第15話
ピンク街の雰囲気って独特だよね。
色欲と金欲が渦巻いてるこの雰囲気。
僕は結構好きなんだ。
前世では中学生時代から良く変装して行ってた。
こっちの方が規制が緩いからサービスも凄いんだよね。
さてトレインは何処かな?
あっ、みっけ。
僕はトレインの気配を辿ってキャバクラに入って行く。
トレインの奴、なかなか高級店に入ってるね。
そこでザンキとカザキリと一緒に飲んでいるトレインを見つけた。
楽しく飲んでいると言うよりは真剣に話をしているみたい。
「いらっしゃいませ。
ヒカゲ・アークム様。
今日は誰をご指名ですか?」
実はここは僕の行きつけ。
と言うか、ここら辺の高級店は全部行きつけ。
三学期になって自由な時間が出来てからちょっと遊びに来てみたら、すっかりハマっちゃったんだ。
高級店ばかり行くのは客の個人情報の扱いがしっかりしてるから。
金を落とす客の事はとことん大事にする。
秘密の話をするにはうってつけ。
妻子持ちのお偉い方も御用達だ。
きっと僕の事を成金坊ちゃんだと思っているんだろうけど、おくびにも出さないプロ達だ。
「ごめんね。
ちょっと人を呼びに来ただけなんだ。
あそこの男の人呼んでくれる?」
「ただいま」
ボーイがトレインの元へ行って声をかけた。
トレインが僕の方を見たから手を振ってあげたら凄く嫌な顔をした。
気持ちはわかるよ。
せっかく女の子達と楽しく飲んでたのにね。
「お席を用意しますのでこちらに」
違うボーイが個室に案内してくれた。
なんてサービスがいいんだ。
「せっかく来たから少し遊んで行くよ。
可愛い子付けてくれる?」
「もちろんです。
最近入ったのにも関わらず、凄く人気のある子をお付けいたします」
「それは楽しみだ」
僕は先に個室に入って待つ事にした。
すぐに言ってた女の子が入って来た。
「はじめまして。
ムラサキです」
入って来たのは超絶美人の女の子。
そりゃあ人気になるわけだ……
ってスミレじゃないか。
髪は黒髪にして耳も人間の物に変装してるけど、間違い無くスミレだ。
「なんでこんな所にいるの?」
「あなたが最近通ってるって知ったからどんな感じかなって思って」
どんなに秘匿性が高くても、スミレにかかれば筒抜けだったみたいだ。
流石としか言いようがない。
でも、それなら普通客で来ない?
「それにしても、やっぱり気付いたのね」
「そりゃあ気付くよ。
こんな超絶美人なんてそうそういないよ」
「ありがとう。
なのに他の女の子と飲むのがいいのよね?」
「そう言う訳では無いんだけど……」
「ごめんなさいね。
せっかく遊びに来たのに私で」
「そんな、決して残念なんかじゃないよ」
なんだろう。
何も悪い事してないのに責められてるこの感じ。
なんかタジタジだよ。
浮気したらこんな感じなのかな?
別に浮気してるわけじゃないけど。
「本当かしら?」
「本当だよ」
「別にいいのよ。
あなたが何処でいつ誰と飲んだって。
私にあなたを縛り付ける権利なんて無いのだから。
だけど、あなたがお金を使ってまで入れ込む女がどんな子なのか気になっちゃって。
正直、少し女として自信を無くしちゃったわ」
スミレが凄く寂しそうに言う。
せっかくの美人には似合わない悲しそうな顔になってる。
「何言ってるんだよ。
スミレは超絶美人だよ。
それは世界中のみんなが思わず見惚れてしまうぐらいに」
「あなたも見惚れてしまう?」
「もちろんだよ」
スミレの顔がさっきまでのが嘘みたいに、一瞬で笑顔になった。
本当に見惚れてしまうほどの笑顔だ。
「なら、これからはわざわざお金使わなくてもいつでも私がお酌してあげるわね」
「え?
でもスミレはまだお酒飲める歳じゃないよね?」
「悪党の私にそんなの関係無いでしょ?」
「いや、えーと……」
「不満?」
「いえ、とんでもございません」
「決まりね。
良かったわね。
これからは無駄なお金使わなくて済むわね」
スミレが完璧な仕草でお酒を注いで、完璧な笑顔を僕に向けた。
その笑顔が二度と浮気は許さないと言ってるみたい。
僕は黙って注がれたグラスを空にする。
いや、決して浮気をしてる訳じゃないんだけどね。
「一体こんな所まで現れて何の用だよ。
うわっ!超絶美人!」
トレインが入って来るなり、スミレを見て驚きの声をあげた。
「やあ、トレイン。
単刀直入に言うね。
レイナに頼まれて探しに来たんだ」
「げっ!
わざわざあいつが来れなさそうなここに来たのに」
「残念だったね。
レイナが待ってるよ」
「俺も一応任務なんだけど……」
「こんな所で飲んでるのに?」
「彼らのこれからの処遇を話合ってるんだよ。
一応執行猶予付きだから王国から出す訳にもいかない。
だからと言って、このまま何もしないという訳にもいかないんだよ」
ザンキは有名人だからね。
だから下手な所で話が出来ないのは分かるよ。
「でも、わざわざお姉ちゃんのいる飲み屋で話さなくても良くない?」
トレインの目が泳いだ。
僕はジトーとトレインを見つめる。
「いいだろ!
こっちは睡眠時間以外ずっと監視しないといけないんだ。
ちょっとぐらいお姉ちゃんと飲ませてくれたって」
そう言われると可哀想な気もして来た。
僕なら我慢出来ないね。
「だからさ。
見つからなかったって言っといてくれよ」
もう、トレインったら仕方ないな〜
「わかったよ。
じゃあレイナにお酒飲ませてイタズラしてもいいよね?」
「いいわけないだろ!」
「でも僕一人で我慢出来るかな?
なんたって凄く魅力的な格好してたからね」
「わあったよ!
行くよ!行けばいいんだろ!」
トレインは文句言いながら個室を出て行った。
やっぱりトレインおちょくるの楽しいな〜
でも、ちょっと可哀想だね。
これからレイナにお説教されるんだろうな。
こうなったのも僕のせいでもあるわけだし、何か考えてあげよう。
「酔わせてイタズラって具体的にどんな事するのかしら?」
スミレが少しトーンの低い声で僕のグラスにお酒を注いだ。
「いや、えーと……
なんだろうね?」
「飲んで。
グラスがいっぱいよ」
「え?」
「飲んで。
今夜は私の為にいっぱいボトル空けてくれるでしょ?
もちろん一番高いボトルを」
「はい、もちろんです」
なんだか今日のスミレ怖い。
僕なんか悪い事した?
いや、いつも悪い事してるのだけど……
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