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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
8章 悪党は全てを奪い去る
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第31話

ギルド『ドラゴンクローバー』の来賓室。


そこで青竜は、向かいに座るソフィアとその両脇で睨みを利かしているギンジとスカンダを前に萎縮していた。


「サゴドン公爵がドーントレスの幹部玄武である事は娘のミレイヌの垂れ込みによって発覚。

証拠も十二分に揃っているわ。

サゴドン公爵と言ったらあなた達ドラゴンクローバーの上客よね?」


「はい」


ソフィアの問いに、青竜は素直に頷くしかなかった。


「あなた達の依頼内容と過去ドーントレスの活動と思われる事件との場所が類似してる事が多いわ。

特にサゴドン公爵の匿名依頼の時に。

私の言いたい事わかるわよね?」


青竜は黙った。

一体ギルド協会がどこまで知っているのか推し量っていた。


「単刀直入に聞くわね。

あなた達は知ってて加担したの?

知らずに依頼を遂行したの?」


ドラゴンクローバーがドーントレスと繋がりが深い事もミレイヌからの垂れ込みでわかっていた。

だけどあえて出方を伺っていた。

それによってこれからの処遇を決めるつもりでいた。


「私達は……

知っていました。

彼らがドーントレスである事を」


青竜は悩んだ末に白状する事にした。

ドーントレスはもはや壊滅寸前。

共倒れだけはごめんだと判断した。


「しかし私達はあくまで依頼内容に沿った行動しかしていません。

倫理的には間違っていたかもしれませんが、ギルド運営としては何も間違った事はしていません」


「確かに依頼内容を精査出来ていなかった私達にも非がある事は認めます。

ですが、あなた達も報告を敢えてしなかったのではありませんか?」


「それは……

認めます。

大きな取引先ですので、目を瞑っていました」


ソフィアは心の中でため息を吐きながら、毅然とした態度を貫き通していた。


「本来ならギルド停止処分もしくは解散処分になる所ですが、国王陛下から条件さえ飲めば恩情を与えて良いと連絡が来ています」


「その条件とは」


「ドーントレスに知ってる事を全て洗いざらい報告する事。

そして、しばらくは王国騎士団配下に入ってドーントレス討伐に尽力する事です」


青竜はしめたと思った。

しばらくは自由に活動出来ないが、ギルドとして存続出来る。

存続さえ出来れば、なんとでも持ち直す自信があった。


「分かりました。

必ず汚名返上して――」


「それは困りますね」


どこからともなく上品な女性の声が聞こえて、ギンジとスカンダは構えた。


しかし姿は見えない。

青竜の方を改めて見てソフィアは目を疑った。


何も無い空間から毛糸が伸びて、青竜の首に巻き付いていたのだ。


青竜は口を半開きにしたまま固まっていた。

その口から先ほどの女性の声が聞こえてくる。


「彼女は貰って行きますね。

大切な同志ですから」


毛糸が複数伸びて来て青竜の体をぐるぐる巻きにする。

それが解けていって空間に戻って消える。

青竜の姿も消えていた。



王宮の一室。

国王は四人の子供に招集をかけていた。


「揃ったな。

では今から王族閣議を行う」


国王の宣言と共に室内に緊張が走った。


普段は国の方針は選ばれた貴族達と王族との会議で決定される。

しかし、それをするとどうしても時間がかかってしまう。


そこで至急に決定しないといけない案件に関しては現国王と、王位継承権を持った者だけで決定する。

その為の会議が王族閣議だ。


「議題は他でも無い。

先日聖教祭で起きた事件によって、サゴドン公爵とカットバー伯爵が殺害された。

厳密には公爵は行方不明だが、状況からして絶望的だろう。

そうなると我々は早急に中央部を治める者を決めなければならない」


王族閣議の進め方は決まっている。

王位継承権を持つ者達が意見を出して、国王が決定する。

だからこの場は国王に直接アピール出来る数少ない場でもある。


「父上。

中央部ではラドン公爵が次に力を持ってます。

順当に行けばラドン公爵で決まりかと」


長男のアポロが始めに提言した。

それに対してすぐにルナが反論する。


「アポロ兄様。

それは早計だと思います」


「と言うと?」


「中央部で力を持っている貴族はラドン公爵を始め、みんなサゴドン公爵の息がかかっていた者ばかりですよね?」


「それはそうだ。

