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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
11章 悪党はにわか悪党を認めない
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第10話

翌日、僕はヒメコと一緒にグラに案内されながら市場で、昨日貰ったスパイスの調合に必要な材料を教えて貰いながら買い集めていた。


「そんなにお買いになるでやすか?」


「とても気に入ったからね。

いっぱい作っておかないと。

次いつ来れるかわからないし」


スミレにも食べさせてあげよう。

美味しい物食べたら機嫌が良くなるはず。

だってお腹空いてたらイライラするもんね。


「そこまで気に入ってくださるとは嬉しい限りで。

是非他にも広げていただけたらと思いやす」


「任せといてよ」


「ありがとうございやす。

この国は雨季と乾季がありやす。

だから作物を育てるのが難しい。

そんな中乾燥させて保存が効くスパイスはこの国の数少ない名物でございやす」


グラはこの国が好きなんだ。

だからこの国の食材だけを使った飲食店を経営してるんだろう。


そしてそれを広めたいからこうやって僕にスパイスの調合まで教えてくれてるんだ。


この配合に辿り着くのに苦労したはずなのに。

これは大切に使わせて貰おう。


ヒメコは色とりどりのスパイスを珍しそうに見ている。

時折店員さんに味見させてもらっては色んな表情を見せていた。


「ヒメコちゃーん。

疲れたよー」


どこからとも無く現れた……これはランランかな?

背の高さで判断してるから、2人並んで無いとイマイチわからないや。


とにかくそのランラン?がヒメコに抱きついた。


「ランランどうしたの?」


「聞いてよヒメコちゃーん」


どうやらランランで当たりだったみたいだ。


「カトリーヌ商店っていう、ここでは珍しい人間のお店があってね。

せっかくだから見に行ったんだけど、それはもう長蛇の列。

やっと店に入れたと思ったら、店の中もごった返し。

もう疲れちゃった」


それだけ?

なんて平和なエピソード。


「もう凄いんだよ。

商品は飛ぶように売れてるんだよ」


「何が売ってるの?」


「化粧品。

こんなモチ肌のヒメコちゃんには不用だけどね。

悲しいかな。

お姉さんには必需品なんだよ」


ヒメコは言ってる意味がわからないのか首を傾げている。


「そう言う割には何も買って無いんだね」


「私のお眼鏡にかなうのがなかったのだよ新人君」


「いいの無かったの?」


「品はいい物ばっかりだったよ。

なんたって売ってたのは有名高級ブランド『エスラン』の品ばっかりだったからね。

でもその分お値段がね〜」


「そんなに高いの?」


「それはもう。

しかも市場の1.5倍から2倍だったからね。

まあ、輸送コストを考えたら妥当な金額だよ」


そうなんだ。

僕なら一瞬で運べちゃうからボロ儲け出来そう。


「それにね。

最近私はエミリア製薬の化粧品ブランド『エミリア』の物を使ってるのよ。

エミリアって言うのは今年出来たブランドなんだけど、凄くいいんだよ。

しかもお値段がお安い」


「安くて高品質なんて凄いね」


「そうなんよ新人君。

私は買い物上手なんだよ」


「確かに化粧したらランランは別人のように凄く綺麗なお姉さんになるからね」


「いい事言ってくれるね新人君。

……あれ?それって化粧しないと綺麗じゃないって言って無い?」


ランランが僕をジト目で睨む。


遠回しに言ってるよ。

だって普段のリンリンとランランは綺麗なお姉さんって言うより、親しみ易い女友達って感じだし。


「ねえ、私も化粧したらランランみたいな綺麗なお姉さんに変身できる?」


ヒメコが僕をチラチラ見ながらランランに聞いた。


変身って凄い言われようだ。


「なになに?

ヒメコちゃんもお化粧に興味あるの?

お姉さんが教えてあげるね。

ヒメコちゃんは元がいいからきっと美人さんになれるよ」


変身と言われた事にはなんの違和感も無いみたい。

本人が気付いて無いのならそっとしておこう。



スパイスが完成した。

調合を教えてくれるだけで無く、厨房まで貸してくれるなんてグラはいい奴だ。


おかげでめちゃくちゃ美味しいスパイスが完成した。


これでスミレの機嫌もきっと治るさ。


今度ナイトメア・ルミナスの他のみんなにも振る舞ってやろう。


それにしても店の方がなんか騒がしい。


「スペシャル追加お願いします!」


オーダーを聞いて厨房内がザワザワしだした。


そりゃそうだ。

あのスペシャルを追加だって言ってるんだもん。


「おい!

もう4つ目だぞ!」


「底なしの胃袋だろ!」


「これは腕がなるぜ!」


あれを4つだって。

それは凄い。

どんな奴か気になって来た。


僕は店内を覗き込む。

一箇所に人混みが出来ていた。


あそこの中心にいるに違いない。


「追加ニャ!

まだまだいけるニャ!」


客から大きな歓声が上がる。


この声は間違いない。


僕は人混みの隙間から食べてる人が見える位置に移動した。


そこではヨモギが美味しそうに肉に齧り付いていた。


「ニ゛ャ!?」


僕と目が合ってヨモギの動きが止まる。

僕はサムズアップで頑張れよのサインを送ってやった。


それを見たヨモギは再び肉に齧り付いた。

きっと調査でとてもお腹が空いてるんだね。


報告はまた後で聞くとしよう。


しかしヨモギの奴、また油でギトギトになってたな。


仕方ないか。

手掴みで齧り付いてたからね。


そもそもこの店にはナイフとフォークを置いて無かった。

スープ用のスプーンがあったぐらい。

それすらほとんど使われて無い。


店を出て周りの飲食店を見てもそう。

全部手掴みで食べてる。


でも、なんだろうこの違和感。


大した違和感では無いんだけどな〜

なんかちょっとした矛盾があるような気がする。


だけどその矛盾に何か大きな意味があるような気もする。


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