第2話
ガオーンについて行ってから3時間ぐらい走ったら大きなオアシスが見えて来た。
その奥に町が見えて来た。
「あれが首都ライオネル?」
僕の膝の上でヒメコが指を刺して尋ねる。
さっき起きたから移動したのに、結局ヒメコは僕の膝の上に座った。
どうやらヒメコの中で僕は椅子として認識されてるらしい。
それとも下僕かな?
なんにせよ、悪党にはおあつらえ向きのポジションである。
「そうみたいだね」
「お城おっきいね」
「そうだね」
僕は一際目立つほど大きな城を見ながら答えた。
と言うかお城しか見えない。
「ライオネルはね。
お城以外に建造物は無いのよ。
だからあのお城一つで国の機能を全て備えているのよ」
リンリンがトレーラーの中から説明してくれた。
それに負けじとランランが説明をはじめる。
「そうそう。
住人はそのお城の周りに移動住居型のテントを一部の場所を除いて自由に設置して生活していいんだよ」
自由に移動していいって事はご近所トラブル無さそうだね。
盗んだお宝とかの管理大変そうだけど。
そうこうしてるうちに沢山のテントに囲まれた所で停車した。
周りのテントは商店ばかりの所を見ると、そう言うエリアみたいだ。
ここからがライオネルの敷地になるらしい。
全然何の目印も無いけど。
ここより先に進むには許可がいるらしい。
チャップは何やら手荷物を持ってトレーラーから降りてから言った。
「じゃあオレは殿下と一緒に皇帝陛下に許可を貰いに行くが、お前らはどうする?」
言い終わる前に僕とヒメコ以外はバラバラに商店の方へ行っていた。
本当にみんな自由だな。
チャップもいつもの事なのか特に気にする様子も無く僕達の方を見る。
「ガキと新人はどうする?」
「私達も一緒に行く」
え?私達って事は僕も?
僕は面倒だしここで寝ていようかなって思ってたのに。
「なら3人だな。
よし俺様について来い。
今回もとびきりのご馳走用意しといてやるよ」
ガオーンはそう言って歩き出した。
とびきりのご馳走食べれるのか。
なら行くとしますか。
道のど真ん中を風を切る様に歩いているガオーンは商店の人から次々に声をかけられていた。
「殿下!
今日はいい女の子いますぜ!」
「そうか!
後で行くから準備しとけ」
そう言ってらさっきチャップから受け取った金貨を店の人に投げる。
「あとチャップの所の奴は俺様の客だからな。
もし行ったらサービスしてやってくれ」
「任せといてください」
「って事だ。
えーと……そういやお前達新顔だな。
なんて名前だ?」
ガオーンが今更ながら僕達を見て聞いて来た。
「僕はヒカゲ・アークム。
この子はヒメコだよ」
「ヒカゲ・アークム。
今夜でも行ってみたらどうだ?
獣人の女は人間よりも激しくて病み付きになるぜ」
「殿下。
ガキがいる前だ」
「そうだったな。
すまんすまん」
と言いつつ全然悪びれて無い。
そういやせっかく異世界に来たのに人間としかヤれて無い。
言われるまで気付かなかった。
なんて勿体ない。
今夜辺り行ってみようかな?
「ねえ。
激しいって何が激しいの?」
ヒメコがキョトンとした顔で僕に尋ねた。
「また今度教えてあげるね」
まだ流石に早いから誤魔化しておこう。
「殿下!
いい肉入ってますぜ!」
「そうか!
今から城に運んでくれ」
その店の人にも金貨を投げる。
「あと串焼きを人数分くれ」
「あいよ」
ガオーンは串焼きを3本貰って少し固まってから、その3本を僕達に渡した。
「そうかそうか。
おい、もう一本追加だ」
「あいよ」
ガオーンはもう一本貰って口に運ぶ。
「狩り立てほやほやの新鮮な肉だ。
美味いぞ〜
食べてみろ」
僕達も串焼きを口に運ぶ。
確かに新鮮で美味しい。
焼き加減もちょうど良く柔らかくて美味しい。
「殿下!
魚もいいのが入ってますぜ」
「そうか!
それも城に運んでくれ」
更に金貨を投げる。
「丸焼きあるか?」
「へい!」
「じゃあ4つくれ」
「あいよ」
魚の丸焼きも僕達に一本づつくれた。
「こいつはこいつで美味えぞ。
そこの綺麗なオアシスで獲れた魚だ」
僕は一口齧りついて感動した。
全く臭みが無くてあっさりしてる。
なのにしっかり味があって美味しい。
その後も次から次へと来る商人達に言われるがまま金貨を投げて買い物していく。
僕達にもお土産だっていろいろくれた。
これぞ正に豪遊。
もうあれだけあったさっきの賄賂は使い切っていた。
「殿下。
いつもお世話になっております」
綺麗に着飾った女がガオーンに近づいて来た。
この国では珍しい人間だ。
「よお、カトリーヌ。
儲かってるか?」
「ええ、おかげ様で」
そう言ってカトリーヌはガオーンの懐に大金の入った袋を忍ばせた。
「実は新商品がありまして。
販売の許可を陛下にお伺いになりたいのですが」
「おう、任せておけ。
謁見出来るように計らってやる」
「ありがとうございます」
カトリーヌはお礼を言いながらもう一袋忍ばせた。
「販売許可を頂けましたらいつも通り、女性スタッフ一同がサービスいたしますね」
そうガオーンの耳元で囁いてカトリーヌは離れて行った。
なかなか商売上手な女性みたいだね。
「人間が商売してるのか?」
チャップが驚いてガオーンに尋ねた。
「チャップが前来た時にはいなかったな。
丁度チャップ達がこの町を離れてすぐぐらいにシーミュウから来てな。
あまりに熱心だから商売させてみたんだよ。
この国に無かった化粧品を販売してるんだが、飛ぶ様に売れてるぜ」
化粧品か。
どこの世界でも女性は化粧品に目がないね。
ちなみにシーミュウとはアールニマを挟んでホロン王国の反対にある、この世界では珍しい民主主義共和国だ。
周りの殆どが海に囲まれており、貿易が盛んな国。
アールニマとも貿易しようとは、なかなかの商売根性だ。
「へぇー。
時代は変わるな」
「そうさ。
今やカトリーヌ商会の従業員の人間達が街の一角で暮らしてるぜ」
やがて商店は無くなり、住居テントばっかりになった。
もうすぐそこに大きな城が見えている。
「さあ、そろそろだぜ。
逸れないようについてきな」
ガオーンはそう言いながら淡々と歩き進んで行った。
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