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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
8章 悪党は全てを奪い去る
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第17話

遂に明日だよ。

もうすっかり町中お祭りムード。

僕の心もお祭りムード。


さて、明日は大変だぞー。

リリーナとのデートを適当にあしらいつつ、コカイド・サゴドン君の全てを奪って絶望の中でこの世からさよならしてもらわないと。


ミリアに任せてた姉妹達には、かなり生温い手を打ったみたいだしね。

最悪全員切り捨てごめんだ。

非常に勿体ない。


更には失敗しちゃって、ナナリーの所は行けなかったみたい。


なんかずっと勇者ツバキが張り付いてるんだって。

それは仕方ない仕方ない。


なんたって僕達は正義には勝てない。

でも、ツバキがナナリーに張り付いてるって事はサゴドン君の命令で動く事も出来ない。


つまり結果オーライだ。


今まで準備は全部自分でしてきたから、こんな中途半端で本番を迎えるのは初めてだ。


何が起きるかわからないドキドキ感がいい。

僕のアドリブ力が試される訳だ。


さて、では始めるとしよう。

ゴカイド・サゴドン君の悪夢は今晩から始まるよ。


僕はサゴドン公爵邸へと侵入する。

サゴドン公爵は執務室でなにか悩んでる様子だった。


そりゃそうだ。

今やサゴドン公爵の手掛ける事業は全て、みんなの裏工作のおかげで火の車だ。


表の事業では上手くいかず、ドーントレスの資金繰りも失敗続き。

もう君の崩壊は始まっているんだよ。


そんな君に僕から細やかなプレゼントをあげよう。


僕は少し開いた窓から、一枚のカードを投げ入れた。


そのカードはサゴドン公爵の顔のすぐ横を通って机に刺さる。


「なんだ?」


そのカードは予告状だよ。


『予告状


明日、聖なる日にこの俺が貴様の全てを奪いに行く。

震えて待つのも、抗うのも貴様の自由だ。

だが、俺は必ず悪夢へと誘う。


ナイトメア・ルミナス

ギルドマスター ナイトメア』


僕はサゴドン公爵邸を後にする。


サゴドン君はどんな反応してくれるかな〜

今夜は眠れないかもね。


明日が楽しみだな〜

僕も楽しみで眠れないよ。



王立宣教師学園。

それは大きいと言う次元を超えている。

もはや一つの街である。


全寮制では無いが、殆どの生徒が敷地内の寮で生活している。

その生徒は敷地から一歩も出る事無く生活出来るようになっている。


ってリリーナが言ってた。


警備は要塞。

常に籠城戦をしてるんじゃないかと思うぐらいだ。


これは窮屈で仕方ない。

僕なら秒で脱走してるね。

リリーナが二度と行きたくないって言ってた理由が良くわかる。


中に入ってみると、そこは別世界だった。

学園中がお祭りムードなのは変わりないけど、何処と無く上品な雰囲気が漂っている。


ここで生活してる人間と外部の人間が一目で分かるぐらい雰囲気が違う。


「ねえリリーナ」


「なに?」


リリーナは上機嫌に返事をする。


待ち合わせ時に三人娘に御教授頂いたようにしたからか、とても機嫌がいい。


それはいいのだけど、ずっと腕を組まれて密着されてるから歩き難くて仕方ない。


「君もここで生活してたの?」


「そうよ」


「ふーん……」


「なによ?

何か言いたそうね?」


「別に……」


「いいのよ。

遠慮無く言ってご覧なさい」


リリーナが笑顔でそう言うので、遠慮無く言わせてもらうか。


「リリーナには似合わないね」


「どう言う意味かしら?」


リリーナの抱きつく力が強くなった気がする。


「あんな上品なリリーナは気持ち悪いよ」


「私だってここにいた時はあんな感じだったのよ。

あなたに染められちゃったかしら?」


「君は出会った時から腹黒って痛い痛い。

僕の腕はそっちには曲がらないよ」


「良かったわね。

気持ち悪い上品な婚約者じゃなくて」


「別に上品なのが気持ち悪いって言ってる訳じゃないよ。

リリーナが上品だったら似合わな過ぎて気持ち悪いって、ちょっとストップストップ。

今僕の腕から聞こえてはいけない音がしたって」


「どんな音したの?

