第14話
あれから調子がいいんだ。
やっぱり僕はおかしかったんだね。
僕とした事がブレていたんだ。
いけないいけない。
でも、改めてわかったよ。
僕の美学が絶対だと言う事が。
となると僕は学園卒業後は上手く失踪しないといけないな〜
両親に迷惑がかからない形であれば、それよりも早くていい。
出来る事ならリリーナの新しいお相手が見つかって欲しいな。
冗談抜きで合コンはいい考えだと思う。
よし、トレインにセッティングさせよう。
ついでにリリーナのお友達3人娘にもお相手を見つけて貰おう。
そうしたら今みたいに僕を放課後デパートに拉致る事も無くなるはずだ。
「アークム君まだ?」
「早くしないと日が暮れちゃうよ」
「まだまだ次があるんだよ」
僕はため息を吐いてから試着室のカーテンを開けた。
「これもなかなかいいね」
「アークム君は背があってスタイルいいから、何着ても様になるわね」
「よし、次はこれね」
僕は次の服を渡されて試着室に戻る。
これで5セット目だ。
失敗した。
放課後に三人娘に囲まれて、聖教祭の服装どうするかと聞かれた時にオシャレな服着ていくって言えば良かった。
素直になにも考えて無いとか言ってしまったらこの始末。
見事拉致られて着せ替え人形となってしまった。
なんかリリーナが自慢出来るオシャレな彼氏にしたいらしい。
そんなの無理だよ。
いくら着飾っても中身が終わってるからね。
結局10着以上試着させられた末に、三人娘の渾身のコーディネートが決まった。
これだけ時間掛けただけの事はあってセンスはいい。
ただちょっと気合が入り過ぎてる感はある。
「当日はちゃんと早めに集合時間より早めに行くんだよ」
「リリーナちゃんより早く行かないとダメだからね」
「間違っても、後から来たリリーナちゃんに待ったなんて言ったらダメだからね」
その失敗は前回経験済みだ。
返しもスミレから学習済みだよ。
今来た所でしょ。
「それとちゃんと服装も褒めないといけないよ」
「でも、服装だけに気を取られたらダメだよ」
「リリーナちゃんは絶対オシャレして来るはずだからね」
おや?あれはトレインじゃないか。
こんな所で何してるのかな?
「アークム君聞いてるの?」
「ちゃんとその服着て行くんだよ」
「それでその服の事リリーナちゃんに聞かれたらなんて言うか分かってるよね?」
「わかってるわかってる。
君達に選んで貰った事も伝えるから安心して」
「「「違ーう!!!」」」
三人が同時に詰め寄ってポカポカ叩く。
「そこはキメ顔で『君の為に新調したんだよ』でしょ!」
「ちゃんとリリーナちゃんの為にオシャレしたアピールしなさい!」
「私達の名前は死んでも出すんじゃないからね!」
えー、そんなので喜ぶのー?
なんかわざとらしくない?
◇
三人娘から解放されたし、気晴らしにトレインをおちょくろうっと。
「やあ、トレイン」
「げっ!なんだ君か」
トレインは心底嫌な顔を見せる。
なんて失礼な奴だ。
「げっ、とはなんだよ。
せっかく声かけてあげたのに」
「男に声かけてられても嬉しくもなんとも無いね。
むしろ君と会うと碌な事が無い」
それは正解だね。
現に僕はおちょくりに来てる。
「何してるの?」
「なんでもいいだろ」
「女の子にプレゼント買いに来たの?」
「ちげーよ」
そう言いながら、雑貨店の店員のお姉さんの方をチラチラ見てた。
「ふーん、あの子が気になるんだ」
「そんなんじゃねぇって」
「でもこそこそ見てるじゃんか。
僕が好み聞いて来てあげようか?」
「だから、そんなんじゃねぇって言ってるだろ。
落としたい女だったら、とっくの昔にアタックして落としてるよ」
確かにトレインならそうするな。
妙に説得力があるね。
「なら騎士団の任務」
「えーと、まあ、そのような物だ」
歯切れが悪い所みると違うみたいだ。
すると雑貨屋に一人の貴族のおじさんが現れて、店員のお姉さんと話し始めた。
「あれはカットバー伯爵だね」
「ああ」
「君の友達のお父さんだよね」
「ああ」
つまんないな~
僕の質問してるのに二人の会話に集中して上の空だし。
「君は友達想いなんだね」
「なんの話だ?」
