第18話
聖教祭と言えど、所詮は学生達主催のお祭り。
大した事無いだろうって思ってだけど、そんな事は無かった。
僕の想像してた文化祭なんかとは規模が違い過ぎる。
人気テーマパークぐらいの活気がある。
行きたく無いと言っていたリリーナも楽しんでいるようで何よりだ。
僕の目的の時間も刻一刻と近づいて来てる。
そろそろリリーナを振り切る方法を考えないといけないな。
「ダーリン見てみて。
お父様とお母様よ」
リリーナが指刺した方を見ると、来賓の名だたる王国貴族達が列になって聖教祭を見て回っている。
そこには僕の両親もいて、リリーナの両親とにこやかに話している。
なんだろう?
この外堀を埋められていく感覚。
「良かったわね。
私をデートに誘わなかったら今頃ダーリンはあの中よ」
「そうだね。
ありがとうリリーナ」
確かにあれは嫌だ。
窮屈で仕方ない。
これは素直にリリーナに感謝しよう。
僕は改めて貴族達の列を見る。
甲羅に扮したミカンとアイコンタクトをとる。
ああ、いたいた。
ゴカイド・サゴドン君みーっけ。
お友達の伯爵も来てるね。
それにしても、昨日はよく眠れなかったみたいだね。
目の下に少し隈が出来てるよ。
でも今日は最上級の悪夢をプレゼントするよ。
楽しみ過ぎてニヤけてしまうよ。
ってなんかリリーナが僕の腕を曲がらないに曲げようとしてきた。
「痛い痛い。
なんで腕を曲がらない方に曲げようとするのさ」
「今、あそこのメイドの事見てたでしょ」
確かにミカンとアイコンタクトはとったけど一瞬だったよ。
勘が鋭過ぎない?
「そんなに美人がいいなら私を見てなさい」
「わかった。
わかったから。
本当に折れちゃうって」
「本当にわかった?
ダーリンはすぐに美人に目がいくから」
「僕を女好きみたいに言わないでくれる。
僕は人に限らず美しい物が好きなの」
「そんな素直に愛してるなんて言われたら照れちゃうわ」
「リリーナ。
僕思うんだけど、最近耳が悪くなって来てない?」
「そんな事無いわよ。
ダーリンが照れて言えない心の声が良く聞こえるもの」
「なんて聞こえてるの?」
「私の事とても愛してるって言ってるわ」
「いよいよ重症だね」
何処かにいいお医者さんいないかな?
「これはリリーナ嬢。
お久しぶりですね」
一人の美男子がリリーナに声を掛けて来た。
制服からして、ここの学生だ。
となると残った男子生徒は一人しかいない。
「お久しぶりです。
ハヌル王子」
そう、リリーナの言った通り第二王子のハヌル・ホロンだ。
「こちらが婚約者のヒカゲ・アークム君だね。
よろしく」
兄弟揃って握手を求めてくるんだね。
まあ、快く応じるとしよう。
「さっきの事はもう学園中の噂だよ。
リリーナ嬢はここにいる時よりもずっといい顔をしてる。
君はいい婚約者なんだね」
「僕はポンコツだからいい婚約者では無いよ」
「巷の噂ではそうなってるね。
でも俺は噂を鵜呑みにはしないんだ。
現にここではあんまりいい思い出が無いはずのリリーナ嬢は楽しそうにしてる。
それは君にしか出来ない事だ。
そうだろ?」
「ええ、もちろん。
私はダーリンといるから楽しいわよ」
ハヌルの問いにリリーナは嬉しそうに答えた。
うーん、そういう物だろうか?
結局タイミングなだけで、僕じゃなくてもいい気がする。
それこそソウルでも良かったはず。
なんとかあっちにシフト出来ないだろうか?
「時にヒカゲ君。
君には双子の妹がいるらしいね」
「ヒナタの事?
それがどうしたの?」
「アークム男爵に聞いた所、そのヒナタ君が領主を継ぐ予定だと」
「そうだよ。
ヒナタは僕と違って優秀な子だからね」
「君はそれでいいのかな?」
「別に。
ヒナタが継ぐ方がみんな喜ぶよ」
「なるほどなるほど」
そう言うとなんだかハヌルは納得したように頷いた。
やっぱり王子だから田舎領地まで気になるのかな?
「あっ!お兄ちゃんだ!
やっほー」
タイミング良く、ヒナタが僕を見つけて声をかけて来た。
両手には屋台の食べ物を一杯持っている。
ヒナタもしっかり堪能してるみたいだ。
「リリーナお義姉ちゃん。
こんにちは」
「こんにちは、ヒナタちゃん」
「あれヒナタ一人?」
「そうだよ。
今は自由時間。
アイビーは来賓で来てた騎士のお兄さんとデート。
シンシアはアンヌお姉ちゃんと回ってる」
「え?
アンヌ来てるの?」
「うん。
招待されたんだって」
なんだって。
アンヌに会えるじゃないか。
それは会いにいかないと。
痛い痛い。
なんで抓るのリリーナ。
「それにしてもお兄ちゃん。
男の子のお友達なんて珍しいね」
ヒナタはハヌルを見ながら言った。
まるで僕が女の子しか友達にしないみたいな言い草だ。
全くの濡れ衣だよ。
僕は友達なんて男も女も関係無くいないよ。
「ホロン王国第二王子、ハヌル・ホロンです」
ハヌルはヒナタに対しても握手を求めて右手を出した。
「え!?第二王子!?
ちょ、ちょっと待ってください!
えっと、えっと、ちょっとお兄ちゃんこれ持って」
ヒナタは王子と聞いて慌て出し、両手いっぱいの食べ物を僕に渡す。
そして改めてハヌルの方を向いた。
「はじめまして。
私は――」
「ヒナタ。
口元にソース付いてるよ」
「え!?うそ!?」
僕はハンカチでヒナタの口元を拭いてあげた。
ヒナタは恥ずかしそうにしながらもなんとか取り繕おうとしている。
「改めまして。
私はアークム男爵家の長女。
ヒナタ・アークムです」
ヒナタはハヌルの手を取って握手を交わした。
「先程から知らずとは言え、無礼をお許しください」
「なに、気にしていないさ。
それにはじめましてでは無いよ」
「え?失礼しました!?
申し訳ありません。
何処かでお会いしましたか?」
「ヒナタ嬢にとっては大した事では無かったんだね。
先日とてもキュートな姿で助けて頂いたよ」
ああ、そういやあの時いたような気がする。
でも、ヒナタは全然気付いて無いみたい。
頭の上にハテナマークが沢山出てる。
そんなヒナタを微笑ましく見てたハヌルが急に片膝をついて、握手したままだったヒナタの手の甲に口付けをした。
ってなんで?
あまりに急だったから僕も戸惑いしかない。
ヒナタもビックリして固まっている。
「ヒナタ・アークム。
あなたの可憐な剣技に一目惚れしました。
俺も婚約して頂けませんか?」
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