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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
10章 悪党は才能と努力で成り立っている
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第17話

翌日学園では大きな騒ぎになっていた。


タランゾを始め、十数人の生徒たちが行方不明になったらしい。


漏れなく昨日襲って来た子達はその中に入っている。


この非常自体にこのまま本戦を開催していい物かと職員会議が行われてる。


だから、ヒナタ達選手も僕達観客も待ちぼうけ。


無理矢理連れて来られた僕が一番可哀想。

もう帰らせて欲しい。


騎士団も沢山来ている。


消えた生徒と仲の良かった生徒は順番に事情聴取されてるみたい。


僕は友達なんていないから関係無い。

やっぱり僕帰って良くない?


騎士団が来てるのにトレインは来てないからつまんない。


「やあやあ新人。

なんか元気無いな」


観客席の後ろの方でジュースを飲んでると、チャップが僕の隣に座った。


「勝手に雑芸団に入れないでくれる」


「そう硬い事言うなよ新人。

オレはいつでも大歓迎だぜ」


「嫌だよ。

僕は自由に生きるのが夢なの」


「そうか。

それはいい夢だ。

ならウチに入るといい」


「話聞いてた?」


なんで僕の周りって僕の話聞いてくれない人が多いのだろう?


そっか、僕が人の話聞かないからか。


「聞いてたぞ。

ウチは自由だぞ。

今日だって今度の公演の下見だって言うのに誰も来やしねぇ。

今頃みんな好きに観光してるか寝てるかのどっちかだ」


それはそれで雑芸団としてどうなの?


「公演の時だってそうさ。

別に出演したってしなくたっていい。

なんなら一緒旅する必要も無い。

ウチの団員何人居ると思う?」


「え?6人でしょ?」


「残念。

なんと新人が記念すべき500人目だ」


「は?

そんなにいるの?

どう考えてもそんなにいないよ」


「いるんだなそれが。

世界中のあちこちに」


チャップは胸を張って言い切った。


「みんな好きな時に合流して、好きな時に公演に出て、好きな時にどっかに行く。

だからウチは公演プログラムなんて作らない。

その日、その時集まったメンバーで笑いをとる。

これを自由と言わずなんと言う?」


「みんなの事覚えてるの?」


「もちろんだとも。

オレは団員の顔と名前は絶対に忘れねぇ。

まあ、全員の生死まではわからねぇがな。

それも含めて自由なのさ」


凄いね。

僕なんて全然覚えられないよ。


「そんなのでやっていけるの?」


「それがやっていけてるんだな。

もしやっていけなくなったら、その時がチャップ雑芸団の解散の時だ」


「ちょっと魅力的な気がして来た」


「そうだろ、そうだろ。

ちなみに新人は学園が好きか?」


突然関係無い質問をして来た。

学園がなんか関係あるのかな?


「嫌いだよ」


「ハッハー!

正直なのはいい事だ。

そんな新人に耳寄りの情報だ」


チャップは僕の耳元で本当に耳寄りな事を囁いた。


「なにそれ。

すっごくいいじゃん」


「だろ?

そう言う奴も結構いるぞ」


「どうしよう。

本当に入っちゃおうかな」


「おお、いつでも来い。

なんなら今からでもいいぞ」


「うーん……

でも保留で」


「マジかよ!

保留に格上げされたぜ!

これは新人の入団は近いな」


喜ぶんだ。

なんてポジティブな奴。


「でも、もしかしたら試合自体なくなっちゃうかもよ」


「みてぇだな」


「下見に来たの無駄になっちゃうかもね」


「いいじゃねぇか。

無駄足になったって」


「いいの?」


「人生なんて無駄足の連続だ。

むしろ無駄足の方が圧倒的に多い。

だから無駄な事を楽しむ方がいい。

そうなった方が人生が格段に楽しくなる」


確かにチャップは凄く楽しそうだ。

僕も人生は楽しいに越した事は無いと思うよ。



結局今日の試合は中止になった。

でも、明日改めて試合をするらしい。


学園長がやるって決断したらしいよ。


って事は僕の登校日が増えるじゃん。

僕は無理矢理連れて来られるんだよ。


ほら、案の定連れて来られたよ。

僕はもうウンザリ。

だって僕はする事無いんだよ。


用心の為に騎士団もいっぱいいる。


「こんにちは。

この前は助かったわ」


警備に来ていたレイナと遭遇した。


「なんのなんの。

トレインは反省した」


「まあ、少しはマシになった……のかな?

まだ飲み歩いてはいるみたいだけど」


「まあ、トレインもストレス解消は必要だと思うよ」


「それはそうだけど、わざわざ女の所にいかなくっても……」


僕はトレインには勝算あると思うんだけどな〜

さっさと告っちゃえばいいのに。


ふとレイナの手に持ってるフライヤーが目に入る。


これはもしかして。


「それどうしたの?」


「これ?

それは売店で配ってましたよ。

あの有名なチャップ雑芸団が来週公演するみたいですね」


なんだって。

それはアンヌがデザインした奴じゃないか。

早速貰いに行かないと。


僕はレイナにお礼を言って売店に突撃した。


やったー

まだいっぱいあったー


部屋用と秘密基地用と永久保存用に3枚もらっちゃおうっと。


ふと廊下の奥から学園長とジーク先生の声が聞こえて来た。


「学園長!

やっぱり中止するべきです!」


「何故だね?」


「生徒が消えているんですよ!」


うわー、めっちゃ綺麗だ。

流石アンヌ。

センスがいい。


「生徒達の一年の集大成の場だ。

中止なんて申し訳無い」


「しかし、生徒の安全を考えるなら辞めるべきです!」


「その安全の為に騎士団まで力を貸してくれている」


「100%の安全は保証出来ません」


楽しそうな雰囲気が全面から滲み出てる。

でも、その中に力強さと何が起きるかわからないドキドキ感も感じられる。


凄くぞ。

こんな小さな紙の中にいろんな物が詰め込まれている。


「我が校はこの国の未来を背負ってくれる者を育てる場だ。

そんな我が校の先生が犯罪者如きにビビっている姿を見せてはならない」


「しかし……」


でも、どれも主張が激し過ぎず絶妙なバランスを保っている。


なんて芸術作品だ。

それをタダで配るなんて素晴らしい。


もう2枚ぐらい貰っていこう。


「ジーク先生。

私達先生もしっかり生徒を守りましょう。

そして犯罪者に負けずにこの大会を無事に終われるように尽力しましょう」


これは汚れたら勿体ない。

すぐに額縁に入れて飾らないと。


急いで寮に戻ろう。

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