それだけサゴドン公爵にら絶大な力があった」


「なら、ドーントレスと関わりがある可能性が高いのではありませんか?」


「それは無いとは言い切れない。

しかし父上が言うように早急な対策が必要な案件だ。

調べ上げている時間は無い」


「だからこそ、サゴドン公爵との関わりが深い者を選ぶべきでは無いかと」


「そこまで言うなら、名前を上げてみろ」


ルナが心の中でほくそ笑む。

アポロは釣られたと分かっていても聞かざる終えなかった。


「コドラ公爵です」


「それは色眼鏡で見過ぎだ」


「まあ、多少は個人的主観が入っている事は認めます。

でも、最近の功績は無視出来ませんでしょ?」


アポロはその事実を認めざるおえないが、声に出したくは無いので黙るしか無かった。


「中央部を治めるのは並大抵の事ではありません。

なら私は複数の領地を統治した事がある公爵に任せるのがいいと思います。

東西南北を治めている公爵で、今一番力を持っているのはコドラ公爵である事は火を見るより明らか。

お父様。

私はコドラ公爵がいいかと」


「しかし、コドラ公爵は中央部の貴族との繋がりは薄い。

他の貴族が反発する可能性がある」


アポロはなんとか反撃の糸口を掴もうと反論した。


「だからいいのですよ。

ドーントレスの幹部だったサゴドン公爵の影響を断ち切らないといけません。

そこに実績ではなんら問題の無いコドラ公爵が統治するのに反発すると言う事は、何らしかやましい事があると言う事でしょ?

ならばドーントレスと繋がりがある可能性も高いと思いません?」

「でも、そうすると今度は西部を治める貴族を決めないといけないよね?」


ソウルがここで話に割り込む。


彼の言う事は最もである。

コドラ公爵を中央部に移動させれば、当然空いてしまう西部を誰かが治めなければならない。


「その通りだ。

西部にそれほどの公爵がいるとは思えない」


アポロがそれに乗っかって更に反論をしていく。

しかしルナは一切慌てる事なく言い返す。


「いるではありませんか。

大きな功績を上げ続けていて、今や無視出来ない影響力を持つ貴族が」


「おい、まさか……」


「アークム男爵ですよ」


「待て!

あいつは男爵だぞ!」


その名前にアポロはあまりに馬鹿げてると思わず声を荒げてしまった。


「自分より爵位の低い者の下に入る事を納得する領主などいない」


「爵位なんて上げてしまえばいいではないですか」


「男爵から公爵に格上げなんて聞いた事が無い」


「だからなんです?

何事も初めてはあるのですよ。

そもそも国境領主が男爵って事自体がおかしいのです。

アークム男爵が領主になってからカルカナ王国との関係は良好になりました。

それだけでも並の伯爵以上の功績です。

更には、親善大使訪問の際は予定よりも大きな成功となった時の尽力。

娘のヒナタ・アークムとシンシア・アークムは剣術大会の上位入賞者で、先の事件では騎士団の大半が役に立たなかった中ナイトメアを退けるのに一役買っています。

なんで未だに男爵止まりなのですか?」


「それは……」


その答えなどアポロが知る由も無い。

なにせ、誰もが疑問に思いつつも自分には関係ないと無視して来た事なのだ。

その理由を知る国王は沈黙を貫く。


「俺も西部を任せるかどうかは置いといて、爵位の格上げは賛成だ」


その発言にそこにいる誰もが驚いてハヌルを見た。

ハヌルは今まで王族閣議では、ただ話を聞いて成り行きを見守っているだけ。

発言などした事は無かったからだ。


「ヒナタ・アークムとシンシア・アークムは俺の命の恩人だ。

こんなんでも一応俺は王族だ。

王族の命を救うなんて最大級の功績だ。

それ相応の報酬があって然るべきだ。

ルナの言う今までの功績を加味するなら、公爵の爵位でも足りないくらいだ。

領地を与えてもいいぐらいだと思うね。

でもそんな都合良く領地も余っていない。

なら西部統治も妥当かもしれないね。

でも何も落ち度の無いコドラ公爵を降格させる訳にもいかない。

となると……

ちょうどいいタイミングで空いている中央部の統治にコドラ公爵をスライドするのが自然だね。

父さんそれでいいよね?」


「あ、ああ。

そうだな」


全員が驚きで固まっている間にハヌルは一気に捲し上げて、国王から言質を取ってしまった。


「よし、父さんもそう言った事だし今回の王族閣議も終わりだね。

ああ、肩凝った。

俺は約束があるから先に失礼するよ」


そう言って、呆気に取られている全員を置いてハヌルは出で行った。

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