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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
12章 悪党は過去の悪事からに逃れられない
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第1話

季節は移り変わり暑さを感じ始めた初夏。


チャップ雑芸団はカルカナ王国の王都モンドーに向かう途中。


あれから数回の公演をへてヒメコは一端の舞踊家となっていた。

いまやリンリンとランランと一緒に躍るまでになっている。


更には僕の作った魔力マリンバの演奏を披露する程まで魔力コントロールが出来る様にまで成長していた。


今も綺麗な音色を奏でている。

僕の上で。


なんで僕の上なのかは謎。

トレーラーの上は風が当たって涼しいけど、くっついていたら流石に暑いと思うんだけど……


流石にリンリンとランランは羨ましいとは言ってこない。

羨ましそうな顔では見ては来てるけど。


「どう?

上手く出来た?」


ヒメコが演奏を終えてから僕を見上げる。


「うん。

もう完璧だね」


公演で披露出来るんだからもはやプロ並み。

音楽素人の僕が言う事なんて何もない。


「もう、これ返さないとダメ?」


「あげるよ」


作ろうと思えばすぐに作れるし。


「ありがとう」


ヒメコはにっこり笑ってから、また音楽を奏で始めた。


ヒメコの笑顔は今でもレアだけど、最近はかなり出現率が上がっている。

良い傾向だ。

僕もチャップと一緒で子供は無邪気に笑っていた方がいいと思う。


「ねえ、モンドーってどんな町?」


演奏を終えたヒメコが僕に質問してくる。

僕も初めて行くのにね。

表向きは。


「モンドーは芸術の町って言われてるんだよ。

だから街並みも凄く芸術的。

でもごちゃごちゃしてなくてシックな感じなんだ。

町を散策するだけで一日時間を潰せちゃう町だよ」


「行った事あるの?」


「無いよ」


実は夜中にこっそりと行った事何回もあるんだけどね。


「なのに詳しいの?」


「聞いた事あるんだ」


「そうなんだ」


言葉とは裏腹にヒメコは不思議そうな顔をしている。


「なんで芸術の町って言われてるか知ってるか?」


チャップが話に割り込んで来た。


もちろんそんなのは知らない。


「なんで?」


ヒメコがチャップに聞き返した。


「それは、あの町のデザインをあの有名なロビン・アメシスの弟子が手がけたからだ。

だから目の肥えた市民たちが芸術に目覚めたと言われている」


産まれてからずっとあの町の景色だなんて、羨ましい限りだ。

そりゃ、目も肥えるだろうな。



モンドーまで後少しの所にある泉で休憩する事になった。


この泉はとても自然に出来たとは思えない程綺麗なドーナツ型の小さな泉で、水も澄んでとても綺麗。

名前はそのまん丸さから満月泉と言うらしい。


真ん中には尖った岩場がある。

そこは絶好の釣りスポットらしい。


なので僕は早速釣りを楽しんでいる。


本当に良く釣れる。

今晩のおかずは新鮮な魚が食べれそうだ。


ふと視界が白くなっていく。

霧だ。

こんな暑い夏におかしいな。


だんだん視界が悪くなっていく。


「おい、新人!

戻って来れそうか?」


泉のほとりからチャップが叫んでいる姿も段々と見えなくなっていく。


僕が立ち上がった時には自分の手すら見えない程霧が濃くなっていた。


「もう見えないから戻れないや。

トレーラーに入って扉とか閉めてた方がいいと思うよ」


「わかった!

危ねぇから視界が良くなるまでじっとしてろよ!」


「OK」


この霧はただの霧じゃない。

魔力を阻害している。


成分も水分じゃないな。

だからと言って魔力でも無い。


一体なんだろう?

非常に面白いじゃないか。


僕は五感を研ぎ澄まさせて、更に気力で強化する。


微かな風の流れで周りの輪郭は分かる。

これでトレーラーの位置は把握出来た。

そして微かに聞こえる馬の足音。

真っ直ぐにこっちに向かって来ている。


馬の上には人が乗ってるみたい。

その人が弓を射った。


真っ直ぐに僕目掛けて矢が飛んで来る。

超能力で逸らして泉に落とした。


超能力は問題無く使える。


魔力で刀を生成してから泉をひとっ飛び、真っ正面から突っ込む。


そっちがその気なら容赦はしない。

魔力は阻害されてるけど、直接魔力を流し込んで小刀ぐらいなら充分生成できるんだよ。


二度目の矢は超能力で反転させて返す。


そいつは剣に持ち替えて矢を弾いた。

そこに僕は飛びかかって切り裂……けなかった。

逆に刀が当たった瞬間砕け散った。


ガラ空きの僕に相手の剣が迫る。


『動くな』


言霊も効果無し。

気力で両腕を強化してガードを固めた。


焼けるような痛みと共に僕の体は弾かれた。

その痛みに怯んでる暇なんて無い。

体を回転させて綺麗に着地する。


パックリ開いた両腕の傷口から血が流れてる。

両腕を振って飛ばした血が馬と人の目に当たるも、一切怯まず真っ直ぐ向かって来てる。


間違い無い。

こいつらは生物では無い。


僕は剣をヒラリと躱しす。

敵は馬を翻しす。


動きは間違い無く騎馬その物。

だけど僕はあの刀の砕け方に覚えがある。

セキトバ遺跡の地下にいたガーゴイルと一緒だ。


つまりこいつは魔坑石で出来た石像なんだ。となると魔力を凝縮した刀じゃないと切れないな。


だけど魔力阻害されてるからそれは難しい。


やってくれるね。

完全に対策されてるよ。


でも僕はそれぐらいじゃ殺されてあげないよ。


僕の首を狙って来た剣を白刃取り。

だけど勢いに逆らわず勢いを借りて剣を捻りながら肘関節にオーバーヘッドキックをぶち込む。


へし折るつもりだったけど、腕か反対に折れるだけだった。

普段から魔力に頼り過ぎてる怠慢の結果だ。


僕は騎馬石像に振り払われだけど、綺麗に着地して追撃に備えた。


だけど相手は全速力で逃げて行った。


霧がだんだん薄くなっていく。

これは戻らないとな。


仕方ない。

今日は引き分けって事にしておこう。

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