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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
9章 悪党は自分勝手で残酷である
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第10話

朝起きたらなんか町が騒がしかった。

これは面白い事件の予感。


僕は両手の上に乗っているカナリアとワイバーン君をそっと下ろしてホテルの部屋を出た。


ってか2人とも別でちゃんと部屋用意したのになんで僕の部屋で寝てるの?


おかしいよね?

昨日僕が帰って来た時には自分の部屋で寝てたのに。

あまりにも自然に入って来たからスルーしちゃったけど。


狭く無いのかな?


そんな事はとりあえず置いといて、ホテルの従業員に騒ぎの原因を聞いた。


なんか辻斬りが出たらしい。


なんて面白そうな事件なんだ。

早速見に行こう。


僕はホテルを飛び出して人混みの方へ向かった。

どの世界でも野次馬はいるものだ。


僕は空に飛んで上から野次馬する事にした。


うお〜すげ〜

綺麗に真っ二つだ〜

しかも超綺麗な切り口。


どんな奴がやったのかな〜

今晩も出るかな〜

今晩は徘徊してみようかな?


おやおや?あれはトレイン君じゃないか。

彼なら詳しく知ってるはずだから教えて貰おう。

おちょくるついでに。


僕はメモを取り出してお手紙を書く。


『やあ、トレイン。

面白そうな事件を捜査してるね。

管轄外なのに大変だね。

僕も興味あるから詳しく教えて欲しいな。

二つ隣の交差点にある、エルフの美人のお姉さんがやって喫茶店で待ってるね。


え?僕が誰かだって?

僕だよ僕。

こんな事するのは僕しかいないじゃないか。

出来るだけ急いで来てね。

早く来ないと今度、君のお友達の可愛い女部隊長さんにお酒飲ませてイタズラしちゃうよ』


これで良し。

きっといい反応してくれるさ。


僕は紙飛行機を作って、事件現場で捜査してるっぽいトレイン君目掛けて投げた。


紙飛行機がトレイン君の後頭部に直撃して刺さった。


やったー、大成功。

ほらほらメモを見たトレイン君は慌ててる。

そんなにキョロキョロ見渡したって野次馬の中に僕は見つからないよ。


じゃあ早く来てね。

僕は先に喫茶店に入って待ってるから。



「おーいトレイン。

こっちこっち」


僕は喫茶店に入って来たトレインに大きく手を振ってあげた。


それなのにトレイン君はなんか嫌な物を見た顔をしてる。

なんて失礼な奴。


「なんで君がいるんだ?」


トレインが心底嫌だと言う口調で僕の前に座った。


「なんだよトレイン。

せっかくお茶に誘ってあげたのに酷い言いようじゃないか。

そんなんだと本当にあの女騎士部隊長にイタズラしちゃうよ」


「やめろエロガキ!」


もうトレイン君ったら慌てちゃって〜

本当に面白いな〜


「僕は観光で来てたんだ。

トレインは里帰り?」


「本当に君は俺の事調べあげたんだな。

感心するよ」


「そんなに褒めても何も出ないよ」


「褒めて無い!

嫌味だ!気付け!」


「まあまあ、そんなに大きな声出したら迷惑だよ。

それより辻斬り事件の事聞かせてよ」


「捜査上の機密だ。

言えない」


トレインは毅然とした態度できっぱりと言い切った。


まあそうなるよね。

君はなんだかんだで真面目な騎士だからね。


「わかってるよ。

だから言える事だけ教えてよ」


トレインはため息を吐いて、運ばれて来たコーヒーにミルクと砂糖を入れて右手にもったスプーンでかき混ぜた。


「半グレの6人が昨日の夜中に何者かに斬られた。

以上だ」


「それだけ?」


「言えるのはそれだけだ」


「なんで管轄外のトレインが非番なのに捜査に立ち会ってたの?」


「放っておけないだろ?」


「ふ〜ん」


なんかトレイン君冷たいな〜

ちょっとおちょくり過ぎて拗ねたのかな?


「それにしてもなんかやつれてるね。

せっかくの里帰りなのに休めて無いの?」


「昨日ちょっと飲み過ぎただけだ」


「女の子ナンパして飲んでたの?」


「そうだ」


「ナンパは上手くいったの?」


「俺だからな。

当然だろ」


「お持ち帰りは?」


「するわけ無いだろ。

一応こんなんでも王国騎士だからな」


「ふ〜ん」


僕はトレインの顔をじっと見る。

目の下に若干クマが出来ている。


「それでトレイン。

辻斬りは強かったの?

どんな奴だった?」


「なんでそれを!?」


「やっぱりそうか。

トレインは辻斬りに会ったんだね」


「お前鎌かけたな!」


「まあね。

夜女の子と遊ぶのに忙しいトレインが、こんな朝早くから起きて捜査に参加するなんておかしいと思ったんだ」


トレインが忌々しそうに見るけど僕は気にしない。

だって辻斬りの方が興味あるもん。


「言えないぞ。

捜査上の機密だ」


「ぶー、僕はカットバー伯爵の事教えてあげたのにー」


「あんな中途半端な事教えといて良くいうな。

おかげでこっちは悩みっぱなしだ」


「でも良かったでしょ?

君の友人も知らずに終われたじゃないか」


「それが本当にいい事なのか?」


トレインは僕に問う。

本当にまだ悩んでるみたい。


「結局死んじゃったわけだから、君がもう悩む事無いじゃないか」


「そう割り切れる程器用じゃないんだよ」


トレインは真面目だね〜

僕には真似出来ないよ。


「ねえ、見た目ぐらい教えてよ。

どうせそのうち注意喚起の為に情報開示するんでしょ?」


「わぁたよ。

全身黒い鎧に真っ赤な髪。

2本の角が生えていたが、鎧の装飾なのか本当の角なのかわからないから鬼人とは判断出来ない。

以上だ。

本当にこれ以上はなにも言えない」


「もう一言〜」


赤髪の鬼人か〜

ルージュみたいだね。


でもルージュがやった場合はもっと散らかってるから違うね。


「その話。

ワイにも教えてくれんか?」


どこぞのおっさんが話を割り込んで来た。


「なんであなたがここにいるんですか?

ギャラン帝国独立騎士のヘンジンさん」


「トレインの知り合い?」


「要人警護でギャラン帝国に行った時に顔を見ただけだけどな」


トレインが警戒したようにヘンジンを睨む。

ヘンジンは不思議そうに首を傾げた。


「はて?

ワイは記憶力には自信があるのだが……

君に睨まれる事をした覚えは無いぞ?」


「他国の騎士がこんな国境付近に現れたら警戒するさ。

これでも王国騎士だ」


「なるほど、合点いった。

だが安心してくれ。

今は完全プライベートだ。

その証拠に丸腰だ」


ヘンジンはコートの中まで見せて丸腰をアピールする。

だけど、トレインは警戒を解かない。


「そうだとしても、我が国の事件を他所の国の騎士に話す訳無いだろ」


「もちろんタダではとは言わんよ。

ワイの持ってる情報を先に話すよ」


そう言ってヘンジンは半ば無理矢理席に着いて話し始めた。


それはとても面白い話だった。


人を斬るのを我慢出来なくなった末に、国を跨いで辻斬りするなんてファンキーな奴じゃないか。


それもかなりの腕前。

是非ともお会いしたいね。

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1つでも構いません。


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よろしくお願いします。

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