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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
12章 悪党は過去の悪事からに逃れられない
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第6話

え?ナイトメア?

それって僕の事?


嘘でしょ?

見えてるはず無いんだけど……


「さて、どこにいるんでっしゃろ?

ウフフフフフ。

出て来はらないつもりどすか?

アハハハハハハ!!

かまいまへんで。

ほんなら私にも考えがありますさかい」


なんで見えて無いのに僕がいるって分かるわけ?

こんなの初めて。


純粋に怖いよ。

怖いけどちょっと楽しくなって来た。


「ナイトメアはん。

あんさんを出て来とうするのは簡単どす」


マイカは周りを見渡してから月下の宝杖を見つめる。


何する気だろ?

ワクワクするね。


しかし、このエセ関西弁。

どっかで聞いた事ある様な気がしないでも無いぞ。


「やっぱりこれどすね」


マイカはゆっくりと宝杖に近づいてから手を翳した。

その手に魔力が集約していく。


「あんさんが欲しいのはこれでっしゃろ?

よろしいおますか?

あんさんが出て来はらないのならこれを破壊させて頂きます」


マジかよ。

こいつ本気だぞ。

国宝を破壊しようとする王女って狂ってるだろ。


僕は慌ててその手を掴んで魔力を相殺した。


マイカはクルンとこっちを向く。


「みーつけた!」


怖っ。

ホラー映画よりも断然怖い。


思わずたじろいで手を離したのに、その手を逆に掴まれた。


「お久しゅうございますナイトメアはん。

ずっとずっとずーっとお会いしとうございました」


「お前は誰だ?」


いくら忘れっぽい僕でもこんなにインパクトある奴を忘れる訳無い。

……と思う。


「ふふふふふふふふふふふふふふ……」


マジかよ。

超怖いって。

人間ってここまで不気味に笑える生き物なの?


「酷いどすなぁ〜

私は一瞬たりとも忘れてた事などありやしませんのに。

でもまあしゃあないどすね。

なんせこっちの世界ではお初でございますから」


こっちの世界?

それってもしかしてこいつも……


それならわからないでも無い。

だってこのスタイルは前世から一緒だから。


「一体何の事だ?」


とりあえず惚けてみよう。

下手に喋ったら墓穴掘るかもしれないからね。


「ふふふふふふふふふふふふふふ……」


だからその笑い方怖いって。


「流石ですな〜ナイトメアはん。

全く動じてはおらんどす。

でもあきまへんで。

私には分かるさかい。

あんさんは私のよう知っとるナイトメアはんやで」


「俺は全く心当たりが無いがな」


「私はあなたに返り討ちにおうて、挙句の果てに散々犯されて殺された哀れな羊どす」

「まさか……黒羊ブラックシープ


「ふふふふふ。

やっと思い出してくださいました?

アハハハハハハ!

そうどす。

私は黒羊ブラックシープ

驚いきました?

大層驚きはったやろ。

その表情が見えんのが残念や。

いつ見ても忌々しい仮面どすね。

アハハハハハハ……」


黒羊ブラックシープ

それは前世の僕が出した予告状の獲物をいつもいつも横取りしようとした女強盗の名前。


僕と欲しい物の感性が一緒だったんだね。


表の顔は世界を股にかけるフリーのジャーナリストだった。

そして裏の顔の時はこのエセ関西弁を使って正体をバレないようにしていた。


彼女は表の顔でも裏の顔でも名の知れていた。


欲しい物が被ったら奪い合う。

それは悪党の流儀。


だから僕の軽く相手してあげてたんだ。

なんか感性似てると思うとシンパシー感じちゃうし。


結果はいつも僕の圧勝。

それが気に食わなかったんだろうね。

遂に本気で直接殺しに来たんだ。


そうなったら僕も本気さ。

軽く返り討ちにしてやったよ。


その時すんなり殺すのが勿体無いほどいい女だったから、めちゃくちゃに犯してから殺したんだったかな?


