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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
11章 悪党はにわか悪党を認めない
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第3話

テントの所もそうだったけど、王城の敷地内も地面は全く舗装されていなかった。


地面の上にそのまま城を置いた感じ。


外は巨大な城が如何にもと言う風格を醸し出しているが中は超質素。


余計な装飾品なんて皆無だ。

本当に必要最低限に抑えている。


中と外とのギャップが非常に面白い。


雰囲気は大きな市役所みたい。


「兄様ー」


小さな男の子がガオーンの元に走って来て足に抱きついた。


「兄様、おかえりなさい」


「レグロス。

いい子にしてたか?」


ガオーンが男の子の頭を撫でる。

男の子はニコニコしながら頷いた。


「うん。

いい子にしてた。

だから兄様遊んでくれる?」


「おお、後で遊んでやる」


男の子の顔がパッと明るくなった。


「レグロス殿下。

また大きくなりましたな」


チャップがそう言うと男の子はお行儀良くお辞儀をした。


「こんにちはチャップおじさん。

お久しぶりです。

ようこそお越しになりました」


「いえいえ、こちらこそ殿下達にお会い出来て光栄ですよ」


チャップは嬉しそうに返事をした。

やっぱりチャップは子供好きなんだろう。

完全に孫を見る目になっている。


「レグロス。

後で迎えに行くから部屋に戻ってな」


「はい、わかりました兄様」


レグロスは聞き分けよく走って行った。


「相変わらず殿下にべったりですな」


「もう両親共にいないからな。

俺様とは歳が離れ過ぎてるからもはや父親みたいなもんだろ。

ここにジジイがいるからな。

じゃあ俺様は失礼するぜ」


質素な階段を登った所にある帝の間の前でガオーンがそう言ってから、鼻歌交じりに元来た道を戻って行った。


懐から袋を出して金貨数えてたから、遊びにでも行くのかな?


チャップはそんな事気にもせずに中に入って行った。


帝の間の中も超質素。


本当に何も無い所に大きな椅子がポツンとあるだけ。

その椅子もちょっといいマッサージチェアーみたいな感じ。


その椅子に年老いたお爺ちゃんが座っているだけ。


そこに座ってるって事は、このお爺ちゃんが国のトップって事になるんだよね。

いかにもそれっぽい王冠してるし。


「皇帝陛下。

お久しぶりです」


チャップが頭を下げる。

流石のチャップも皇帝の前では言葉使いが綺麗だ。


「ん?は?」


首をコクリコクリとしていた皇帝はボーっとした顔でチャップの顔をジーッと見る。


さてはこいつ寝てたな。


「おお、チャップか。

先程の公演は良かったぞ。

冥土の土産になったわ」


「前の公演は1年ほど前です陛下」


「ほえ?

なんだ?もう行ってしまうのか?

もう少しゆっくりしていけば良かろう」


「陛下。

一度離れて、もう一度来た所です」


「忘れ物かな?

おちょこちょいだの。

まあ、せっかくだ。

ゆっくりしていけばよい」


なんか話が噛み合って無いぞ。

このお爺ちゃんボケて無いか?


「ありがとうございます。

では、公演の準備をさせて頂きます」


今ので許可貰った事になるの?

良くわからない。


「なんと、また公演してくれるのか?

楽しみじゃの〜」


「はい。

一週間後を予定しております。

それから、墓の方に行ってもよろしいですか?」


「今日も行ってくれるのか?

構わん構わん。

是非行ってやってくれ。

あの子も喜ぶ」


チャップは頭を下げてから帝の間を後にした。


僕とヒメコも良くわからないままついて出て行く。


「めんこい子達じゃの。

何も無い所じゃが、ゆっくりしていってくれていいからの」


僕とヒメコが部屋を出る時に皇帝がニコニコしながらそう言っていた。



「ちょっと付き合ってくれや。

その後美味いご馳走待ってるからよ」


そう言ってチャップは城の裏庭に出た。

そこには立派な墓が置いてあった。


墓には『レオン皇帝ここに眠る』って書いてある。


「こいつはな。

先代皇帝で、今代皇帝陛下の息子だ。

1年前に食中毒で死んだんだ。

だから急遽、引退した今代皇帝陛下が復帰したんだ」


チャップはそう言いながら持って来た手荷物を解き始めた。


「皇太子はいなかったの?」


ヒメコが不思議そうに尋ねた。


「いるさ。

さっき会ったろ。

ガオーンとレグロスがこいつの息子だ。

だが、結局陛下が復帰する事になった」


「そうなのね。

確かにあれに任せるのは心配だものね」


ヒメコちゃん辛辣〜

はっきりと言っちゃうんだね。


チャップは手荷物の中からは酒が出て来た。

それもアークム産のお酒。

その中でも飛び切り度数の高い酒だ。


聞いた話だと、父が若い時に世界で一番度数の高い酒を飲みたいと言った友人の為にノリで作ったらしい。


その度数は驚異の99%。

その名も『イチコロ』


一切の雑味が無くクリアな味わいが特徴で、手間暇がかかってる分値段が張るが結構人気のお酒だ。


でもストレートやロックで飲んだら、その名の通りイチコロである。


「そしてこいつはチャップ雑芸団の初代メンバーの1人だ」


「でも皇帝だったんでしょ?」


ヒメコの言葉にチャップは笑ってみせた。


「関係ねぇよ。

むしろ今の自由システムが出来たのはこいつの所為だ。

こいつなんて、結局一回も公演に出なかった。

皇帝引退後に初公演決まってたのにくたぱっちまったからな。

良ければ手を合わせてやってくれや」


僕とヒメコは墓石に向かって手を合わせる。


それが終わるのを確認したチャップはイチコロの一升瓶を開けて、ドバドバと墓石にかけた。


度数が高いから一瞬で気化していく。

ちなみに一瞬で火が付くから火気厳禁だ。


「さあ飲め。

エイテンとシラユキからの差し入れだ。

あいつらもまさかお前が一番最初にくたばるとは思って無かったぞ」


ん?

エイテンとシラユキって、父と母の名前だ。

偶々同じ名前なのかな?


「絶対に一番先にくたばるのはヴァンだと思ってたのによ」


「儂は死なんぞ。

千歳まで生きるつもりじゃからな」


僕達の後ろからネズカンが同じイチコロを持って歩いて来た。


「なんでぇ、来てたのかよ」


「もうすぐ命日だからな。

それにもしかしたらお前にも会えるかもと思ってな。

どうだ?久しぶりに飲まんか?」


「おう。

じゃあまた後でな」


チャップはそう言って僕達を連れて王城の中に戻って行った。


その後ろでネズカンもイチコロの一升瓶を開けて墓石にぶっかけていた。


明日王城が燃えていたら、この2人の所為になるな〜。


まあいっか。

それよりご馳走ご馳走。

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