第10話
泉から上がるとオオクルが来ていた。
オオクルは何故か顔を真っ赤にしてぼーっとしている。
「おはよう。
今日も来たの?」
「あ、はい!
おはようございます師匠」
何か2人ともなんか気まずそうに僕から目を逸らしている。
「どうしたの?」
「い、いえ。
その……
ごめんなさい!」
オオクルは急に謝りだした。
「なにが?」
「そ、その……
お師匠さんは穴蔵にいると思って……
師匠は大人だし、全然普通なんだろうけど……」
ん?なんか要領を得ない。
何が言いたいんだろう?
「まさか彼女さんが寝てるなんて思わなくて……
水浴びしてるって神様が言ってたから、そう言う事なんだろうって……」
「彼女?
なんの事?」
「あるじ〜。
お腹空いた〜」
穴蔵から空腹ルージュが現れた。
空腹ルージュは危険だ。
すぐにご飯を用意しないと。
「え!?
浮いてる!?」
オオクルの言う通りルージュは歩くのが面倒くて、いつも浮いて移動している。
僕には見慣れた風景なんだろうけど、オオクルには不思議なんだろう。
「初めまして!
師匠の一番弟子のオオクル・ノワールです!
師匠にはお世話になってます!」
それでも元気良く挨拶をした。
子供の適応力は凄い。
それはいいのだけど、弟子にした覚えは無いよ。
ルージュが不思議そうにオオクルを見てから僕を見た。
「主、このこの子はご飯?」
「違うよ」
「だって美味しそうな匂いがする」
「あ!それはこれだと思います」
オオクルが持っていた包みを広げる。
そこには具沢山の野菜と鶏とチーズの焼きサンドイッチが入っていた。
それを見たルージュが目を輝かせて見ている。
「かーちゃんが持って行けって……
食べますか?」
「うん。
食べたい!」
ルージュが焼きサンドイッチを取って齧り付いた。
中のチーズが美味しそうに伸びている。
「美味しー!
ルージュこれ好き!」
ルージュが幸せそうに頬張る。
すぐに無くなってしまった。
「僕の分も食べていいよ」
「やったー!
主も大好き!」
「お、俺の分も食べていいです」
「本当に!
君も好き!」
ルージュが更に焼きサンドイッチ両手に取って頬張る。
一瞬で食べ尽くしてしまった。
「お腹いっぱいになった〜
ルージュ寝るね〜」
本当にルージュは自由だな〜
もう穴蔵に入っちゃった。
何はともあれ、ルージュがご機嫌になって良かった。
「師匠の彼女さんって、なんと言うか……
自由なんですね」
「そうだね。
あと彼女とかじゃないからね」
「そうなんですか!
彼女じゃないのに同じ布団で……」
「なんか勘違いしてるようだけど、僕は昨日は野宿だからね」
何か要らぬ妄想して顔を真っ赤にしちゃって。
このマセガキめ。
「わかりました。
誰にも言いません」
いやいや、これわかってないやつだよね?
「師匠。
今日は昼からかーちゃんにシャノンと森の奥に山菜を採りに行ってと頼まれてしまいました。
ですので昼からの特訓はごめんなさい」
「いいよ。
なんなら午前も無くていいよ」
「いいえ大丈夫です!
しっかり午前中は特訓します!」
僕は大丈夫じゃないんだけどな〜
昼からお使い頼まれたらしいけど、相変わらずコテンパンにしてやった。
パワハラ上等、いい加減これで嫌になってくるないだろうか?
と思っていたのに、
「師匠。
明日もお願いします」
って言って、フラフラしながら里に帰って行った。
僕、明日には帰るんだけど……
「すっかり師匠になったね」
「なってない」
「そんな事言って〜
本当は嬉しいんだろ?」
「モグちゃん。
泉の中は気持ち良かったよ」
僕はモグちゃんの首の後ろを掴んで持ち上げた。
「待った待った!
オラ本当に泳げないんだって!」
「モグちゃん曰く、僕は超スパルタのいい師匠なんだろ?
僕がモグちゃんの泳ぎの師匠になってあげるよ」
「嘘、嘘!
冗談だってば!
もう言わないから!」
本当に必死にジタバタするので、今回だけは許してあげた。
「オラ、一応神様なのに……」
「なんか言った?」
「な、なんでも無いよ。
あはは〜」
やっぱりこの神様ちょろいや。
お昼になってもルージュは起きて来なかったから、僕は草のベットを作って日向ぼっこする事にした。
ああ〜さいこ〜
これぞ何もしない贅沢だ。
眠たくなって来たし、晩御飯まで寝るとしよう。
寝たい時に寝るのが一番だ。
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