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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
8章 悪党は全てを奪い去る
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第7話

僕は上等ながらもカジュアルで清潔感のある服装で目的地へと向かう。


「流石ね。

完全に別人だわ」


隣を歩く超絶美人秘書に変装したスミレが、

20代前半ぐらいのイケメン青年に変身した僕を見て言った。


「まあね。

変身は前世でも必須スキルだったからね。

魔力を使って骨格とかも弄れば老若男女、何にでも変身出来るさ」


声帯まで変えた僕がイケボで答える。


人はどうしても見た目で判断してしまうからね。

イケメンか美女への変身は何度もやっている。


そう言う意味ではスミレはお得だね。

何もしなくても超絶美人なんだもん。


「今回のターゲットはミレイヌ・サゴドン。

年齢は20歳。

宣教師学園を首席で卒業し、宣教師の資格を得ている。

現在は宣教師として生計を立てている。

だけど本人は政治に携わりたいと思っていて、父親に直談判するも良い返事は貰えずじまい。

その為、認めて貰おうと事業を起こした輸入雑貨店は鳴かず飛ばすのまま。

残念ながら商才は無いようね。

店に来る客は彼女目当ての特にお金を落とさない男性客のみ。

でも男性経験は無し、交際経験も同様」


スミレは何も見ずにスラスラ報告している。


この子は見た目だけで無く頭の良さも完璧。

羨ましい限りだ。

全くもって世の中は不公平だよね。


「数日前からソラが客として接触。

充分な信頼関係は築いているわ」


「お膳立てありがとう」


僕はスミレと別れて輸入雑貨店の扉を開けた。


「いらっしゃいませ」


ミレイヌがスマイルで迎えてくれた。

彼女目当てで男性客が訪れるのも頷ける。


この女をこれから僕は……

ゾクゾクして来たよ。


「遅かったじゃないの。

来ないかと思って心配してたのよ」


僕と同じく20代前半ぐらいに姿を変えたソラがこっちに手を振った。


「申し訳ない。

少し前の商談に時間がかかってしまったんだ。

初めましてフェイクと言います」


「初めまして。

ソラさんからお話は伺っています。

ミレイヌ・サゴドンと申します」


僕達は握手を交わす。

僕は店内を見渡してから続けた。


「素晴らしいお店だ。

取り扱っている物が素晴らしい。

あなたのセンスが良い証拠だ」


「ありがとうございます。

そう言ってくださると嬉しいです」


ミレイヌは本人に嬉しそうに笑顔を見せる。


彼女の事だ。

容姿を褒められる事はあっても店を褒められる事は少ないはず。

だからあえて容姿には触れない。


「これは期待出来そうだ。

早速商談に入っても?」


「はい。

珍しいコーヒー豆をお探しだと伺っています」


「ええ。

バーを経営していまして。

昼に新しく喫茶店を開くつもりでね。

外国の珍しいコーヒーを扱って他店との差別化を考えている」


「どのようなコーヒーをお探しですか?」


「ほのかな苦味を楽しめるコーヒーを頼めるかな」

「ええ、ありますよ。

お淹れするので奥のお席でお待ちください」


「どうせなら淹れ方とかも教えてくれないかな」


「ええ、もちろんです」



ソラと二人で幾つかのコーヒーを試飲してから数種類の豆を買った帰った。


正直苦いの嫌いな僕にとってはどれも苦いだけだったけど、そんなのは目的の為には我慢我慢。


それから頻繁にソラと二人でお邪魔して、親交を深めていった。


そして12月になり女神誕生のお祝いムードに包まれていた。

と言うか、お祭りムードでどこかみんな浮き足だってる感じ。


こんな浮かれた空気の時は人の心に隙が出来易い。

いよいよ仕上げの時だ。


夜のとあるバー。

ミレイヌがカウンター席で1人お酒を飲んでいた。


ミカンからの報告でサゴドン公爵と親子喧嘩して出て来た事はわかっている。


僕はフェイクの姿でさりげなくバーに入って、ほろ酔いのミレイヌの元に近づいて行く。


「こんばんはミレイヌさん。

奇遇ですね」


ミレイヌはビックリさてこっちを見た。


「これはフェイクさん。

ビックリしましたわ」


「お隣いいですか?」


「ええ、もちろん」


僕はマスターにミレイヌと同じ物を頼んだ。


「乾杯でもしませんか?」


「喜んで」


「今宵の素晴らしい偶然に乾杯」


乾杯をした後は取り止め無い会話をする。

主に彼女の愚痴がメインだ。


さりげなく酒を勧めて深く酔わせていく。


