第29話
魔獣達はすっかり殲滅されて、みんな王都に戻って来た。
ヒナタ達が助けたピエロ達はハヌル王子が保護する事になったらしい。
なんか有名な雑芸団らしい。
僕は知らないけど、あの痛みをおくびにも見せないピエロにはプロ魂を感じたね。
結局あの幼女が言った事は分からずじまい。
なんかあの子は複雑な事情がある子らしい。
まあ、幼女の言う事なんて気にしてる場合ではない。
今、この時、早急になんとかしないといけない問題に直面しているからだ。
「流石のダーリンでも、私が怒ってる事は分かってるわよね?」
リリーナが僕の部屋に入ってくるやいなや、大層ご立腹の様子で僕に詰め寄って来てる。
しまった、一回帰ったのは失敗だった。
「ミスコンの応援出来なかったのは悪かったとは思ってるよ。
でもね。
リリーナと別れた後にどうしてもヒナタの所に行かなきゃいけなくなったんだ」
ちなみにあの後に時間を遅らせながらも、しっかりミスコンは行われたらしい。
そう言う逆境にも負けずに日常を送ろうとする強い気持ちは大切だよね。
「別にそこは怒って無いわよ。
あなたがヒナタちゃんを大切にしてる事はよーく知ってるし、そこには一切文句無いわ。
でもね」
リリーナの壁ドンが僕の部屋を揺らす。
初めて壁ドンされたけど、こんなに心臓がドキドキするとは思わなかったよ。
だって笑顔が凄く怖いんだもん。
「なんであなたは帰ってるの?」
「用事が終わったらお家に帰るよね?」
「私ずっと宣教師学園で待ってたんだけど」
「こんな時間まで?」
「こんな時間まで」
「誰を?」
「あんたに決まってるでしょうが!」
リリーナのボディーブローが僕のお腹を壁とサンドイッチにした。
これは非常に大ダメージだ。
「私が待ってる間何考えてたかわかる?」
「そんな事より苦しいから拳抜いてくれない。
って逆だよ逆。
めり込んでいってるって」
「あまりに遅いからおかしいな〜とは思ってたのよ」
「おかしいな〜って思ったら帰ろうよ。
痛い痛い痛い。
グリグリしたら痛いって」
「もしかしたらダーリンが怪我して来れなくなったのかもって、とーっても心配もしたわ」
「ねえ、僕の話聞いてる?
とーっても苦しいんだけど」
「でも、あなたの部屋の明かりを見た瞬間全て怒りに変わったわ。
もう遅いからって送ってくれたルナなんて大爆笑だったわよ」
「君達ってなんだかんだ言って仲良しだよね」
「ちょっとは反省しろ!」
せっかく抜いてもらったと思った拳がまためり込んだ。
なんて酷い事するんだ。
「私はいつも思うのだけど、ダーリンって私に嫌われようとしてる?」
「僕はリリーナに嫌われたら泣いちゃうよ」
「それは嘘でしょ?」
「うん、嘘。
でもリリーナは僕なんかには勿体ないと本気で思ってる。
僕なんかと一緒に居ると幸せにはなれないよ」
「幸せってなに?
お金?地位?名声?
そんなの政略結婚なんかしなくても全部手に入れてやるわよ。
欲しい物は全て手に入れる。
当然あなたも誰にも渡さない。
私は言った事は実現させる女よ。
これを見なさい」
リリーナは何か紙を取り出して僕に見せた。
それは来年の聖教祭の招待チケットだった。
「言った通りミスコンで優勝して来たわ。
来年も行くわよ。
三連覇してやるわ。
で、何か言う事は?」
「優勝おめでとう」
「来週末、祝勝会を開きなさい」
「来週末って大晦日だよ?」
「そうよ。
今年の年末はダーリンは私と二人っきりで過ごすの。
わかった?」
「家族と過ごしなよ」
「もう両親には了承貰ってるわ。
もちろんヒナタちゃんにもよ」
だからなんでヒナタは僕の予定を勝手に決めちゃうのかな〜
「日中は挨拶周りで忙しいから、夜になったら来るわ。
しっかり準備してなさい」
「いや、僕はOKして――」
「ちゃんとチャイム鳴らしたら笑顔でお出迎えしに来なさいよ」
「鍵持ってるじゃないか」
「いいから来なさい!
わかったわね。
あと私は今年最後の晩御飯はダーリンの腕によりをかけた手料理だと決めてるから!」
リリーナは返事も聞かずに帰って行った。
めんどくさいな〜
今年最後の日に殴られるのも嫌だし、機嫌が悪くならない程度に準備するか。
僕はリリーナが確実に帰った事を確認してからまた出掛けた。
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