第5話
あの後アンヌをデートに誘ったけど断られてしまった。
なんか来賓としていろいろ会わないといけない人が多くて忙しいらしい。
非常に残念だ。
でも結果的には良かったのかもしれないね。
「君がいるとデートも楽しめないもんね」
僕は路地裏で遠くからホテルを監視していた男の胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「君の目的は何かな?」
「ただホテルを見てただけだ」
「ふーん、そうなんだ。
それで目的は何かな?」
「だから俺は――」
『質問に答えろ』
「ホテルに出入りしている来賓を確認していた」
僕の言霊によってやっと話してくれたよ。
「なんで?」
「この情報を売る為」
「誰に売るの?」
「『八角形のクチナシ』に」
「八角形のクチナシって?」
「それは――」
あれ?
死んじゃったよ。
どうやら余計な事を言ったら死ぬように術をかけられてたみたいだね。
この徹底ぶりから見るに、結構きな臭い事が起きてるんだね。
まあ、平和を喜ばない悪党は一定数いるからね。
仕方ない事だ。
「スミレはなんか知ってる?」
「やっぱり気付いてたのね」
こっそり様子を伺っていたスミレが姿を現した。
「最近良く会うね。
仕事?」
「そうよ。
偶然が重なるわね。
運命を感じるわね」
なんて破壊力のある言葉。
スミレみたいな超絶美人に言われると勘違いしちゃいそうになっちゃうね。
「それで八角形のクチナシって?」
「八角形のクチナシはカルカナ王国の旧体制派の者達が集う組織よ
つまり和平反対派ね。
昔はかなり大きな組織だったけど、今やカルカナ王国は新体制の穏健派が実権を握っているわ。
世論も穏健派に大きく傾いているからかなり構成員も減って小規模な組織となってるわね」
「その八角形のクチナシが来賓を見張って何をしようとしてたのかな?」
「そこまではまだわからない。
でも八角形のクチナシはカルカナ王国の国宝『月下の宝杖』を狙ってるみたいよ」
国宝。
それは凄く気になる響きだ。
なんたって国の宝だからね。
「それ、何処で見れるの?」
「月下の宝杖は国王の証。
王位継承の儀式の時に以外は普段は王城の宝物庫にあるわ。
でも、今度の式典で国王が持って出てくる予定よ」
「わかったよ。
早速宝物庫にお邪魔してくるね」
「あなたならそうすると思ったわ。
手助けはいる?」
「大丈夫だよ。
ちなみにそっちは?」
「大丈夫そうよ。
ちょっと大掛かりだけど。
今回の依頼はさっき話した八角形のクチナシの排除」
「珍しいね」
ナイトメア・ルミナスは今や世界中から悪の組織として扱われている。
そんな組織に国の反対派の者達の排除など頼むだろうか?
逆ならともかく……
「でしょ。
きな臭いわよね。
だから敢えて受けたの。
それに報酬も魅力的だったから」
スミレが魅力的って言う報酬ってなんだろう?
凄く気になる。
きっと凄いお宝に違いない。
今度見せてくれないかな〜
◇
カルカナ王城はセンスの塊だ。
派手な色は使われて無いが超オシャレ。
前世だったら間違い無く世界文化遺産だね。
そしてセキュリティも抜群。
人もいっぱい配置されてるし、魔力によるセキュリティも施されている。
だけど僕には無意味さ。
ナイトメアスタイルに変身した僕はいつも通り気配を完全に消して警備の騎士達を素通り。
魔力セキュリティは軽く無効化して宝物庫の前に到着した。
問題はここからだ。
宝物庫の前には欠伸をしてる暇そうな騎士が二人。
流石にこいつらにバレずに扉を開けるのは難しい。
やっぱりここはおやすみして貰ってる間に入るとするか。
「お二人さん。
たるんでますね」
僕が言霊で寝かす前に女性が現れた。
この世界に着物が無いのが惜しいと思えるぐらい着物が似合いそうな清楚なお姉さんだ。
「マイカ王女様。
申し訳ありません」
騎士が慌てて立って敬礼をした。
「いいですよ。
どうせ誰も来ませんからね。
たるみもしますよね」
「いえ……
そう言う訳では……」
騎士達がバツの悪そうな顔で言葉を濁らせる。
それをマイカはにこやかに流した。
「通してくれてもいいですか?
中に用事がありますの」
「はい、ただいま」
二人の騎士が宝物庫を開けた。
ラッキー。
僕もお邪魔しちゃおうっと。
僕は隙間にすっと入り込んだ。
うわー凄ーい。
流石王城の宝物庫だー。
金銀財宝がいっぱい。
でも僕のお目当ては月下の宝杖。
さーて、どこかなどこかな〜?
あったあった。
流石国宝。
一目で分かる程美しい。
透き通る様な透明なクリスタルで出来ている。
全体的になんとも言えない畝りと凹凸のありながらもスタイリッシュなフォルム。
先には綺麗な満月の様なまん丸な球体。
2メートル越えの圧倒的な存在感。
これは間違い無くロビンコレクションだ。
超カッコいい。
これ欲しい。
奪っちゃおう。
そうと決まれば予告状だね。
いつにしようかな?
やっぱり一番盛り上がる式典の時だな。
みんなの注目が集まってる中で堂々と奪い去る。
まさに大悪党に相応しい。
『予告状
平和を満喫しているかな?
平和とは素晴らしい物だ。
しかしどんなに平和も悪夢に魘される事からは逃れられ無い。
来る記念日。
月下の宝杖を頂きに伺う。
ナイトメア・ルミナス
ギルドマスター ナイトメア』
こんな感じでいいかな?
これを何処に置こうかな〜
「ウフフ。
ウフフフフフ。
アハハハハハハ!!」
ビックリした〜
すっかりマイカの存在忘れてたよ。
てか突然笑い出すとか怖いんだけど。
完全に目が逝っちゃってるけど大丈夫?
「いる!
間違い無くいはるんやろ!
姿は見えはらへんけど私には感じるんや」
なになに?
なんで急にエセ関西弁?
それに何がいるの?
幽霊?
僕、幽霊見た事ないんだ。
いるなら僕も会ってみたいな〜。
「アハハハハハハ!」
マイカは両目は見開かれて瞳孔が開ききってる。
そんな目で虚空を見ながら乾いた笑い声をあげる。
もしかして取り憑かれたのかな?
これからの展開が楽しみだ。
「ここにいるんでっしゃろ?
隠れてても無駄どす。
さあ姿を見せなはれ。
ナイトメア!」
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