第2話
特待生のくじも終わりトーナメント表が完成した。
リリーナは特待生のいるトーナメントに入ってた。
順当に勝ち上がっても決勝でぶつかるみたいだね。
こればっかりはくじ引きだから仕方ない。
「残念だったね」
「なにが?」
帰りの馬車の中でかけた僕の言葉にリリーナは何でも無いように答えた。
リリーナが実家暮らしになってから自由になったと思ったのに、結局放課後はリリーナに拉致られて家まで送らされる日々が続いている。
「どうせその内当たるのだから一緒でしょ?
言っとくけど、私は優勝する気だから」
なんたる自信。
流石リリーナだ。
「ダーリンは私とヒナタちゃんが試合になったらどっちを応援するの?」
「両方――」
「両方応援するは無しよ。
当たり前じゃない。
どっちかしか勝ち上がれないんだから」
「両方応援しない」
見事なボディーブローが炸裂した。
なんたる身のこなし。
うん、これならきっと上位目指せるよ。
「それは一番無しでしょ!」
「わざわざ殴らなくても良くない?」
「今のは私の愛のボディーブロー待ってるのかと思ったわ」
「感じられるのは愛じゃなくて痛みだけだよ」
「そう?
ならもっと愛を込めてあげましょうか?」
「今感じた。
リリーナの愛をしっかり感じたよ」
リリーナが再び拳を固めたから、慌てて訂正した。
感じたのは愛じゃなくて威圧感だけど。
「で、どっちを応援するの?」
「うーん……」
難しい質問だ。
別にどっちも応援する気なんて無い。
だって僕には関係ないし。
「あら?
てっきりヒナタちゃんと言うと思ってたわ」
リリーナは凄く意外そうに言った。
「なんで?」
「だってダーリンは私よりヒナタちゃんの方が優先でしょ?」
まだ前の事根に持ってるの?
リリーナって記憶力いいよね。
「いや別にそう言う――」
「私もダーリンにとってヒナタちゃんと同じぐらいになったわけね」
「リリーナ。
なんか壮大な勘違いしてるよ」
「でもいつか私があなたの一番になってみせるから覚悟しときなさい」
そう言った時に馬車がコドラ邸に到着したから、リリーナは馬車を降りた。
僕も一緒に降りる。
「言っとくけど、私の一番はもちろんダーリンよ。
愛してるわダーリン」
そう言ってリリーナは屋敷に入って行った。
別に誰が一番とか無いんだけどな。
身内はみんな身内だし。
僕の一番は昔からずっと変わらない。
それは僕自身だ。
◇
寮に戻ると珍しいお客さんが来ていた。
そして幼女姿で頬を膨らませてソファーを占領していた。
「ソラ。
どうしたの?」
「私待ちくたびれた!」
大層ご立腹の様子だ。
なんで?
「待ちくたびれたと言われても、今日来るって言ってた?」
「違う!
今日の話じゃない!」
だよね。
約束してないもんね。
「じゃあ何をそんなに怒ってるの?」
「主の血が飲みたい!」
「え?
それで怒ってるの?」
「そう!
主のお手伝いした。
だから主の血が飲み放題」
どうしよう。
そんな約束した記憶が全く無い。
僕は忘れ易いけど、そんな約束するとは思えない。
「ねえソラ。
聞いていい?」
「なに?」
「そんな約束した?」
「してない」
してないのかよ。
そりゃどおりで記憶にないわけだ。
「してないけど私が決めたの!
主の血が飲みたいの!」
ソラが机をバンバンしながら駄々を捏ね始めた。
なんたる自分勝手。
いっそ清々しい。
流石悪党である。
「近所迷惑だから机を叩くのやめようね」
「はーい」
ソラは右手を挙げて元気よく返事をした。
こう言う所は素直なんだよな〜
「僕の血も諦めようね」
「いーやーだー」
「じゃあ少しだけだよ」
「いーやー。
飲み放題がいい!」
「飲み過ぎは良くないよ」
「いっぱい飲んで、いっぱいヤりたいの!」
「それがダメなんだって〜」
僕は大きな溜息を吐いた。
それさえ無かったら、どれだけでも飲んでいいのに。
「なんで〜?
あの玩具だけズルい〜!」
「あの玩具って?
ああ、ミレイヌの事か。
あれはそう言う玩具なの」
「なら私も玩具でいい。
そうしたら私は飲み放題。
主はヤり放題。
私も主もいい事尽くめ」
「全然良く無いよ」
ピンポーン。
チャイムが鳴ってソラが僕の影に飛び込んで隠れた。
「お兄ちゃ〜ん。
いる〜?」
ヒナタの声がするけど、なんかいつもの元気が無い。
一体どうしたんだろう?
僕は超特急で扉を開けた。
「お兄ちゃ〜ん。
聞いてよ〜」
扉を開けた瞬間ヒナタが僕の胸に飛び込んだ。
なんだ?
本当に何があったんだ?
「うわ〜
お兄ちゃんの匂いだ〜」
え?
僕ってそんなに匂うの?
確かに今日はまだお風呂入って無いけど……
「ヒナタ。
どうしたの?
何があったの?
お兄ちゃんに言ってごらん?」
「お兄ちゃん。
私お兄ちゃんが作ったココア飲みたい」
「よし来た。
今すぐ作ってあげるね。
ソファーに座って待ってて」
僕はすぐにココアを作ってあげた。
「やっぱりお兄ちゃんのココアは美味しいね」
ヒナタがニコニコしながらココアを飲んでいる。
とりあえず切迫した何かが起きては無さそうでちょっと安心。
「それでね――」
「ちょっとストップ。
すぐ戻って来るからココア飲んで待ってて」
「え?
うん、待ってる」
僕は速攻で浴室に突撃して、速攻で全身洗った。
これで大丈夫なはず。
大丈夫なはずだ。
ヒナタにお兄ちゃん臭いとか言われたら僕立ち直れない。
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