「ごめんなさい。

なんか愚痴ばっかり聞いて貰って」


「いえ、全然気にしてませんよ。

いつも頑張っているのですから、こう言う時ぐらい吐き出さないと」


「何気にソラさん抜きで会うのは初めてですね」


「そうですね」


「なのになんだか何でも話せてしまいます」


それは僕が霊力で警戒心を解いているからだけどね。


「僕で良ければいくらでも話を聞きますよ。

あなたには助けられていますから」


「そんな。

私なんて何も――」


僕はミレイヌの口に人差し指を当てて黙らせる。


「そんな自分を卑下してはいけません。

僕はあなたのおかげで素晴らしいコーヒーと巡り会えました。

他には無いオリジナルのブレンドで喫茶店を開けそうです」


「それは良かった。

おめでとうございます」


「出来ればあなたに最初に飲んで頂きたい」


僕はミレイヌの目を真っ直ぐに見つめて続けた。


『今から私の店に来てください』

「はい」



言霊を使って僕はミレイヌをこの為だけに用意したバーへと取れ込んだ。


「ここが私のバーです。

今日は定休日ですが、いつもは満席なんですよ」


「素敵な空間ですね」


「ありがとうございます。

そこに座って待っていてください」


ミレイヌをカウンターに座らせて、目の前でコーヒーを点てる。


ミレイヌはコーヒーの香りを楽しんでから、僕の霊力入りのコーヒーを飲んだ。


「お口に合いましたか?」


「ええ、とっても」


「それは良かった。

ゆっくり味わってください」


僕はコーヒーを飲んでいる隣に座って、コーヒーを飲み終える頃を狙って囁く。


「その素晴らしいコーヒーが出来たのは全てあなたのおかげだ」


「私のおかげ?」


「ええ、だから悪いのはあなたの事を認めない者。

あなたは悪く無い」


「私は悪く無い」


『僕は認めますよ。

あなたの事を』


「私を認めてくれる……」


霊力とアルコールによって判断力が鈍っているミレイヌはうつらうつらとしている。

夢心地に欲しい言葉。

凄く気分がいいに違いない。


僕は両手を叩いて、ミレイヌを現実に無理矢理引き戻す。


「おっと、もうこんな時間だ」


「え?あ、いえ、その……」


まだ続きが欲しい顔だ。

霊力によって何気ない言葉も心に響くようになっているだけで無く、依存し易くもなっている。


「家までお送りしますよ」


立ち上がった僕の手をミレイヌが掴んだ。


よし、釣れた。


「どうしましたか?」


「あ、えーと……

今お父様と喧嘩中でして……」


「ええ、そのようですね」


「出来ればで結構なのですが……

今日だけでいいので、ここに泊めてくれませんか?」


「いいですよ。

でも、あなたのような素敵な女性を1人で置いてはいけませんね」


僕は右手でミレイヌの頬をそっと触る。

そこから霊力を流し込んで、再び夢心地へと誘う。


「初めて容姿を褒めてくれましたね」


『僕はあなたの全てを認めますよ』


「こんなはしたない私でもですか?」


ミレイヌは僕に抱きついて唇を重ねて来た。

僕はそれを受け入れて、霊力を更に流し込んでいく。


ゆっくり離れたミレイヌの顔を熱っていて、目は現実と虚の間を行き来している。

そのミレイヌの服を脱がして、ソファーに優しく寝かせた。

その上に僕は覆い被さる。


『全て僕に委ねな。

身も心も全て』


「はい」


堕ちたな。

これでミレイヌは奪わせて貰ったよ。

あとはどう言う形でゴカイド・サゴドンにこの事実を突きつけるかだ。


まあ、それは追々考えよう。

今はじっくりとこの上玉の女を楽しませて貰う。


そうだな。

最後には自ら腰を振るぐらいまで快楽に溺れさせてやるよ。


“私にした事以上の事を他の女したら許さない”


なんで?

なんで今リリーナの言葉が頭に浮かぶんだ?


今僕の性欲は最高に駆り立てられている。

この欲望のままに目の前のミレイヌを犯し尽くしたい。


なのになんで?

なんで頭からリリーナの顔が消えないの?


『眠れ』


ミレイヌは深い眠りに付く。


なんか萎えちゃったな。

なんでだろう?


僕はバーの外に出て深呼吸をした。

夜の冷たい空気が肺いっぱいに広がる。


「終わったの?」


スミレが僕の前に現れた。

近くで待機してたのだろう。


「ああ、堕ちたよ。

最後の調教は任せてもいいかな?

ミカンが得意だったよね?」


「ええ、わかったわ」


スミレはバーの中へと入って行った。


うーん……

なんで萎えちゃったんだろう?


まあ、とりあえず目的は達したからいっか。

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