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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
11章 悪党はにわか悪党を認めない
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第1話

僕を乗せたトレーラーはホロン王国を南東に抜けてお隣の国アールニマに入って早2日。


ずっと見渡す限りのサバンナが広がっていた。

その大自然が見せる微かな変化と迫力が僕を魅了して離さない。


僕はトレーラーの上で胡座をかきながら見つめていた。

あれこれ2時間は経つと思う。


でも、ずっと同じ体勢でいるのは別の理由がある。


「後輩君ズルいー」


「そうだそうだ。

新人君だけ羨ましい」


トレーラーの天井から顔を覗かせてる二人の女性が悔しそうに僕を見る。


彼女達はリンリンとランラン。

なんかパンダみたいな名前。

歳は両方20歳ぐらい。

背が高い方がリンリンって覚えた。


彼女達が文句を言っているのは、僕の足の上にちょこんと座って寝ているヒメコの事だ。


王都を出てからヒメコに魔力の使い方を教えている。


その時何故かここに座って練習をするのだけど、魔力を無駄使いして疲れて寝てしまう事が良くある。


そして決まってリンリンとランランが羨ましそうに頬を膨らませるのだ。


僕は出来れば代わって欲しいんだけど……


「リンランは干渉し過ぎて避けられてるんじゃないか」


「「2人ひとまとめに呼ぶな!」」


そう言われても助手席で笑っているのは青年はジュニア。

運転してるのがゴーレツ。


チャップ雑芸団は基本このメンバーで世界中を周ってるらしい。

それなのに公演になるとあれだけの人が集まるって言うのは、チャップの人徳の成せる技なんだろう。


「うるせぇぞお前ら。

ガキが起きたらどうするんだ。

寝ねぇと大きくなれねぇだろうが」


チャップの一言でみんな静かになる。


なんだかんだで楽しい旅が続いていた。

それにしてもアールニマに入ってから動物以外に会っていない。


それもそのはず。

ホロン王国の東側の大半と南側全部と接しているL字型に広がるアールニマは、その殆どがサバンナと小さな山脈であり、面積はホロン王国とさほど違いは無いが人口は50分の1ほどしかいない。


町と呼べる物は中心部に一つしか無い。


その町には人口の1割程度しか住んでおらず、残りの国民は遊牧民だ。


そして驚くべき事に人口の99%以上が獣人。


本来獣人とはカナリアが言ってた様な流浪な民が殆どだ。


昔は世界中を自由に移動していたが、人間が国を作り国境を作った事で自由な行き来が難しくなって来た。


その中で一部の獣人達が自分達のの生活スタイルを守る為に作り上げたのがこの国。


だから国の機能を最低限だけ維持できるだけの都市開発しかしてないらしい。


それも四方を果てしない何も無いサバンナに囲まれた都市は、小さいながらも正しく天然の要塞に守られた最強の町だ。


ってチャップが言ってた。


チャップは世界中周ってるだけあって、とても物知りだ。

特に歴史については見て来たかの様に詳しい。


学園でつまらない授業聞いてるよりよっぽどためになる。


人間にしてみたらこの雄大な土地と資源を無駄遣いしてる様にしか見えないのだろうが、獣人にしたら理想の国となってるに違いない。


こんな雄大な土地を思いっきり走り回ったら、とても気持ち良さそうだ。


ほら、あんな風に土埃を上げて走ってみたい。

おや?あの土埃、真っ直ぐこっちに向かって来てるぞ。


土埃の主はトレーラーの真後ろまで来るとトレーラーを跳び越えて前に着地した。


トレーラーは急ブレーキをして止まった。


「おうおうおう、どこのどいつが俺様の国を走ってるかと思ったらチャップ雑芸団かよ」


土埃の主は若い男の獣人。

立派な立髪から見るにライオンっぽいね。


「これはガオーン殿下。

随分大きくなったじゃねぇか」


チャップが窓から顔を出して挨拶をした。


「久しぶりだなチャップ。

久しぶり過ぎて忘れてる物があるんじゃないか?」


「とんでもねぇ。

もちろん用意してるよ」


そう言ってチャップは袋を投げた。

ガオーンがキャッチした袋からジャラって音がした。


中身は金貨がいっぱい入ってるみたい。

所謂賄賂だね。


中身を見たガオーンは満足そうな笑みを浮かべた。


「よし!

俺様が案内してやる。

ついて来い!」


そう言ってまた土埃を上げて走って行った。


「せっかく殿下が案内してくれてるんだ。

遅れるんじゃねぇぞ」


チャップがそう言うとトレーラーは走り出した。


どうやら賄賂はいつもの事みたいだね。

郷に入れば郷に従えって事なんだろう。


それが世界中を旅する彼らの生きる術。

賄賂ぐらいでいちいち何か言ってたらきりが無い。


「まだ景色変わってないのね」


ヒメコが目を覚まして、眠そうに目を擦りながら周りを見渡した。


「そうだね。

何も変わらず周りはサバンナ一色だよ。

それで、そろそろ――」


「目的地まではまだかかりそうなの?」


「案内人が現れたからもう少しじゃないかな?

それで、そろそろ――」


「こんなサバンナの真ん中にある町なんてどんな町なの?」


「僕も行った事無いからわからない。

それで、そろそろ――」


「そうなのね。

私は楽しみだわ」


「僕も楽しみだよ。

それで、そろそろ降りて……

って、また寝ちゃったよ」


そろそろ降りて欲しかったんだけどな〜


リンリンとランランがまた羨ましそうに僕を睨む。


僕はヒメコを起こさない様にそっとため息を吐いた。

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