第12話
ルカルガの族長家。
レインは族長と面会して、連日の交渉が続いていた。
領主が代わり使者として現れたレインを、族長は悪くは思っていなかった。
結界を難なく通った事も理由の一つだったが、レインが連れの使用人や騎士に対する態度を見て個人的に好感を持てたからである。
だから連日の訪問に対しても嫌な顔一つせずに応じていた。
だが族長は里の長として、里のメリットにならない交渉に応じる訳にはいかなかった。
いくら金額を積まれても、里の者達の生活に大きな変化は無い。
むしろ特産品として生産する方がみんなの負担になる。
今ののんびりした生活を崩してまでやるメリットが見出せなかった。
でも、今日のレインの話はいつもとは違った。
「ルカルガ族長。
今まで金額を積めばいいと浅はかな考えで、そちらの事を何も考えていない失礼な話をして申し訳ありませんでした。
ヤマーヌ家として謝罪いたします」
交渉はレインの謝罪から入った。
「いえ、とんでもない。
そんな謝られる事は何もありません」
「本日はご提案をさせて頂きたいと思います」
レインは昨日の一晩中どうしたらルカルガの里の暮らしが良くなるかを考えていた。
その中で出た自分なりの答えを話す事にした。
「今までの売って頂くと言うお願いを撤廃させてください。
特産品の話も一度忘れて頂けると幸いです」
族長は今までと違う話の切り口に驚きつつも興味が湧いてきた。
「特産品は諦めると?」
「いいえ、諦めてはいません。
でも昨日言われました。
価値観が違うのだからお金以外の条件を提示出来ないのなら一生無理だと。
その通りだと思います。
でも今の私にそれ以上のメリットを提示出来ません。
ですから提案があります」
「提案とは?」
「文化合流をいたしませんか?」
「文化合流!?」
全く予想だにしない提案に族長は意味が分からず聞き返した。
「はい。
私にはルカルガの里の事はもちろん、エルフの事を全くとして分かりません。
ですから学びたいのです。
エルフの文化や価値観を。
その上で改めて交渉します。
そしてあなた達には知って欲しい。
私達の文化や価値観を。
それを知った上で交渉に値するか見極めて欲しい」
「なるほど。
言いたい事は理解しました。
では具体的にどのような方法で?」
「何人かこちらの人間を住ませてくれませんか?
一緒に暮らし、同じ時間を共有する事でないと分からない事が沢山あります。
もちろん逆も可能です。
希望する方がおれば、ヤマーヌ家はいつでも歓迎いたします」
族長は黙って考え込んだ。
個人的には魅力的に感じる提案だった。
あとは里のみんなのメリットになるかだった。
その答えが出る前に部屋の端に置いてあったクリスタルがひとりでに砕けた。
「そんな馬鹿な!?」
族長は慌てて立ち上がる。
「レイン殿申し訳ない。
話の続きはまた今度にさせて頂きたい。
緊急事態だ」
「なにがあったのですか?」
「結界が何者かに破壊された。
あなた達は早く身支度して、隙を見て脱出してくれ」
「あなた達は?」
「もちろん里を守る為に戦う」
「わかりました。
なら私達も加勢いたします」
「客人を戦わせるわけにはいかない。
これは里の問題だ」
「いえ。
ここはヤマーヌ領内です。
民を守るのが私達の役目。
拒まれても私達は戦います。
なら協力した方が良く無いですか?」
その時、扉が乱暴に開かれてクミンが入って来た。
「族長!
オオクルとシャノンちゃんがまだ帰って来ていません!」
「なに!?」
族長は次々と起こる緊急事態にテンパる事無く考えを巡らす。
そして決断した。
「すぐに数人を迎えに出す。
むしろ今は森の奥にいた方が安全だ。
迎えの者にはそのまま隠れているように伝ええろ。
レイン殿、すまぬが力を貸して頂けませんか?」
「もちろんです」
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