殺られる前に殺る。

これ必然。

まあ、殺る前に犯っちゃったんだけどね。


まさかこっちの世界に転生してたなんてね。


「名前を聞いた時は心が震えましたんやで。

まさかあんさんまでこっちの世界に来てはったなんて。

ふふふふふ。

それに私が考えたナイトメア・ルミナスってキャチフレーズを使ってくれてはるなんて嬉しいわ〜。

嬉し過ぎて体が疼いてしまいますやん」


あのダサいの考えたのお前だったのかよ。

嬉しいとか言ってる割に見開かれた漆黒の様な黒目には感情が乗ってないよ。


「懲りずに俺を殺しに来るつもりか?」


「アハハ。

アハハハハハハ……」


こいつ一々不気味な笑い方しないといけない病気なの?


「私は今はしがない王女どす。

あんさんとやりおうてた時とは立場が違ごうてます。

放っておけば自動的に女王になりますんや。

ここにある物は全て私の物になるんやで。

そんなリスク侵しとうございまへん。

あんさんにもう一回犯されてまいますやん。

かと言うても、せっかくの再会どす。

勝負といきまへんか?」


「勝負だと?」


「そうどす。

私は刺激を欲しております。

前世で感じた全身がゾクゾクする刺激を。

ふふふふふふふふ……」


また笑ってるよ。

なんかキメてるんじゃない?

これが王女ってこの国大丈夫か?


「それで勝負とは?」


「ルールは至ってシンプル。

あんさんが月下の宝杖を盗めるか否か。

どうせ奪うつもりでいはるんやろ?」


マイカは掴んだ手に力を入れる。

そして顔をグッと近づけた。


「あんさんの考えなら手に取る様どす。

どうせ式典の一番盛り上がる時に奪う気でっしゃろ?

さあ、予告状を渡しなはれ。

私が責任持って国中に広めてあげますゆえ。

ふふふふふふふ……」


マイカは手を放したと思ったら、

まるでミュージカルの様に踊りながら語り出した。


「楽しみやわ〜

国宝を狙うナイトメア。

私はそれを迎え打つ精鋭達を揃えましたんやで。

我が国の誇る最強の騎士団長ホレイショ。

ホロン王国の要人護衛の為に同行して来た騎士団総長グラハム。

世界を飛び回る勇者ツバキ。

残念やけど最年長の剣聖ザンキと若き剣聖エルザは呼べんかったわ。

でも人間最強と言われる剣聖ミツルギ。

ホロン王国の悪夢の一夜を超える戦力があんさんの前に立ちはだかるんやで。

果たしてそんな中ナイトメアはんは月下の宝杖を奪う事が出来るんやろうか?」


語り終えたのか、マイカはピタッと止まった。

そして取れるんじゃないかと思うぐらいの勢いで顔だけこっちを見た。


この子がいたらCG無しでホラー映画撮れるよ。


「もちろん逃げまへんやろ?」


「逃げる?

この俺が?」


僕は予告状の書いたカードを投げつける。


ここまでお膳立てされて逃げるなんてありえないよ。


「俺は欲しい物を妥協したりしない、

奪うと決めた以上は必ず奪う」


カードをキャッチしたマイカが予告状を見てまたまた笑いだす。


「ふふふふふふふふふ……

そうでっしゃろ。

それでこそ私の知ってるナイトメアや。

アハハ!

アハハハハハハ!

あなたの敗北が楽しみやわ。

もちろん負けた方には罰ゲームがおます」


「罰ゲーム?」


「ええ。

私はあんさんに奪って欲しい物がありますねん。

あんさんが負けたら私の言う通りそれを奪ってもらいます」


なるほど。

僕の腕をタダで使おうってわけか。

なんて図々しい奴。


「私が負けたら何でも言う事聞いてあげます。

なんならこの世界でも処女も捧げてもよろしいで」


いや、それは別にいらないや。


「好きにしろ。

どうせ俺が奪う事には変わりない」


「決まりや。

ああ、今からゾクゾクして来ましたさかい。

あのナイトメアはんが私の思い通り動くのが待ち遠しくてたまらんわ」


ふと、マイカの開き切っていた瞳孔が元に戻った。


「では、よろしゅうおたのもうします」


突然人が変わったように礼儀正しく腰を曲げる。

これはもう猫をかぶるとかのレベルじゃなく、二重人格を疑うレベルだ。


一体こっちに来て何があったらこうなるんだ?

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