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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
10章 悪党は才能と努力で成り立っている
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第10話

ご飯を食べたらリリーナの機嫌は直ったみたい。

やっぱりお腹が空いてたんだね。


超高級店だったから金額も凄かったけどね。

リリーナの機嫌が治ったなら安い物だと思う事にしよう。


リリーナを送ってから帰路についたらすっかり遅くなっちゃった。


明日こそ休むぞ。

明日はハヌルの試合があるけど、流石にハヌルは応援に来てとか言わないだろう。


「主、何かいる」


影の中のソラが僕に忠告した。


「そうだね」


もちろん僕も気付いてる。

レストランを出てからだからリリーナを付けてたのかと思ってたけど、どうやらお目当ては僕らしい。


「どうする?

殺す?」


「いや、面白そうだし少し様子を見よう」


僕は敢えて人通りの無い道に入った。

するとすぐに逃げ道を無くす様に3人が僕を取り囲んだ。

全員顔が見えない程の深い傘を被っている。


みんなシャイなのかな?


「えーと……

どちら様?」


僕の質問に正面の奴が答えた。

声からして男みたいだ。


「夜分遅くに申し訳ない。

我々は魔人を探している。

そなたから魔人の気配がしている。

その魔人に会わせて欲しい」


魔人?

そんな事を前にも言われた気がする。

いつだったかな?


「警戒するのは分かる。

だが我々は危害を加えるつもりは無い」


僕が渋ってると勘違いしてるみたい。

でも残念ながら僕は魔人なんて会ったことが無い。


「会わす会わさない以前に僕は魔人なんて知らないよ」


「やはり警戒を解いてはくれないか」


「いや、そうじゃなくて――」


「仕方ない」


男は傘に手をかけて脱ごうとした。


「若!

それはいけません」


別の男がそれを止めた。


「しかし警戒を解いて貰うのはそれが一番早い」


「ダメです若!

人間に素顔を見せるなんて危険過ぎます!」


「そうです!

こんな人間如き、私が拷問でもなんでもして居場所を吐かせれば終いです!」


更にもう一人も若とやらを止める。

こっちは女みたい。


「それは良くない。

我々は敵対しに来た訳では無い」


若とやらが二人を嗜める。


どうでもいいけど、僕は本当に知らないんだって。


「主。

なんかあいつら面倒くさい。

殺っちゃっていい?」


影の中のソラが何故かイライラしている。

なんで?


「ソラ、そんなにイライラしてどうしたの?」


「私は早く帰って主の血が飲みたいの!」


まだ諦めて無かったんだ。


「帰ってもあげないよ」


「なんでー!!

あの女だけズルいー!!

私もご飯ー!!

ご飯頂戴ー!!」


ソラが僕の影の中で暴れ出す。


「ソラ、ちょっと落ち着こうね」


「いーやーやー!!」


ダメだ。

聞く耳持たない。


「我々が誠意を見せれば彼も分かってくれるかも知れない」


「いいえダメです!

人間なんかに誠意を見せても無駄です!

こ奴らは血も涙も無い外道共です!」


「そうです!

こ奴ら人間は他者との違いを許容出来ない愚かな生き物です!」


あっちもあっちでヒートアップしてるし。

なんか勝手に状況がカオスになって行ってるよ。


「あのさ〜

そもそも魔人って何?」


「えーい!

そうやって我等を謀ろうったって算段だな!」


「やっぱり人間なんて信用出来ない!」


こっちもダメだ。

聞く耳持たない。


「やめるんだ二人共。

我々は話し合いに来たんだ」


「いえ若は優しすぎます!」


「そうです若様!

その優しさに付け込まれてしまいます!」


若以外の二人が剣を抜き、凄まじい魔力が噴き出る。


良くわからないまま話が進んでるけど、どうやら僕を捕まえて拷問するらしい。


困ったな〜

本当に知らないんだけどな〜


よし、ここは逃げ――


「お前達の所為だー!!」


ようとしたら、ソラが影から飛び出して剣を持った男をドロップキックで蹴り飛ばした。


ソラは男を蹴り飛ばした反動のまま驚きで固まった女の手を掴んで、捻り上げて組み伏せた。


そのままへし折ろうと更に力を入れる。


そこまで一瞬の出来事だった。

なんて無駄の無い動き。


「お前達が剣を向けるから主が血をくれないんだぞ!」


いやいや。

全然関係無いよ。


それは完全に八つ当たりだよ。


「待ってくれ。

二人には言って聞かせる。

だから許してくれ」


若が謝りながらソラに近づく。


「うるさい!」


しかし、ソラに片手で弾き飛ばされた。


その衝撃で傘が飛んで行く。

中から濃い青色の髪の美青年が顔を出した。


「ぐっ、これしきの事で……」


女はミシミシと音を立てる腕の痛さに必死に耐えている。


「頼む!

我々が悪かった!

許してくれこの通りだ!」


若が土下座までして必死にソラに訴える。


そんな事に聞く耳を持つソラでは無い。

折るどころか、引きちぎりそうな勢い。


それにしても、幼女に土下座して頼む成人男性。


これはシュールな光景だ。


おっと、そんな事よりもこの状況どうしようかな?


このままほっといて帰ってもいいんだけどな。

魔人ってのも気になる。


うーん……

とりあえずこの若って奴は善人っぽいから、一旦ソラを辞めさせるかな。


「ソラ。

帰ったら血をあげるから大人しく待ってて」


「本当に!?

飲み放題?

飲み放題だよね?

やったー、飲み放題だー!」


ソラが目をキラキラ輝かせて、勝手に飲み放題って言い出した。


「いや、少しだけだよ」


「飲み放題!」


「だから少し――」


「飲み放題!」


「……」


「飲み放題!」


「わかった。

飲み放題でいいから影の中で大人しく待っててくれる」


「はーい」


ソラは元気良く返事をして、僕の影に飛び込んだ。


とりあえずこっちは落ち着いた。

帰ってから大変だけど。


「すまない。

恩に着る」


「いいよ、別に」


どうせ今は保留なだけだから。


若は立ち上がって僕を真っ直ぐ見た。

この若ってのもかなりの魔力の持ち主だ。


「見て貰ったら分かると思うが、我々も魔人だ。

だから仲間を探している。

どうか会わせて欲しい」


「えーと……

見ても分かんないよ。

君はどう見たって普通の人と変わらないだろ?

ちょっと魔力は多いけど」


若は驚いたように目を丸くした後、嬉しそうに微笑んだ。


「そなたはいい人だ」


いいえ。

僕は悪党だからいい人じゃないよ。


「我を見ても何も変わらないと言ってくれるなんて思いもしなかった」


「いや、どう見たって普通の人間だけど」


「ありがとう。

今日は迷惑をかけた。

二人には後日お詫びさせる。

すまないが今日は改めさせてもらいたい」


若が腕を押さえている女に肩を貸して立ち上がらせた。


「いや、それより魔人って――」


「では、また」


そう言って若は二人を引き連れて去って行った。


最近思うんだ。

僕の話を聞いてくれない人多いなって。

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