「でも残念だね。
カットバー伯爵が白虎で、君の睨んだ通り店員のお姉さんがその部下の前足だよ」
「今なんて言った?」
トレインがやっと反応してくれた。
想像以上にいい反応だね。
「君は友達想いなんだねって」
「その後だよ後。
って普通そう言うのは前なんだよ」
「後だの前だのトレインはうるさいな〜
そんなのどっちでも良くない?」
「良くねぇよ。
それでなんて言ったんだよ」
「君の友達のお父さんだよねって」
「お前わざとやってるだろ?」
「ニャー」
可愛いネコのポーズをプレゼント。
おやおや怒鳴りたいのを必死に堪えてるね。
いや〜、トレインは面白いな〜
「トレイン、僕喉が渇いたな〜
バナナジュース飲みたいな〜」
トレインは雑貨屋と僕を交互に見て葛藤している。
僕はニヤニヤしながら見守ってあげる。
どうするのかな〜
楽しみだな〜
「わかった。
喫茶店に行こう」
「やったー」
喫茶店に入るとトレインはコーヒーとバナナジュースを注文して席についた。
「それで。
さっきの話だけど」
「ねえトレイン。
ショートケーキ美味しいそうだね」
「……ちょっとお姉さん」
トレインは店員のお姉さんを呼ぶ。
「この子にショートケーキ一つ」
「パフェも美味しそうだな〜」
「パフェも一つ」
「それから……」
「わかったわかった。
もう好きなの頼めよ!」
「やったー。
トレインは太っ腹だな〜」
僕は苦笑いしてる店員さんにデザートをいっぱい注文した。
トレインは何故かため息を吐いた。
テーブルいっぱいのデザートなんて贅沢なんだ。
バナナジュースも一杯じゃ足りないからおかわりしよう。
「他人の金で食べる物は絶品だね」
「それは良かった良かった。
それで、いい加減話してくれるよな?」
「カットバー伯爵の事?」
「そうだ」
「言った通りだよ。
彼がドーントレス幹部の一人白虎だよ」
「証拠はあるのか?」
「証拠?いるの?」
「そりゃいるだろ」
「でも、僕は証拠も無しに婦女暴行未遂で一晩牢屋に入れられたよ」
「そんな事したのはどこの騎士だ?
軍法会議にかけてやる」
「もういいよ」
「いや、良くない。
そう言う輩がいるから騎士団の信頼が下がるんだ」
「もう死んだから」
「は?」
「言ったでしょ。
腹立ったから殺したって」
トレインは思い出したみたいだ。
なんか唸って頭を抱えている。
「なんで殺す前に言ってくれないかな。
今度は俺に言ってくれよ」
「嫌だよ」
「なんでだよ」
「だって言ったら殺せないじゃん」
「当たり前だろ」
「じゃあやり得じゃん」
「ちゃんと軍法会議にかけて、処分を下すさ」
「えー、そんなんじゃ僕の腹の虫は収まらないよ」
トレインは化け物を見るような目で見てくる。
やだな〜
そんなに褒めても何も出ないよ。
「もういい。
その件は今はいい。
それよりカットバー伯爵の件だ」
「そんなに証拠って大事?
トレインだって怪しいと思っていたんでしょ?」
「それは……」
「トレインはどうしたいの?
お友達に言うの?」
トレインは少し唸ってから言った。
「言うさ。
でも、あいつは親父さんの事を尊敬している。
だから確実な証拠を掴んでからにしたい。
せめて俺の手で捕らえたい」
「ふーん。
でも証拠って程の物無いや」
「なんだよそれ」
トレインはホッと胸を撫で下ろした。
でもそれは問題を先送りしてるだけだよ。
「僕と君の中だから教えてあげるけど、伯爵は黒だよ。
僕が言うから間違い無いよ」
「君の言う事の信憑性が高いのは重々承知してるよ。
でも証拠無しでは騎士団としては動けない。
疑わしきは罰せずだ」
「そうだね。
僕もそれがいいと思うよ。
じゃあね、ご馳走様」
僕は全部平らげてから喫茶店を後にした。
流石だよトレイン。
君ならそう言うと思ってたよ。
君は正義側の人間だからね。
だからこそ証拠を渡せない。
今騎士団に動かれると面倒なんだ。
でもトレインにはお世話になってるからね。
俺はちゃんとお返しするよ。
悪党の僕だけが出来るお返しをね。
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