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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
7章 悪党は自分の物に妥協しない
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第14話

モグちゃんの魔力が殆ど尽きて、元シヨルグのエルフ達が里へと迫っている。


ルカルガの里と戦えるエルフとガイア率いるヤマーヌ混合軍は小さな里の大半を放棄して、族長の家周辺に集まって籠城の構えだ。


ルカルガのエルフ達とヤマーヌ軍だけで非戦闘要員を守るにはこれが最善だ。


でもモグちゃんは納得していない。

少しの犠牲も出したく無いんだって。


本当に贅沢だよね。

だけど悪党と契約してまで叶えたい願いだからそれでいい。


盗賊エルフ達が里の入り口に近づいて来た時、入り口の前の土が大きくもり上がって山が出来た。


その山を不思議に思った盗賊エルフ達の足が止まる。


「グオォォォォォォ!」


突如その山からドラゴンが顔を出す。


「なんだなんだ!?」


「どうしてこんな所にグランドドラゴンが!?」


「グオォォォォォォ!」


エルフなど一口で食べてしまえる程の大きな口から轟く咆哮で盗賊エルフ達は震え上がる。


このグランドドラゴンはモグちゃんの全盛期の姿。

それが魔力の低下に伴って今の姿になってしまった。


普通に考えてドラゴンが魔力が衰えたってモグラになる事は無い。

普通に死を迎えるだけだ。


でもモグちゃんはこの里を守り続ける為に生き抜く事を選んだ。


ここからは僕の仮説にしか過ぎない。


魔力とは心に宿る想いの力。

モグちゃんの想いが、少ない魔力で活動出来る体へと変化させていった。


グランドドラゴン。

漢字で書くと土竜。

つまりモグラだ。


全くもってバカみたいな仮説。

でも現にモグちゃんは僕が魔力を与えると、今の姿を取り戻した。


その魔力はドラゴンその物だ。


大きさは変わらなかったけどね。

流石にあの大きさだとマスコットキャラになっちゃうから、僕が大きくしてあげた。


なんでモグちゃんが漢字を知ってたかって?

それは――


「グオォォォォォォ!!」


モグちゃんが一歩踏み出すと地面が大きく揺れた。


「ダメだ!グランドドラゴンなんて相手出来るか!」


「一時退散だ!」


盗賊エルフ達は一目散に逃げ出した。


良かった良かった。

逃げてくれたね。


いくら僕が魔力を与えたって付け焼き刃。

あの巨体だって僕の魔力によって一時だけ変身出来たハリボテ。

いわゆるハッタリだ。


今のモグちゃんにあれだけの魔力をコントロールする力は無い。


今だって立っているのがやっとなぐらいだ。


モグちゃんは僕の魔力のコントロールを辞めて、元の姿に戻る。


そしてヘトヘトに疲れながらも里のみんなの方へと歩いて行った。


これでルカルガの里は今回の脅威をほぼ無傷で乗り越えた。

だけど、それは知るはずだった痛みを知る事が出来なかったって事だ。


それを奇跡だったと気付かないといけない。

ただ幸運なだけだったのだと知らないといけない。

そうしないと、もっと大きな痛みを知る羽目になってしまう。


もう里を守って来た結界はない。

モグちゃんの魔力的にもう一度張り直す事も出来ない。

それどころか、モグちゃんにはもう魔力が殆ど無い。

それをモグちゃんは里のみんなに言わなければならない。


理由は今の変身で使い切った事にすればいい。

だけど、それはモグちゃんが神様の役目を終えるって事だ。

これからは里のみんなが自らの手で守っていかなければならない。


当然すぐに強くはなれない。

すぐに里を守る力が手に入るわけではない。

それでも次の脅威が待ってくれるとは限らない。


果たしてそれをモグちゃんは伝える事が出来るだろうか?

里のみんなは理解出来るだろうか?

里を守る為に最善の手を打てるだろうか?


