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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
10章 悪党は才能と努力で成り立っている
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第8話

リリーナは順調に勝ち進んでいた。


元からリリーナは普通クラスでは頭一つ抜けていた。


そんな中でも一切あぐらを描くこと無く、日々の鍛錬を欠かさなかった。


その成果が確実に出ていた。


もはや普通クラスにリリーナを止めれる者はいなかった。

その事を今朝のヒカゲの一言で確信した。

なによりヒカゲが気付いてくれた事が嬉しくてたまらなかった。


故に今日のリリーナは絶好調だった。


そんなリリーナも決勝戦を前に少し緊張していた。


決勝の相手は特待生。

今までとは訳が違う。

そう簡単に勝てる相手では無い。


入場を前に今更になって沸々と不安が湧き上がって来た。


「予選如きで負けてたまるもんですか」


リリーナは自分に言い聞かせて入場した。


闘技場に上がって客席を見た。


あらかじめ確認していた所にヒカゲの姿を見つけてた。


特段応援しようと言う気が無いのが丸わかりな気の抜けた顔。


いつも通りって言ったらいつも通りの顔。


だけどその顔を見ると、不思議とさっきまでの不安が嘘の様に消えた。


余裕が出て来たリリーナは落ち着いて剣を構えた。


「では、初め!」


開始の合図と共にタランゾが動く。


一瞬にしてリリーナとの距離が無くなり、タランゾの剣がリリーナに迫る。


その一部始終がリリーナには見えていた。


リリーナは落ち着いて半歩下がる事でタランゾの剣は紙一重で躱わす。


しかし空振りしたぐらいで隙が出来る程甘い相手ではない。

すぐにタランゾは剣を翻してリリーナに切り掛かった。


リリーナはそれを半身をずらす事でまたもや紙一重で躱した。


連続攻撃を躱した事により生じた隙。

それをリリーナは見逃さない。


タランゾもそれは分かっていた。

リリーナの僅かな挙動に対して後方に大きく跳んで距離を取ろうとした。


その瞬間リリーナが動いた。


必要最低限の動きで躱していたリリーナは全く予備動作無しでタランゾとの距離を縮める。


タランゾがさっきのがフェイントだと気付いた時にはもう遅かった。


悪足掻きで出したタランゾの剣はリリーナに軽く弾かれて場外へと飛んでいった。


そしてタランゾは着地すると同時にリリーナの剣先が首元に突きつけられた。


リリーナが動き出してから一瞬の出来事だった。


リリーナの全く無駄の無く、最短の動きを全て見えた生徒は数える程しかいない。


「勝負あり」


審判の号令によりリリーナの勝利で決まった。


客席から惜しみない拍手が送られた。


「参った。

完敗だ」


タランゾもリリーナを讃えて、二人は握手を交わした。


「あなたも強かったわ」


リリーナは喜びでニヤけてしまいそうになりながらも、平静を装って返した。


リリーナの心の中は喜びとヒカゲへの感謝でいっぱいにらなった。


“きちんとお礼言わなきゃ。

ヒカゲが勝てるって言ってくれたから不安が無くなった”


退場するリリーナの顔から堪え切れない笑みが溢れる。


自然と足早になる。


“この喜びをまずヒカゲに伝えないと”


そう思ってヒカゲのいる客席に視線を写した。


そこにはヒカゲの姿は無かった。


リリーナは更に足早になった。


リリーナの心の中の喜びとヒカゲへの感謝は一瞬にして怒りへと変わっていた。



教員達の観戦席からも惜しみない拍手が送られていた。


特に学園長は大きな拍手を送っていた。


「いやー、予選とは思えないレベルの高い試合だった。

ジーク先生はどう見ますかな?」


「そうですね。

勝敗を分けたとすれば……」


「すれば?」


「実践経験の差でしょうか。

必要最低限の動きで紙一重で躱わす。

正しく理想の動き。

でも頭で分かっていても実際するのは遥かに難しい。

まして実力が拮抗している相手となると更に難しい。

彼女は常日頃からその事を考えて鍛錬しているのでしょう」


「ジーク先生。

私も同じ見解です。

きっとそれ程の相手と対峙した事があるんだな」


学園長は満足気に頷いた。


「しかし何年ぶりかな?

特待生が予選トーナメントで負けるなんて」


「そうですね。

少なくても私が特待生を見るようになってからは無いですね」


「なら初黒星ですな。

心中はいかに?」


「いい勉強になりましたよ。

私もまだまだです」


「では、これからも期待してますよジーク先生」


学園長はそう言って席を外した。

そのまま選手の退場口まで一直線に向かっていく。


そして試合を終えたばかりのタランゾの前に姿を現した。


「素晴らしい試合だったぞ。

タランゾ・トールニー君」


「学園長!

ありがとうございます。

負けてしまいましたが」


「大丈夫だ。

君はまだまだ強くなれる」


「本当ですか?」


「ああ、もちろんだ。

強くなれる方法を教えてあげようか?」


「はい!お願いします」


学園長はニヤリと不敵に笑った。

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