私聞こえなかったから聞いてみたいな」


リリーナが笑顔のまま更に力を入れる。

このままじゃポッキリいってしまいそうだ。


「君が遠慮なく言えって言ったんじゃないか」


「言ったわよ。

でも怒らないとは言ってないわ」


確かに言ってない。

言って無いけど……

なんて理不尽なんだ。


「さあ、早く私の機嫌を直さないと腕が大変な事になっちゃうわよ」


「別に怒るような事言って無いだろ」


「ヒカゲは腕がいらないのね」


「別に似合わなくったっていいじゃないか。

僕は今の方がリリーナらしくて好きだよ」


「え?あら、そう」


なんか知らないがリリーナの力が弱くなった。


「愛してるなんて言われるとは思わなかったわ」


「聞いてた?

好きだとは言ったけど、愛してるとは言ってない」


「そんな何回も愛してるって言われると照れるわ」


「そう言う話聞かない所は嫌い」


ルナが僕達を迎えに来て早々呆れ顔で見ていた。

隣で苦笑いしてる男は誰だろう?


「よくもまあ、こんな公然でイチャイチャ出来ますね」


「いいでしょ〜。

羨ましくてもあげないわよ」


「お兄様。

彼が恋敵のヒカゲ・アークム君ですよ」


「なるほど。

はじめまして。

ホロン王国第三王子、ソウル・ホロンと申します。

どうぞよろしく」


握手を求めて手を出して来たから、僕は快く応じた。


確かにルナの兄貴だけあって、かなりの美男子だ。


「よろしく。

それで、恋敵ってなに?」


「ボクはリリーナに婚約を申し込んだのさ。

でも、返事を貰う前に学園を辞めて君と婚約したんだよ。

実質振られたようなものさ」


なんだ、リリーナにはいいお相手がいるじゃないか。


なのに、ソウルはなんかおかしな事言ってるよ。

リリーナはこれみよがしに僕を強く引き寄せるし。


「ねえ、リリーナ」


「どうしたの?」


「彼が君に振られたと勘違いしてるよ」


「勘違いじゃないわよ。

私は彼を振ったもの」


「えー、なんでー?」


「なに言ってるの?

振らないと貴方と婚約出来なくなるじゃない」


リリーナが当たり前と言わんばかりの顔で僕を見る。

おかしな事を言っている自覚がないみたい。


「絶対あっちの方がいいよ。

だって王子だよ。

みんなの憧れだよ」


「うるさいわね。

私は貴方の方がいいの」


なんか不機嫌そうに凄く睨んでくる。

今にもボディーブローが飛んできそうだ。


「いやいやいや。

あっちは国王の息子の王子様。

僕は田舎男爵のポンコツ息子。

誰が考えたってあっちがいいって」


「へぇ〜。

ダーリンったら私にあんな事までしといて、そんな事言うんだ〜」


リリーナは僕の胸ぐらを掴んで顔を近づける。

声は穏やかなのに、行動が伴っていない。


「だって絶対に考え直した方がいいよ。

あと、人前でダーリンって呼ぶな」


「まだ辞めないんだ〜

本当にいい度胸してるわよね〜」


「今ならまだ間に合うよ。

こんなチャンス棒に振ったら――」


僕の言葉は遮られた。


「うそ!?」


ルナの口から思わず声が出て、顔を赤らめる。

ソウルは驚きのあまり目をまんまるにして固まった。


それもそのはず、リリーナは僕の口を自分の口で塞いで言葉を遮ったからだ。


僕はリリーナの両肩を持って引き離そうとしたけど、いつの間にか両腕で顔をホールドされていて離れない。


肩を叩いて、離れるように促しても一向に離れる気配は無い。

それどころか、リリーナは舌を僕の口の中に捩じ込んで来た。


リリーナの両目はバッチリと僕の目を見て、何か訴えている。

だけど、口が塞がれているからわからない。


「んー、んー、んー」


なんとか訴えようと声を出したら、それを防ぐように舌を絡めて来た。


一体なに?

