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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
7章 悪党は自分の物に妥協しない
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第11話

里に戻ったオオクルはすぐに山菜採りの準備した。

体はあちこち筋肉痛だったが、それが特訓してるって高揚感になっていて気にならない。


「オオクル。

帰りに神様の所寄ってお裾分けしてくるのよ」


「わかってる」


「ちゃんとシャノンちゃんと仲良くするのよ」


「もちろん」


「慣れた道だからって気をつけないといけないわよ」


「もう、わかってるってかーちゃん。

行ってきます」


オオクルはすぐそこだが走って族長の家に行った。

族長の家にはヤマーヌ家の馬車が停まっていた。


「また来てるんだ」


オオクルは馬車の中を覗き込む。

里を出た事の無いオオクルは乗った事の無い馬車に興味深々だった。


「乗ったらどんな感じなんだろう?

ねーちゃんは振動が大きくて走った方が快適って言ってたけどな。

とてもフカフカそうな椅子だけどなー」


オオクルはここの暮らしに一切不満は無かったが、外の世界への憧れも人並みにはあった。


「馬君。

これ重く無いの?」


オオクルは隣で休んでいた馬に話かけた。

馬が問題無いとばかりに嘶く。


「そっか。

鍛えてるんだね。

俺も今特訓してるんだ」


まだまだ大した事無いだろうと言わんばかりの呆れ顔を馬が見せた。


「オオクルお待たせ」


家から出て来たシャノンと合流して、2人は森の奥へと出発した。


道は整備されておらず、険しい獣道。

それでも通い慣れた2人はすいすいと進んでいく。


「ねえオオクル」


普通の人なら息が切れる程の足場の悪さだが、2人には会話が出来る程余裕がある。


「なに?」


「毎日神様の所行ってるみたいだけど、なにしに行ってるの?」


「え!?

いや、なにもしてないよ」


オオクルは強くなる為に特訓してるとは、なんとなく恥ずかしくて誤魔化す。

でも長い付き合いのシャノンはそんな事お見通しだ。


「なにもしてないって事無いよね?」


「特に大した事してないって」


「じゃあ、昨日は行ってから何してたか全部教えてよ」


「えーと……」


頬を膨らませたシャノンに睨まれて、オオクルは言い訳が思いつかずに言葉に詰まる。


「もういいよ」


シャノンはプイッと顔を逸らして先に進んで行く。

オオクルは慌てて追いかけた。


「シャノン、ちょっと待ってよ」


「ふーんだ。

オオクルは私に言えない事してるんだ」


「してないよ」


「なら教えてよ」


「その……特訓」


オオクルは恥ずかしかったが、シャノンと気不味くなる方が嫌だった。


「特訓?」


「うん、師匠に特訓してもらってる」


「師匠って、ヒカゲさんの事?」


「うん」


「オオクルは昔から強くなりたいって言ってるよね。

なんで?」


「……」


さすがに正面きって言える訳がなくオオクルには無く、黙り込んで目を逸らす。

そんなオオクルをシャノンがジトーと睨む。


「私知ってるんだ」


「え!?」


「エルザさんが前帰って来た時に言ってた。

強い男の子はモテるって。

オオクルモテたいんでしょ〜」


「違うよ!」


「どうだか。

里の外には可愛い女の子いっぱいいそうだもんね」


「だから違うって!

俺はシャノンだけに――」


そこまで言ってオオクルは顔を真っ赤にして慌てて口を閉じる。

シャノンも何が言いたいのか一瞬で理解して顔を真っ赤に染める。

2人は恥ずかしさで黙って進み出す。


「きゃ!」


シャノンが動揺で足を木の根っこに引っかかった。


「危ない!」


オオクルがすかさず引き寄せる。

密着した2人の時間が止まる。


「さ、さっきはごめん。

俺、変な事言っちゃった」


「う、ううん。

私こそなんか意地悪言っちゃった」


「と、とにかく、行こうか。

遅くなったらかーちゃんに怒られるし」


「そ、そうだね」


2人はぎこちないながらも、いつもみたいな会話をしながら奥に向かった。



山菜を採り終えた頃にはすっかりぎこちなさが消えて、2人共いつも通りに戻っていた。


「シャノン。

充分採れたし神様の所に行こう」


「そうだね」


2人は採った山菜を持って神様の所へと向かって歩き出した。


突然、結界が破壊された。

それと同時に森全体に大勢の悪意が流れ込んでくる。


その悪意にあてられてシャノンは気持ち悪くなって、その場に蹲ってしまった。


「シャノン!

大丈夫?」


オオクルは顔が真っ青になったシャノンの背中をさする。

オオクルは知っていた。

シャノンの感覚が人一倍鋭い事を。

そしてオオクル自身も何か良くない雰囲気を感じ取っていた。


「少し休もう」


オオクルはシャノンを連れて、良く休憩に使う洞窟へ移動した。

シャノンを座らせて水を飲ませる。


「怖い。

なんかドス黒い何かに締め付けられてる。

オオクル。

私怖いよ」


「大丈夫。

ここには俺以外誰もいないよ。

落ち着いて、ゆっくりでいいから深呼吸して」


シャノンは言われた通りに深呼吸をする。

少し落ち着いて来たが、まだ顔を青いままだ。


「シャノン。

ゆっくりでいいからね。

良くなるまでここにいよう」


「うん」


「ちょっと外の様子を――」


「何処にも行かないで。

お願いオオクル。

ここにいてよ」


シャノンはオオクルの腕にしがみついた。

その腕からシャノンの震えが伝わってくる。


「わかった。

心配しないで。

何処にも行かないから」


オオクルはシャノンの横に座った。

シャノンはまだ腕にしがみついたまま震えていた。

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