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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
10章 悪党は才能と努力で成り立っている
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第14話

僕はルナに案内されたドアをノックする。


「どうぞお入り下さい」


中からチャップの声が返って来てからドアを開ける。


中には雑芸団の人達が揃っていた。

奥にはお目当ての青髪の幼女が、両脇から二人の女性に抱きつかれた状態でちょこんと座っている


ほら、いるじゃないか。

ハヌルもルナも何を言ってるんだよ。


もしかして二人ともお疲れなのかな?


「先日は助けて頂き――」


「それは僕の妹達だよ。

僕は迎えに行っただけ」


「分かりました。

で、今日は我々にどんなご用件で?」


「あの子に用事があるんだ」


僕が青髪の幼女を指差した。

その瞬間部屋の中の空気が引き締まった。


そしてチャップの様子が急変して、僕は乱暴に胸ぐらを掴まれた。


え?なんで?


「おんどれ!

どう言うつもりだぁ!」


ワオ、クレイジー。

まさかの展開だよ。


なんか面白くなって来た。


「あの時もまさかとは思ったが、あのガキが見えてるとはな。

で、あのガキに何をしようって言うんだぁ?」


「ちょっと聞きたい事があるんだ」


「聞きたい事だぁ?」


「そうそう、でもその前に聞きたい事が増えちゃった。

見えてる見えてないってなに?」


「は?」


チャップは意味がわからそうな間抜けな声を出した。


「ちょっとヒメコちゃん危ないって」


チャップの後方から女の声がしたと思ったら、青髪の幼女が歩いて来て僕を見上げた。


「私は魔人なの。

だからみんなと違うでしょ?」


「なにが?」


「へ?」


いやいや、そんな不思議そうな顔されましても。

何処にでもいる幼女そのものだよ。


「この青く染まってしまった髪とか怖いでしょ?」


「怖い?

なんで?

確かに青髪は珍しいけどね。

でも良く似合ってて可愛いよ」


僕以外の全員があっけに取られたかの様に固まった。


「そもそも魔人ってなに?

見た目は何も変わらないよ」


「ハッハッハッハー!

おめぇいい奴だな。

すまないすまない。

魔人が見えて近づいて来る奴に碌な奴がいないもんだからついな。

許してくれ」


チャップが僕を放したかと思うと肩を抱いて笑い出した。


急変し過ぎでビックリだよ。


「少なくても、僕は碌でも無い奴だよ」


「そうか碌でも無い奴か。

でもオレは気に入った。

どうだ?ウチに来ないか?」


「僕は大道芸なんて出来ないよ」


「構いはしねぇ。

どうせウチには碌に芸が出来るのは俺しかいねぇ」


それを聞いた団員から口々に酷いとか、人でなしとか、最低ーとか聞こえて来るけどチャップは気にして無いみたい。


世界で有名な雑芸団がこんなんでいいのだろうか?


「そんな事より見える見えないって何?

僕にはバッチリ見えてるけど」


僕の疑問に答えてくれたのは幼女だった。


「魔人はあまりの魔力の強さが魂にも影響されて特別な力を持った人間の事なの。

その魂からの強力な力で髪の色が濃く青く染まるの。

そしてその力は人間の魂に直接恐怖を与える。

その恐怖から逃れる為に人間は無意識に魔人を認識の外に弾き出すの」


「だから魔人を認識出来る奴は大体イカれた奴なんだよ」


魂の力って……

霊力じゃね?


「つまり、ちょっと他の人より変わった力を持った人って事」


その一言にチャップはまた爆笑した。


何がそんなに面白いかは全くの謎だ。


「お兄さんからは魔人の気配がするの。

魔人の知り合いいるの?」


「それね。

昨晩も魔人の団体様に聞かれたんだ。

でも心当たりが……」


あるわ。

濃い青色の髪で霊力が使うの得意な女の子。


ルリじゃん。

そっか〜、ただ存在感が薄いだけじゃなかったんだ。


言われてみれば僕も気配を完全に消す時は霊力をメインで使ってる気がするよ。


「ちなみに他の魔人に会ったらどうするの?」


「どうもしない。

ただの興味。

魔人はその特性上、人間と相容れ難い。

それなのにあなたからの魔人の気配には密接な関係が感じられる。

とても不思議」


まあね。

きっとルリは僕の事を今でも殺しのターゲットとして見てるからね。

殺し屋とターゲットなんて密接な関係あんまりないよ。



僕はチャップのしつこい勧誘を振り切って家路に着いていた。


しかし魔人なんて初めて聞いたし、ルリが魔人だなんて知らなかったよ。

……だから?


良く考えたらどうでも良かったわ。

でもあの魔人の御一行はまた来るのかな?


「ねえソラ。

ルリって秘密基地にいた?」


「任務に出てたよ」


影の中からソラが答える。


「そっか〜

なら仕方ないね」


「ルリを会わせるの?」


「う〜ん。

先に魔人御一行の話を聞いてからだね。

ルリにとっていい事なら会った方がもいいかも?

ルリ本人が会いたかったらだけどね」


「ルリにとって良く無い話だったら?」


「そんなの決まってるじゃないか〜

全員跡形も無くこの世から消し去っちゃうよ」


「流石主!

超クール!」


どうだ凄いだろ〜

……ん?


超冷たいって言われてない?

……どっちにしても褒められてるからいっか。


「じゃあ私、先に帰ってルリが帰って来たら主の所行くように言ってあげる」


「お願いできる?」


「任せて」


「来れたらでいいよって言っておいてね」


「はーい」


ルリが気配が僕の影から消えた。


やっぱりこの技はさっぱりわからん。

でも聞いたら負けな気がする。


ふも歓楽街の方を見ると見た事のあるスタイルの良い女性がいた。


あれはトレインの想い人のレイナじゃないか。

私服だから一瞬気がつかなかった。


ボーイッシュな冬コーデながらも、鍛えられたスタイルの良さからカッコいい大人の色気が醸されている。


「こんばんは。

確かヒカゲ・アークム君でしたよね?」


レイナが僕に気付いて挨拶して来た。


「こんばんは。

その服似合ってるね」


「ありがとう。

トレイン見ませんでした?」


「トレイン?

見てないよ。

どうかしたの?」


「トレインは今、訳あって任務で剣聖ザンキ様と一緒にいるのだけど」


結局ザンキは監視付きの執行猶予という判決になったらしい。

斬ったのが悪人だけであり、何より国際テロリストの僕を退けたと言う功績が大きかったみたい。


その監視役がトレインなのは知らなかったよ。

損な役引き当てたね。


「任務なのをいい事にトレインったら、ザンキ様を連れ出して経費で毎晩飲み歩いてるのよ。

信じられる?」


な〜んだ。

充分謳歌してるじゃないか。

流石トレインだ。


「経理の女の子はなんかトレインに甘いから、私がビシッと言ってやろうと思ったんだけど……」


レイナは視線を歓楽街でも、特にピンクなお店が立ち並ぶの方へ移す。


「すみませんが、トレインを探して来て貰えませんか?

私が行くと何故かスカウトにすぐ捕まってなかなか進めないんです」


そりゃあそうだろ。

僕がスカウトでも絶対声かけるよ。


残念ながら僕が客なら酔わしておもちゃにしちゃうけどね。


「いいよ。

トレインを捕まえて来たらいいんだね。

任せてよ。

すぐにここに来させてみせるよ」


さて、トレインをおちょくりに行くとしますか。


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