
「……ん」
無いんだ〜
「じゃあどうしてこんなイタズラしたの?」
「……」
「……」
「……だめ?」
「いや、ダメじゃないけど……」
「なら安心」
「いや、まあ……
それは良かった……
のかな?」
「問題無い」
「ならいいけど」
「主、ありがとう」
「なにが?」
「これくれた」
「ああ、化粧品セットね。
いいよ。
どうせ貰い物だし」
「ん」
ミカンの相変わらずの無表情の中に嬉しさを垣間見た気がした。
やっぱり化粧品って女の子に人気なのかな?
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