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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
10章 悪党は才能と努力で成り立っている
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第13話

ヒカゲと別れたハヌルは次の試合に向けて鍛錬する為に王国騎士団が使う訓練場に来ていた。


そこにはダイナが自主練していた。


「ハヌル王子。

試合に向けたトレーニングですか?」


「予選トーナメントは制したからね。

いよいよ本番だよ。

ダイナは自主練し過ぎじゃないか?」


ハヌルが心配するのも無理は無い。

ダイナの両目の下には隠しきれない程のクマが出来ていた。


「大丈夫ですよ。

まだまだやれますよ」


「大丈夫じゃないわよ!」


任務から帰って来たレイナが話に割り込んで来た。

横には同じく任務を終えたトレインが連れ添っていた。


「総長からも休めと言われていたはずよ」


「休んださ。

もう充分な程に」


「そんな酷い顔で休んでる訳無いでしょ」


「いつも通りだよ」


「そんなわけ――」


「まあまあレイン。

落ち着けって」


怒ってるレイナをトレインが宥める。

そんなトレインをレイナは睨むが、トレインは気にせずに飄々としていた。


「そんな事よりアイビーちゃん来てるから連れて来たぞ」


「待て!

今会うのはマズイ」


ダイナは慌てて顔を隠した。

それを見てトレインはイタズラっぽく笑った。


「嘘だけどな」


「どう言うつもりだトレイン!」


「ほらみろ。

自分でもアイビーちゃんに見せられ無い程酷い顔だと分かっているんだろ?」


「それは……」


「だから休めって言ってるんだ。

またアイビーちゃんが毎日見舞いに来るようになったら申し訳無いだろ」


「……わかった」


ダイナは渋々頷いて歩き出した。

トレインはそのダイナの肩を組んで横に並んで歩いた。


「しっかり休んだら訓練の相手してやるから。

レイナが」


「私?

もちろん構わないけど、トレインも付き合いなさいよ」


「悪いな。

俺はこれから町に繰り出してお姉ちゃん達と夜の訓練があるんだ」


「なっ!」


顔を赤くして固まったレイナを無視してトレインは続けた。


「そうだ。

ダイナも今からレイナに夜の訓練付き合ってもらえば?

今なら頼めばOKくれるかもよ」


「あんた何言って!」


「夜の訓練したらぐっすり眠れるかもよ」


「トレイン!

いい加減にしろ!」


レイナが一発殴ろうと走り出すと同時にトレインはダイナを置いて逃げ出した。


「あいつ、逃げ足だけは速いんだから!」


悪態をつくレイナに、なんだか力が抜けたダイナは疲れた笑みを浮かべた。


「ダイナもあいつの言う事なんか聞かずにさっさと休みなさいよ」


「ああ、そうするよ」


そして2人は訓練場を後にした。


入れ替わる様にグラハムが現れた。


「ハヌル王子。

お見苦しい所をお見せして申し訳ありません」


「別に構わないさ。

それにしてもダイナはまだ立ち直れて無いみたいだな」


「ええ。

やはり目の前で父親を殺された事は相当ショックだったみたいで」


「しかしあのやつれようは心配だな」


グラハムは深いため息を吐いた。


「休めとは言っているのですが、私だとどうしても構えてしまうみたいで。

ここは友人でもある二人の方が受け入れやすいかと」


「確かにそうかもしれないね。

友とは良い物だ。

カットバー伯爵はグラハムの友人でもあったんだってね」


「はい。

騎士学校時代からの友人でした。

まさかこんな別れになるとは思いませんでしたが」


グラハムは遠い目をしながら少し思い出に浸った。


「時にハヌル王子。

予選突破おめでとうございます」


「ありがとう。

まだまだこれからだけど、優勝目指して頑張るよ」


「ジークは元気にしてましたか?」


「ああ、彼も友人らしいね」


「ええ。

彼も騎士学校時代からの友人ですよ。

彼は剣の腕も確かでしたが、人に才能に気付き教えるのが特に上手かった。

私がここまでなれたのは彼のおかげです」


「それは凄い。

是非とも俺も教わりたいな」


「彼程では無いですが、私で良ければお相手しますよ」


「ああ、頼むよ。

俺はどうしても勝ちたいんだ」



夕食時までみっちりとトレーニングしたハヌルは、グラハムに礼を言って夕食に向かった。


食堂に向かう途中、先に夕食を終えたアポロとばったり会った。


「予選はどうだったんだ?」


アポロがハヌルに話かけた。


「難なく通過したさ」


「流石だな」


「まあね。

予選で負けてたら意味無いからね」


ハヌルは笑顔で答える。


「それもそうか」


アポロは軽く頷いてから続けた。


「お前は本気だったんだな?」


「もちろん。

俺はいつだって本気さ」


アポロの真剣な視線にハヌルも真剣な視線で返した。


「ハヌル。

お前は王位継承を破棄して誰につく?」


「だれにもつく気は無いよ。

俺は王位継承争いに関わるつもりは無い」


「お前がそう言うなら、今はそれでいい」


アポロが含みのある言葉にハヌルは気になった。


「何か言いたげだね」


アポロは黙ってハヌルの顔をじっと見続ける。


「どうしたの?」


「俺はお前が怖い」


「はぇ?」


突然の言葉にハヌルは意味がわからず間抜けな声が出た。

だがアポロは真剣な面持ちのままだ。


「俺は王になる。

この国も俺が王になった方が安泰だ。

だが、その障害になるのはお前だけだ。

ソウルは話にならないし、ルナも相手にならない」


「俺は王位継承争いに興味が無いって昔から言ってるだろ」


「だから今まで俺たちは血を見ないで済んだんだ。

王族である限り王位継承争いからは切っても切りきれないぞ。

もしお前が俺以外についたら徹底的にやり合うしか無い。

俺も出来ればそれは避けたい」


そう言ってアポロはハヌルの横を通り過ぎて行った。


「兄さん」


ハヌルは振り返ってアポロを呼び止めた。


「俺も兄さんが国王になるのが一番だと思う。

国を背負う者は時には自らの責任で残酷な判断を下さないといけない時がある。

理想や綺麗事だけでは絶対に土壇場での判断に遅れがでる。

その点兄さんなら問題無い」


「そう思うなら俺につけ」


ハヌルはゆっくりと首を横に振る。


「それでも俺は誰にもつく気は無いんだ。

でも兄さん。

これだけは覚えておいて欲しい。

敵を甘く見積もってはいけない。

いつか必ず痛い目を見る事になるよ」


「ああ、覚えておく」


そう言ってアポロは廊下の奥へと消えて行った。


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