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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
3章 悪党は美術館がお好き
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第5話

流石巨大な美術館。

一日で周り切るのが大変なほど大きい。

だから館内に飲食店もしっかり併設されている。


しかし貴族相手の商売だから値段が高い。

そしてその中でも最上級のアフタヌーンティーを目の前のご令嬢2人が楽しんでいる。


少し離れた席では侍女2人が同じメニューを堪能している。


エミリーに何処となく似ている侍女はナナリー。

ルナの侍女でエミリーの腹違いの姉になるらしい。


案の定と言うか、ルナとリリーナは遠い親戚で、昔からの友人らしい。


どうりで2人共性格がそっくりなわけだ。

類は友を呼ぶとは良く言った物だ。


「あんたも遠慮無く何か注文しなさい」


リリーナもご機嫌に紅茶を口にする。


「全部僕のお金だよね」


「そうよ。

だから遠慮しなくていいのよ」


「そうよ、せっかくだしヒカゲ君もなにか食べたら?

この美術館は食事も一級品よ」


ルナの口調はすっかり砕けてしまっている。


「ここのアフタヌーンティーは君達の機嫌を直す程美味しいってのはわかったよ」


まあ、高いと言ってもしれている。

昨晩の稼ぎの方が多いぐらいだ。


「僕はちょっと回ってくるから、お二人はゆっくりしといていいよ」


とりあえずアフタヌーンティーを二人が楽しんでる間に僕は堪能して来よう。


「エミリー」


「ナナリー」


立ち上がった僕を侍女2人が肩を抑えて座らせる。


さっきまであっちでお茶してたのにすごいな。

この2人、なかなかの身のこなしだ。

動きに無駄が少ない。


「デート中に彼女を置いて行くとか、おかしんじゃないの?」


「それは同意しますね。

レディの扱いがなっていませんね」


それで結構なんで僕に芸術を堪能する時間をください。

悪党にそんな物を求めるのがおかしいんだ。


「それに私はまだヒカゲ君とお話ししたいわ。

特にあなたの価値について」


「それはダメだって言ってるでしょ」


「あら?お互いの力関係が変わって婚約破棄されるのが怖いのね?」


「そんなんじゃないわよ」


「だって、私に取られそうになって泣いちゃうぐらいだもんね」


「泣いてないわよ!

そういうルナだって、ちょっと攻められたぐらいで昇天してたじゃない」


「昇天なんてしてないわよ!

あれぐらい、動揺すらしないわよ!」


こいつら凄いね。

あれだけの醜態を無かったことにしようとしてる。

大したプライドの持ち主だな。


「なんとも無いならここのお代払ってくれる?」


「「アァ?」」


綺麗にハモった。

二人共実は仲良しだろ。


「リリーナ様。

いいでしょうか?」


ナナリーが発言の許しを乞う。


「僭越ながら申しますと、ヒカゲ様には自分のお立場を自覚して頂いた方がいいと思います」


「でも……」


「ルナ様のような性悪女に騙されないように自衛の必要があると思われます」


「あなた主人の私を前に良く言えたわね」


「侍女として主人の前で嘘を吐く事は出来ませんので」


腹黒、性悪、毒舌、この空間ヤバい女しかいないな。

こうなるとエミリーにも何かヤバい属性が欲しい所だ。


「……わかったわ。

ちゃんと教えるわよ」


意を決したようにリリーナが重い口を開く。


「別に話が長くなるならいいよ。

時間勿体無いし」


そんなに話にくい事なら話す必要も無いしね。

なんて僕は優しんだ。


「そんな事より、続き見に行っていい?」


リリーナが立ち上がって笑顔でこっちを見るが、その笑顔の裏にとてつもない怒りが隠れている気がする。


「人がせっかく話してあげようって言うのに、そんな事言うのね」


「だって、話したくないんだろ?」


「そうよ。

でも、私の話より美術館の方が気になるってのも腹が立つわ」


理不尽な事を言いながら、ずしずしとテーブルの反対から僕の隣まで迫って来る。


「そんなの比べ物にならないね」


「なるほどね。

私の話は聞くにあたいしないと言いたいのね」


「別にそういう意味で言ったわけじゃないよ。

美術館には時間があるんだ。

君の話なんていつでも聞けるでしょ?」


「確かにあなたの言う通ね」


リリーナはそう言うと、僕の腕に抱きついて肩が抜けそうなぐらい引っ張りやがった。


僕は無理矢理立たされた。


「エミリー。

残りは持ち帰り用に包んでもらって。

では、私達は行きましょう。

私の話をいつでも聞けるなら、隣でじっくり解説してあげるわ」


「それはありがたい。

全部解説読むの大変だと思ってたんだ」


「さっきの話はここの閉館後にディナーの時にお話ししましょう」


「それは遠慮しとくよ。

晩御飯は家でゆっくり食べるから」


「はぁ?

私の話ならいつでも聞いてくれるって言ったじゃない」


「言ってない。

曲解が過ぎる」


「うるさいわね。

あなたは私が話したい時に私の話を聞くの」


「そんな横暴な」


リリーナが抱きつく力を更に強める。

僕の腕の内側からギシギシと聞こえてはいけない音が響く。


「痛い痛い。

僕の腕はそっちの方向には曲がらない」


「案外曲がるかもよ。

試してみる?

それとも私とディナー行く?」


「それニ択になってないからな」


「じゃあ試してから私とディナーにする?」


「それ実質選択肢減ってるぞ」


「試すの?試さないの?」


更にリリーナは力を強める。


こいつ正気か?

本気で腕を逆に曲げようとしている。


「試さないよ。

そんな事したら大惨事だろ」


「わかったわ。

腕はそのままでディナーで決まりね」


「え?ちょっと待て。

何かおかしくないか?」


「時間勿体無いんでしょ。

早く行きましょ」


最後の僕の言葉を無視してリリーナは歩き出した。


「私もご一緒しますね。

ナナリー私達の分も包んでもらっておいて」


ルナが追いかけて来て反対の腕に抱きついた。

おいおい、これさっきと同じ状況じゃないか?

こいつら学習能力無いのか?


「ルナ。

どういうつもり?」


「私もこの美術館に詳しいわよ。

なんたって毎シーズンの展示に携わっていますからね」


マジで。

このセンスある展示関わってるの?

性悪は置いといて、このセンスには脱帽だよ。


「それに、まだ第二夫人の件は諦めてませんわ」


「まだ言ってるの!」


「だってあんなに情熱的に求められたの初めてですもの」


「動揺すらしていないって言ってたじゃない!」


「まあまあリリーナ、良く考えてみてください。

公爵令嬢の婚約者に第一王女の第二夫人候補。

こんな殿方にちょっかいを出せる女はそうそういませんわよ。

鉄壁のガードだと思いません」


「でも、これは私の物よ」


「もちろんわかってます。

私はあなたの次でいいわ。

これを先に見つけたのはあなただからね。

どう?この私があなたの二番手になるなんて滅多に無い事よ」


リリーナが少し考える。

上手く競争心を煽られてるな。


「……確かにそれは気分がいいわね。

いいわ認めてあげる。

でも、あくまで候補だからね」


「ええ、分かってます。

婚約者はあなただけよ」


2人共僕の事なのに僕を無視して話を進めている。

でも、ここで口を挟むと時間が勿体無いからスルーしておこう。

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