第8話
ライオネルの帝の間。
皇帝はいつもの如く首をコクリコクリとしていた。
「皇帝陛下。
謁見の者が来ております」
家臣が入って来て皇帝の首は止まった。
「ん?は?
そうかそうか。
もうご飯の時間か」
「いえ、謁見の時間でございます」
「ほう?
そうかそうか。
今日のメニューはなにかな?」
「いえ、謁見の時間でございます」
「ほへ?
今日は謁見の約束なんてあったかの?」
「昨日ガオーン殿下からお話がありました」
「そうかそうか。
では通してよいぞ」
「了解致しました」
少しして、家臣に案内されたカトリーヌが入って来た。
カトリーヌは皇帝の前に跪く。
「皇帝陛下。
本日はお時間を頂きありがとうございます」
「構わん構わん。
それで今日は何のようかな?」
「はい。
本日は新商品の販売許可のお願いで参りました」
「新商品のぅ」
皇帝は細い目でボーッとカトリーヌを見る。
家臣が入って来てその商品を皇帝の元へ持って来た。
当然家臣が危険が無いか先に試している。
「それは今人気のハンドクリームでございます。
きっと国民の方々も喜んでくださります」
皇帝はハンドクリームをマジマジと見たのち臭いを嗅いでから手に付けた。
「ほう、なるほどなるほど」
皇帝は良くわからないまま頷いた。
「よかろう。
この商品の販売を許可しよう」
「ありがとうございます」
カトリーヌは跪いたまま頭を下げる。
「もう一つの商品も見ていただけないでしょうか?」
家臣が再び入って来て皿の上に置かれたオレンジ色の粒を皇帝に持って行った。
「それはサプリメントでございます。
食べ易くグミ状にしており、腸内環境を整える――」
「許可せんよ」
皇帝はカトリーヌの説明を最後まで聞かずに答えを出した。
その目は眼光鋭くカトリーヌを見ている。
「しかしそれは――」
「ダメな物はダメだ」
「……了解致しました」
皇帝の有無をも言わさぬ眼力にカトリーヌは渋々頷くしか無かった。
皇帝はまたボーッとした顔に戻る。
「これで終わりかの?」
「はい、本日は以上でございます」
カトリーヌは立ち上がり、深く頭を下げてから回れ右をした。
王の間から出るカトリーヌの後ろから皇帝が声をかける。
「そなたの商品は国民にも人気があり、良く売れておる。
だが化粧品以外の許可は出さぬと何度も言っておろう。
これは絶対だ」
カトリーヌは最後にもう一度頭を下げて王の間を後にした。
それを見届けた皇帝はまた首をコクリコクリとしていた。
◇
王の間を出たカトリーヌは眉間に皺を寄せて次の販売戦略を考えていた。
獣人はとにかく良く食べる。
食品のシェアを取れればかなりの収益を見込める。
だが、食品についてはとりつく島も無い。
ただ味だけではダメだったので、今回は健康思考を取り入れた商品を持って来たが話すら聞いて貰えなかった。
「化粧品は二つ返事で了承するのになぜ?」
カトリーヌの中の疑問は消えない。
いくら考えても答えは出ない。
「よお、カトリーヌ。
無事ジジイとは謁見出来たか?」
「ガオーン殿下。
おかげさまで謁見出来ました。
ありがとうございます」
カトリーヌはガオーンに営業スマイルを向ける。
「そうかそれは良かった。
で、許可は降りたか?」
「はい、半分は」
「半分?」
「はい。
今回も食品の方は許可頂けませんでした。
ガオーン殿下。
皇帝陛下が食品の許可は絶対に出さないと仰っておりましたが、その理由はお分かりですか?」
ガオーンは考える素振りを見せる。
それを黙って見守っていたカトリーヌの望む答えは帰って来なかった。
「わからんな」
「そうですか。
殿下が口添え頂いても無理でしょうか?
もちろんそれ相応のお礼は致しますよ」
「うーむ……
あのジジイはああ見えて頑固だからな。
あれは多分死ぬまで治らないぜ」
「死ぬまでですか……」
カトリーヌはまた考え込む。
彼女の目的の為にはどうにか許可を貰わなければならない。
「だが、半分は許可降りたんだろ?」
「ええ、これもガオーン殿下のおかげです」
「俺様に感謝するんだな」
「それはもちろんでございます」
カトリーヌはガオーンに体を擦り寄せるながらガオーンの耳元で囁く。
「お礼の準備は出来ておりますよ」
「なんだ?
今日はお前が相手してくれるのか?」
「フフフ。
私みたいなオバさんで良ければ。
でももっと若い女性スタッフを用意しております。
ガオーン殿下は激しいので、前回よりも多く」
「それは楽しみだな」
「では、ご案内しますね」
カトリーヌは一旦考えるのを辞めて、ガオーンの機嫌を取る為に夜の町に繰り出して行った。
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