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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
11章 悪党はにわか悪党を認めない
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第5話

ライオネルの酒場。

そこでチャップはネズカンと落ち合って酒を飲んでいた。


「しかし、お主がまさかエイテンの息子を連れて来てるとは思わなかった」


「はあ?エイテンの息子?」


チャップは不思議そうにネズカンの方を見た。


「まさか知らなかったのか?」


チャップは少し考える。

そしてやっと理解した。


「まさかエイテンとシラユキの息子って新人の事か!?」


「お主な。

家名を聞いたら分かるだろ」


「家名なんて知るかよ!

そんなの気にした事なんてねぇよ。

オレもオメェも名前なんてとうの昔に捨てたじゃねぇか」


「それとこれとは別だろ」


「まあ、そんな事どうでもいいがな。

新人は新人だ」


ネズカンが呆れたようにため息を吐く中、チャップは笑って誤魔化した。


「そんな事よりオメェは相変わらずフラフラしてるのか?」


「フラフラとは失礼な。

儂だっていろいろ忙しいんだ」


チャップの言葉にネズカンは否定する。

それをチャップは笑い飛ばした。


「なにが忙しいだ。

そう言っていつまでも独り身でいる気か?」


「独り身でいるのは本望じゃない。

だが残念な事に相手がおらん」


「まだソフィアにフラれ続けてるのか?」


「そうじゃよ。

悪かったな」


拗ねたように言うネズカンにチャップは大笑いした。


「どうせまたチンタラ口説いてんだろ。

もうガバっと行ってブチュっと行っちまえ」


「そんな事出来るか!

殺されるわ」


「そんな事言ってる内に本当に死んじまうぞ」


「死なんよ。

儂は千歳まで生きるつもりだ」


「それだと人間辞めなきゃいかんな」


2人はお互いに笑い会う。


ふとネズカンが真剣な顔になって小声で話し出す。


「レオンは本当に食中毒で死んだと思うか?」


チャップも小声になって答えた。


「ありえねぇ。

あいつはオレ達と旅してて何を食っても腹を壊さなかった奴だ。

死因が食中毒なんて一番ありえねぇ」


「やっぱりそう思うか」


「だが、国の公式発表がそうなっている。

それに国民も納得している。

つまりオレ達がどうこう言う事ではねぇな。

……まさかとは思うが、オメェ調べてるのか?」


ネズカンはバツの悪そうに目を逸らす。

それが肯定を物語っていた。


「辞めとけ辞めとけ。

他所の国の事情に踏み込んでる暇なんてオメェにはねぇだろ。

まずは自分の国の情勢を心配してろ」


「そう言うお主こそ、団員使ってコソコソ嗅ぎ回ってるんだろ?」


今度はチャップが黙り込んだ。


結局2人共友人の本当の死因が気になっていたのだ。


「なるほどな。

情報交換の為に飲みに誘ったって事だな」


「まあな。

儂とお主とは情報網が全然違う。

2人の情報やを合わせればなにか分かると思ってな」


「残念ながら期待に添えられる様な事は何も無いぜ。

オメェもだろ?」


「お主でもか」


ネズカンはため息を吐いてから酒を飲んだ。


「ああ、てんでダメだ。

この国の奴らの団結力は強固だ。

国全体で隠そうとしてる物を余所者が調べるのは至難の業だ」


「お主はこの国にも団員がいるだろ?」


「それでもオレは余所者だからな。

そこはしっかり線引きされてる。

もしかしたら本当に食中毒じゃないかと思う程口裏を合わせてやがる」


「やっぱりそうか……」


ネズカンは難しい顔をして考え込んだ。

それを見てチャップは苦笑いを浮かべた。


「もう辞めとけ。

相手は国ぐるみで隠してるんだ。

下手に手を出したら痛い目見るぞ」


「しかしだな……」


「国家と言うものが持つ力は強大だ。

それはオメェが一番分かっているだろ?」


「もちろんそれは分かっておるよ」


ネズカンはそう言いつつ、まだ納得出来ないままグラスを空にする。


「ちょっと待てよ!」


そのグラスに自ら酒を注いでいたら、チャップが突然大きな声を出した。


「どうした?」


「って事はオレ達を助けてくれたお嬢ちゃん達もあいつらの娘って事か!?」


あまりに今更過ぎてネズカンは酒を注いた格好のまま呆然としてしまった。


「おいおいおい!

溢れるぞ!

勿体ねぇじゃねぇか!」


「お主のせいだろ」


ネズカンは慌てて酒瓶を起こす。

ギリギリ溢れないで済んだ。


「ハッハッハッハー!

すまんすまん。

いやー参った参った。

近々あいつらに会いに行かねぇとなんねぇな」


「そうだな。

エイテンも今や公爵だからな。

その祝いにも行ってやれ。

あと、謝っておけよ」


「なにを?」


「エイテンは儂に子供を会わせる気が無かったらしいぞ。

それをお主が会わせてしまったのだから、それを謝っておけよ」


「マジかよ!

オメェそんな事言われてたのか?」


チャップはそれはもう腹を抱えて大笑いをした。


「ハッハッハッハー!

それは傑作だ!

確かにオメェには会わせたくねぇわな!

ハッハッハッハー!」


「いや、笑い過ぎだろ」


ネズカンがそう言ってもチャップはなかなか笑うのを辞め無い。


ネズカンは諦めて笑い終わるのを待った。


「あー笑った笑った。

今度しっかり謝っとくよ」


「それで、お主から見てヒカゲ・アークムの事はどう思う?」


「新人か?

あいつは面白くて可愛い奴だぞ」


「エイテンは彼を非常に危ういと言っていた」


「あー、分からんでもねぇな。

新人はヤバイ奴だ。

ガキを拾ってから毎日の様に魔獣の観客が来てたのに、新人が一緒に旅してから見る影もねぇ。

あのガキが極上の餌を垂れ流してるのにだ。

魔獣達が本能的に恐れてる証拠だ」


「そんなに珍しい事では無いだろ?」


「おいおい。

ウチにはジュニアがいるんだぞ。

それなのに魔獣が寄ってくる程、あのガキの魔力は異常だ。

魔人の中でも飛び抜けている」


「なら、エイテンはあの子は何かのきっかけで世界を滅ぼすとも言っていたが……」


「ハッハッハッハー!

あいつがそんな事言ったのか!?

あいつ、ギャグのセンス上がったな!」


「笑い事じゃないぞ」


真顔で言うネズカンの顔を見てチャップはまた笑い出した。


「いいじゃねぇか。

世界を滅ぼすぐらいならオレだって出来るさ」


「おい、冗談でもそんな事言うんじゃない」


「冗談じゃねぇさ。

現に50年前オメェがいなければオレとレオンは人間を滅ぼしてた。

ザンキは人間の為に剣を振る事は無かった。

30年前のエイテンが破滅の魔道具を作った時だってそうだ。

オメェがいなければオレ達は静観してた。

オメェは誰にも知られて無いが、間違い無く人間を救った英雄だ」


「偶々だよ。

儂がいなくても誰かがやっていたはずだ」


「かもしれねぇが、そうじゃなかったかもしれねぇ。

でも確かなのは今の種族間の平和はまだまだ危ういって事だ。

たかだか50年しか経ってねぇからな」


「怖い事言うなよ」


「ハッハッハッハー!

少なくてもオレはオメェが生きてる内は人間を滅ぼす気はねぇ。

だからオメェは本当に千歳まで生きねぇとな」


「そんなに重たい長生きは体が持たんよ」


チャップは大笑いして酒を飲んだ。

つられてネズカンも大笑いした。

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