第9話
日が落ちてから僕は1人でもう一回オアシスに来ていた。
やっぱり思いっきり泳ぎたいからね。
それに月光差し込む水中の景色も見てみたかったんだ。
想像以上に良かったね。
夜は夜で違う顔を持っている。
薄暗くまるで飲み込まれてしまいそうな幻想的な空間になっていた。
「ボスみっけたニャ!
お肉獲って来たニャ!」
僕が顔を水面に上げた時にヨモギが声を上げた。
傍には仕留めたバッファローが横たわっていた。
また大きなの狩ってきたな。
僕が水辺まで戻った頃には綺麗にバッファローはヨモギによって綺麗に捌かれていた。
「これはまた凄いの狩って来たね」
「ニャーにかかれば大した事ニャいニャ」
ヨモギのスピードならバッファローは狩られる対象になった事すら知らない内に絶命している事だろう。
もしかしたらまだ死んだ事を理解出来て無いのかもしれないね。
「お肉のお礼に僕が調理してあげるよ」
「本当に!
やったニャ!
ボスの料理は美味しいニャ」
「更に今日は最強の調味料まであるぞ」
「最強!?
それは大変な事ニャ!?
最強のボスが最強って言うニャら、絶対に美味しい奴ニャ!?」
「楽しみにしといてよ」
僕は早速火を起こして肉を焼き始めた。
肉の焼けるいい匂いが立ち込めてくる。
「そう言えばヨモギ。
何かスミレから手紙渡されてるんじゃなかったの?」
「お肉!お肉!お肉!お肉!……」
ヨモギは尻尾を振りながら目を輝かせて僕が焼いてる肉を見つめている。
これはダメだ。
何も聞こえて無い。
まあ、食べてからでいっか。
僕はグラから貰ったスパイスを肉に振りかける。
その匂いで一瞬でお腹がなった。
これはヤバイ。
食べた時もいい匂いだったけど、焼いてる時はもう一ついい匂い。
「これは最強ニャ。
ニャーはもうお腹ぺこぺこニャ。
ボス!まだかニャ?」
「もうちょっと待ってね」
「うぅ〜。
これをお預けは拷問ニャ〜」
ヨモギは涙目で肉をじーと見つめてる。
気持ちは凄ーく分かる。
僕も今すぐなりふり構わず食いたい。
でもせっかくヨモギが獲って来てくれた獲物だ。
一番美味しい状態で食べないと勿体無い。
いい感じに焼けた肉を皿に取ってヨモギに渡す。
「ダメニャ!」
でも、ヨモギに拒否された。
なんで?
「どうしたの?
食べ頃だよ」
「ボスが先ニャ。
ニャーは後ニャ」
「僕は気にしないよ」
「ダメニャ物はダメニャ!!」
めっちゃ怒られた。
どうやらヨモギにとって譲れない物らしい。
なら遠慮無く頂くとしよう。
僕は焼きたての肉を頬張った。
めちゃくちゃ美味い。
昨日も美味かったけど、焼きたては一味も二味も違う。
これは、明日大人買い決定だな。
「はい、どうぞ」
僕はヨモギに脂の乗った大きいお肉をヨモギに渡した。
ヨモギは待ってましたとばかりに齧り付く。
「ニャー!
美味いニャ!
これは最強ニャ!
完敗ニャ!」
一体何に負けたのかわからないけど、お気に召したようだ。
ヨモギの前に肉を置くとみるみる無くなっていく。
見ていて気持ちいいからついつい置いちゃう。
このままなら一頭丸々食べちゃいそうな勢いだ。
これはもはや恐ろしい兵器だ。
結局あれだけ大きかったバッファローを2人で残さず平らげた。
「美味しかったニャ〜」
ヨモギがギトギトになった口の周りを紙で拭き始めた。
すると不思議な事に口の周りが拭けば拭く程黒くなっていく。
「ヨモギ。
やってあげるからおいで」
「やったニャ」
何がやったなのかわからないけど、ヨモギが一瞬で僕の前に移動して顔を前に出す。
僕はハンカチで拭いてあげた後にハンカチを見る。
なんだろうこの黒いの?
……インクみたいだ。
紙に何か書いてあったのが、脂で溶け出したみたいだ。
「ボスは優しいニャ〜」
「その紙何か書いてあったんじゃないの?」
「ニャ?」
ヨモギは紙をじーと見てから考える。
「ニ゛ャー!!」
紙を見ていたヨモギの顔からさっーと血の気が引いて悲鳴をあげた。
「どうしたの?」
「これスミレ様にボスに渡すように言われた手紙ニャ」
それは大変だ。
……ダメだこりゃ。
滲んでしまって全く読めない。
「ボス〜
なんとかニャらニャい?」
「流石の僕でもこれはどうしようも無いよ」
「そんニャ〜。
スミレ様に怒られるニャ〜」
ヨモギが途轍もなくしょんぼりと項垂れる。
なんかとても可哀想になって来た。
「僕が一緒に謝りに行ってあげるよ」
「本当ニャ!?」
「うん。
そうしたら怒られるのも半分だしね」
「ボス優しいニャ!」
こうなったのは僕のせいでもあるからね。
きっと誤ったらきっと許してくれるさ。
それについでに内容も聞けるからね。
「良かったニャ。
スミレ様機嫌悪かったから、一人で行くの怖かったニャ」
「え?
スミレ機嫌悪いの?」
機嫌悪いなら行きたく無いな。
「そうニャ。
昨日の夜から機嫌悪いニャ」
「なんで?」
「わからニャいニャ。
昨日の夜、ボスに会いに行ってからニャ」
「え?僕は会って無いよ」
「そうニャ。
何故か会わすに帰って来たニャ。
それでニャーに手紙渡すように言ったニャ」
なんだろう?
昨日の夜なんかあったのかな?
しつこいナンパにでもあったのだろうか?
なんにせよスミレの嫌がる事した奴は許してはおけない。
「ニャんか、激しいのがニャんとかとか言ってたニャ」
激しい?
激しいってなんだ?
やっぱりナンパなのか?
そりゃ激しいナンパされたら嫌になっちゃうよね。
これは犯人も含めて調べないと。
「ヨモギ。
スミレの昨日の足取りを調査するんだ」
「でも謝りに行かニャいと」
「その前にスミレの機嫌を悪くした原因を排除しないといけない」
「ニャるほど!
そうすれば怒られるのが少なくて済むニャ!
ボス天才ニャ!」
「じゃあ頼んだよ」
「任せるニャ」
そう言ってヨモギは音も無く消えた。
あとは手紙の事を誤魔化しとけばいい。
上手くいけば有耶無耶に出来るかもしれないぞ。
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