僕にはわからない。

わかる必要もない。

ここからは僕は関わってはいけない事だから。


僕に出来る事は悪党が関わらない方法を見つける事を願うだけ。

そして悪党として奪う事だけ。



逃げた盗賊達はひとまず森のアジトに逃げ込んだようだ。


流石エルフ。

森の中の移動は早い。

でも僕程ではない。


「一体なんだったんだ」


「あんな巨大なグランドドラゴンがいるなんて聞いてないぞ」


「あの里を守っているのは、あのチンケな結界を張ったモグラの神様だけだったはずだ」


「そういや、そのモグラを襲撃した連中は何処に行ったんだ」


「それなら、絶賛ルージュと追いかけっこ中じゃないかな?」


盗賊エルフ達はみんな僕方を見る。

その驚きの表情が非常にいいよ。


「やあ、エルフ君達。

最近ここら辺で幅を利かせてるみたいだね。

さぞ、いいお宝持ってるんでしょ?」


「貴様何者だ!」


僕は一瞬でナイトメアスタイルに変身する。


「俺はナイトメア。

今宵、悪夢へ誘う者」


「ナイトメアだと!?

何故ホロン王国の裏ギルドの奴がここにいるんだ!?!


「お前たちエルフと一緒だよ。

俺も国境など関係無い」


僕は瞬く間に周りを囲まれた。


『動くな』


盗賊エルフ達が一斉に襲いかかろうとした所、全員漏れない言霊により動けなくしてやった。


所詮このレベルか。

つまらないな。


僕はエルフ達を無視してアジトの奥へと進む。


おお〜。

なかなかいっぱい溜め込んでるじゃん。


やったね。

久しぶりの大儲けだ。

これは帰りに忘れずに取りに来よう。


おや?これはなんだろう?

小さな宝箱だ。


もう何年も開けられて無さそうな雰囲気。

何か大切な物が入ってるから、里が滅んだ後も持ち出したのかな?


そうなると中身が気になってしょうがない。

鍵が掛かっているけど破壊したらいっか。


僕は宝箱を破壊して中を覗き込んだ。

中身は数冊の本だった。


僕はその一冊を取り出した。


『精霊術師生産計画

記録その1』


そう表紙に書いてあった。

記録のスタートは約16年前だ。


僕は中身を見てみる事にした。


『××月⚪︎⚪︎日

忌み子が生まれた。

どっから忌まわしい種を持って来たが知らないが、里の面汚しだ。

この子はどうせ碌な奴にならないから、人体実験に使おう。

果たして精霊術を使えるようになるだろうか?

せめて里の発展の役に立つ事を願う』


そこからは実験内容の記録が続いている。

全く効果が無いまま約4年後が過ぎたようだ。


『××月⚪︎⚪︎日

ダメだ。

もう4年経とうと言うのに、全く精霊術が使える兆しが見えない。

薬の投与も魔力による肉体改造も全く効果無し。

最初は泣き喚いていたのに、今や眉ひとつ動かさない。

どうやら感情が死んでしまったようだ。

これは由々しき事態だ。

精霊と交信する精霊術において、術者の感情が無いのは致命的だ。

ここの環境が良く無いのかもしれない。

外に出そう。

里内で育てよう。

この髪色だ。

里内では迫害されるだろう。

その刺激によって覚醒するかもしれない。

しかし、里から逃げても面倒だ。

まずは忌み子として迫害されてしかるべきだと教え込もう。

他所に逃げても生きていけないと教え込めば逃げる事は無いだろう』


僕は超高速で一気に読み進める。

3分も経たない内に最後の記録まで読み進めた。

最後の記録は6年前だ。


『××月⚪︎⚪︎日

やっぱり失敗だったみたいだ。

時々何も無い所に向かって話かけている姿を見かけるが、どうやらあれは迫害され過ぎて頭がおかしくなってしまったようだ。

仕方ない。

人間に売ってしまおう。

幸い女のエルフは高値が付きやすい。

ここまでかけた研究費を少しでも回収しなくては。

また振り出しになるが仕方ない。

実験に失敗は付きものだ』


僕は中身を全て読み終えて、叩きつける様に宝箱の中に投げ入れた。

そして宝箱ごと跡形も無く蒸発させた。


僕は再び外に出る。

まだ誰も言霊から解放される事無く動けず仕舞い。


こいつらは生かしておけないから消してしまおう。


「グッド・ナイト・メア」


僕が指を鳴らすと、盗賊エルフ達は青紫色の炎を包まれて消え去った。


これでとりあえずのルカルガの脅威は消えたかな?

僕からのささやかなアフターサービスって所だね。


さて、あっちは静観するとしよう。

モグちゃんの戦いの裏で起きている小さな正義の戦いを。

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