何が起きてるの?


「あれってリリーナさんじゃない?」


「本当だ。

って殿方とキスしてますわ!」


「しかもあんな熱烈なキスを!」


「あのリリーナさんが!

信じられない!」


周りの人達も気付き初めて、注目が集まって来た。

それでもリリーナは辞めようとしない。

むしろホールドする両腕は更に力が増して、キスも激しくなっていく。


相変わらず両目は何かを訴えているけど、なにを言いたいかは全くわからない。


もう周りで気付いていない人はいない。

みんなが長時間続く、僕達のキスに注目している。


一体いつまで続ける気?

リリーナは僕に体を預け始めるし……

まさか僕が抱き締めるまで辞めない気なの?


僕は恐る恐るリリーナの背中に腕を回す。

これが正解なのか瞳を閉じた。


仕方ないからリリーナを抱き締める。

それで満足したのか、少ししてからやっとリリーナが離れた。


「残念だったわね。

公衆の面前でこんな熱いキスしたのだから、もう婚約破棄だなんて出来ないわよ。

ここにいる全員が証人よ!

私は絶対にヒカゲを誰にも渡さない!」


リリーナが顔を真っ赤にしながらも、男らしく言い切った。


周囲からも拍手が巻き起こるが、何の拍手なのかわからない。


それにしても、一体何がリリーナをここまでさせるのか?

僕より絶対に王子の方がいいのに。


「リリーナ。

僕は勿体ないと――」


「あら?

ダーリンはまだキスして欲しいの?」


マジかよ。

リリーナのやつ、また首の後ろに手を回してきたじゃないか。


「……とりあえずダーリンって呼ぶのは辞めろ」


「嫌よ」


「二人っきりの時だけって約束だったよね?」


「もうこれから何処でもダーリンって呼ぶって決めたから」


「僕は返事しないよ」


「いいわよ。

その時は殴るから」


「……わかったよ。

好きにしなよ」


「ええ、そうするわ。

あと今度から婚約破棄みたいな話したら、ダーリンがキスを求めてると判断するからね。

良かったわね。

これから何処でもダーリンの好きな時にキスしてあげるわよ。

そのかわり、私が満足するまで絶対離さないから覚悟しなさい」


おいおい冗談だろ?

いやこの目は本気だ。

リリーナならやりかねん。


「ブフッ!

アハハハ!」


ずっと固まっていたソウルが吹き出したかと思うと、大笑いをした。


僕とリリーナとルナはキョトンとしながらソウルを見る。


ソウルはひとしきり笑った後に清々しく言い切った。


「いやー、参ったよ。

ボクなんかには勝ち目なんか無かったんだね。

そんなの見せられたら諦めるしか無いね」


なんで諦めるんだよ。

頑張れよ。

リリーナほどの女の子なんてなかなかいないよ。

せっかくいいお相手なのに。


「今日は一日聖教祭を楽しんでいってよ。

ではボクは役員としての仕事があるから。

また後で」


そう言ってソウルは消えて行った。


「え、えーと……

私もちょっと仕事がありますので、また後で合流しますわ。

そ、それまでごゆっくり」


ルナは、まだ若干顔を赤らめたままフラフラとソウルの後を追って離れて行った。


「あーあ。

勿体ないな〜

絶対に僕よりソウルの方がいいのに」


「ねえダーリン」


「なに?」


僕はリリーナの方を向いた。

その瞬間、リリーナに唇を奪われた。

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